【彗星のかけら】/恵千果◆EeRc0idolE
ここは美希の部屋。夜が更けてしんとした中、ふいにリンクルンが鳴りメールが来たことを告げる。
その音で美希が目を覚ます。
ん…メール…?こんな時間に誰だろう。訝しく思いながら美希がリンクルンを開くと、差出人は祈里だった。
『きっともう寝てるよね』
文面から、申し訳なさそうにしている祈里の顔が浮かび、美希は思わず微笑みながら急いで返信する。
『起きたわよ。どうしたの?』
返信してすぐ、折り返すように着信がある。美希が起きたことを知り、祈里がかけて来たのだった。
『こんな遅くにごめんなさい。窓を開けて、空を見て!お願い』
「わかったわ」
祈里に従い、窓を開けると、ひんやりした冷たい夜の空気が入り込んでくる。見上げるとそこには満点の星空。
「うわ…すごい星ね…」
『美希ちゃん、オリオン座のそばを見て』
祈里の言葉を聞いて、急いでオリオン座を探す美希。
「オリオン座、オリオン座…ねぇ、オリオン座ってどんな形だっけ?」
『砂時計みたいな形で、真ん中に星が3つ並んでるの』
「あ、これね!」
美希がようやくオリオン座を見つけた時、光がすっと横切った。
「ああっ!今、流れ星が…あ!あっちにも!」
興奮する美希に、電話越しに祈里が話しかける
『今ね、オリオン座流星群が見えるんだって。お願いごとが叶いやすいかしらって思ったら、つい美希ちゃんにも見てもらいたくなって…起こしてしまってごめんなさい』
美希は祈里の優しい気持ちに、心が温かくなる。
「その気持ちが嬉しい…ありがと祈里。それで祈里は何をお願いしたの?」
『美希ちゃんがモデルとして、もっともっと活躍しますように…って』
「それ…だけ?他にはないの?」
もっと甘いお願いごとが聞きたかった美希は、ついつい意地悪く聞き出そうとする。
『ぁん、わかってるくせに!あとは内緒よ』
「わかってるけど、祈里の口から聞きたいな…」
『もう、しょうがないなぁ…これからも美希ちゃんとずっとずっと一緒にいられますように…って』
会話するふたりの上で、幾つもの星たちが流れ落ちてゆく。
「あー満足!それが聞きたかったの」
『恥ずかしいなあもう…なんだか顔が熱いよ』
「照れてる祈里、可愛い。祈りのプリキュアにお祈りしてもらったら、叶うわね、きっと。あ!アタシも祈らなきゃ。祈里とずーっと一緒にいられますように!」
一方その頃、桃園家のベランダでは、ラブとせつなが並んで星を見上げていた。
「先生が言ってたけど、三千年前のハレー彗星のチリがこの流れ星なんだって。そう思って見ると凄いよね」
「ええ…とても古い彗星のかけらが今、光になってるのね…」
「へへー、何だかロマンチックだよね!」
寒さで赤らんだ頬を緩めてラブが笑い、同じく赤らんだ頬でせつなが微笑み返す。
「せつな、知ってる?流れ星にお願いごとすると叶うんだって」
「本で読んだことがあるわ。この国にある言い伝えなんでしょう?」
ラブからの返事がない。見ると、ラブは星空を見上げながら、何事かを呟いている。
「ラブ?何て言ったの?」
「せつながね、これからもっともっともーっと!幸せゲットできますようにって!」
「ラブったら…」
せつなは十分幸せだった。この家に来て、ラブやラブの両親に囲まれ、仲間たちと過ごせる今の時間が、何よりの幸せなのだから。
「じゃあわたしも」
ラブを真似て、せつなも夜空を見上げて呟く。
「これからも皆とずっと一緒にいられますように」
「あたしと、でしょ?」
「んもう…バカ」
くちづけるふたりのシルエットを、星たちの光が優しく照らしていた。
最終更新:2013年02月16日 21:06