「死」/Mitchell&Carroll




今まで何度もラブに抱きしめられてる。
キスだって何度もしてる。
でも今は...裸。
もう私、何も嘘をついてない。何も嘘をつけない。
ラブの体温が、じかに伝わってくる。

「幸せすぎて怖い。」
せつなのとびきりの告白。巨大な氷が、音を立てて解けていくようだ。
ラブはせつなを、さらに強く抱きしめた。自分の体温がより相手に伝わるようにした。
そうすれば、氷はもっと解けるから。
華奢な体はいつもより小さく感じた。
抱き合ってる分だけ、氷は解けていく。
ラブの情熱が、瞬く間にせつなのこころの氷を解かしていく。
せつなの手が、指先が、髪が、胸が、脚が、唇が、ラブによって熱を与えられていく。
冷えきった体が、ラブの手のぬくもりによって形を成していく。
どこかの温度が下ろうものなら、ラブはまたそこに熱を与える。
せつなは今、ここにいる。それを確かめる。何度も、何度も。
ラブの愛撫行為は全身に及んだ。
せつなも負けじと、ラブの体に必死にしがみつき、その手からもラブの熱を吸収する。
嗚咽はやがて叫びに近いものへと変わる。
以前にもこんなふうに悶えたことがある。でもそれは、苦しみと悲しみにまみれたものだった。
だが今は違う。よろこびに溢れる自分の気持ちを表現するには、こうするしかなかったのだ。

「ラブ、私もう、どうなってもいい。」
ならば、茂みの奥に秘密の場所がある。
そこはせつなの、せつなたる部分。ラブはそこに口づけをする。
「ウァーッもう死んでもいい!死んでもいいの!!」
以前にもそう思ったことがある。でもやはりそれは、ただの強がりだった。
だが、今は違うのだ。
今宵は満月だったが、せつなの体は立派な三日月をかたどっている。
「しっ死んじゃう!死んじゃう!!」
せつなの芯に触れつづける、ラブの舌。
「死ぬぅーっ!!」
そう言い残すと、ピクリとも動かなくなった。
あんなに速く脈打っていた心臓も、どこか陰のあったせつなの表情も、今は穏やかである。

「(ラブ、私幸せ。私、気持ちいいの。分かるでしょ?ラブ...。)」
それは言葉を越えたテレパシーのようなものだったが、ラブはそれを受け取った。
そして、せつなの頭を、今度は優しく撫でるのだった。

――ラブ、実はね、私がまだあなたの敵だったころ、何度も見た夢があるの。
何でそんな夢を見るのか、不思議だった。その夢はね...
私と、あなたが、結ばれている夢。
夢の中で私が感じていたものは...幸せ。
そんなはずはないって思ってた。その時はね。
でも、それが今こうして、現実になってる。
夢で見たように、お互いに裸になって、抱き合って...確かめ合ってる。
ラブ、あなたのことが、ずっと好きでした。これからもずっと。
私が今感じているものは、幸せ。嘘じゃない。
...生まれてきたよかった。神様、ありがとう。ラブとめぐり合わせてくれて。

fin.



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最終更新:2014年02月10日 18:19