ギフ→メネ話(ギフト視点)
ギフ→メネ話/ユツキを読んでからでないとわけがわからない仕様です

【登場キャラ(敬称略)】
メネギフト



 限りなく毒に近い物質を爪に塗りたくる。人間とはかくもマゾヒストなものなのか。爪を艶やかに光らせ、色を変えるだけで何かが得られるわけでもない。
 なのに、正路宅のコタツに集った女性達は天板の上にずらりとマニキュアを並べて互いの爪を見ながら嬉しそうにきゃあきゃあと騒いでいる。ナサニエルの黒い爪に端を発したブームは女性陣を席巻し、中でもメネはマニキュアを塗るのが上手いのか、今はニュイの爪を塗ってあげていた。
「あ、ギフトじゃないですかぁ~!」
 ギフトの姿に気付いたメネがひらひらと手を振る。その爪は真っ黒で、ナサニエルとお揃いだ。
「大人気で御座いますね」
「ギフトのおかげですぅ」
 最初の実験台としてギフトの片手の爪を塗った事を言っているのだろう。そう、最初の実験台はギフトだ。「お役にたてたのなら何よりで御座います」と微笑む。
「お礼にもう片方の手も後で塗ってあげまぁす。このままじゃ不自然だしぃ」
 ギフトの片爪、マニキュアが塗られた方は深い紫で、もう片方は地の黒のままだ。確かにアンバランスではあるが、ギフトは静かに首を振った。
「このままで結構。アシンメトリーというのも、中々風流ではありませんか!」
「そうですかぁ? ギフトってちょっと趣味悪~い」
「メネ嬢に言われたくありませんな!」
 そんな小言を言いあいながらマニキュアの良い香りを楽しんでいると、ふいに腹が減ってきた。ツンとした刺激臭は食欲をそそるが、量としては十分ではない。ギフトは雑談もそこそこに正路の家を後にした。

 ギフトのお気に入りの食事場所は正路の家から少し離れた場所にある。普段なら誰の目にも映らないよう体を拡散させて移動するのだが、ここ数日はそのままの姿で移動している。人目につかないルートを選んで飛んでいるが、目撃された事は何度かある。この現代社会なら空飛ぶ悪魔など夢物語で済まされるだろうから問題は無い。
 食事場所は工業地帯の上空。特に煙突付近は良質な「食糧」が絶えず湧き出ていてほんの少し滞在するだけですぐに腹が満ちるから素晴らしい。
 煙突のふちに腰かけて眼下に広がる風景を一望する。ギフトが元いた世界と比べると随分とごちゃごちゃしているが、それでも夕日の美しさは変わらない。
 食事をしながら両手の爪を眺める。今のメネと揃いの黒と、宵闇を連想させる深紫。
 ギフトの体はガスで出来ている。ガスを固めて作ったこの体は、気体として拡散させれば表層上に塗られたもの――マニキュアをも簡単に剥がしてしまうだろう。
(……全く、厄介な事をしてくれたものです)
 マニキュアを塗られて数日が経つが、その間ギフトは一度も体を拡散させなかった。移動中はいつもそうしていただけに、ひどく不便だ。
「悪魔をも呪うとは実に……実に、恐ろしいではありませんか」
 左手に宿る宵闇は、夕日を浴びててらてらと輝いていた。



右爪はメネちゃんとお揃い、左爪はメネちゃんに塗ってもらったマニキュアという布陣が気に入ってるけどほっとんど態度に出ないギフトの図