「天然」/黒ブキ◆lg0Ts41PPY




色々あった1日。夕暮れの町を浴衣姿の少女が4人、肩を並べて歩いている。
ハプニングも多かったけど、終わり良ければ全て良し。
夏の思い出としては中々悪くない1日だよね。

止まる事のないお喋りに花を咲かせてると、ふと川縁の柵から身を乗り出し
困った様子の数人の子供達が目に入った。

「どうしたの?」
祈里が声を掛ける。聞けば、縁日で買ったひよこの入った籠を
ふざけあっているうちに川へ落としてしまったらしい。
4人も柵から覗くと、土手の下を流れる川の中ほどに流木が
枝を突き出していて、丁度上手い具合に籠が引っ掛かっている。
幸いひよこも濡れてはいないようだ。
いつもなら土手を下りて川に入れば難なく取れるが、今日は数日前まで
降り続いた雨で水嵩がかなりましている。
普段は流れも緩やかで子供の遊び場にもなっている場所だが
今は大人の膝下くらいの深さはあるはずだ。

泣きそうになっている子供達を見て、何とかしてやりたいと思うが
何しろこちらも浴衣。いつもの軽装なら、任せとけ!とばかりに
胸を叩くだろうラブも手立てが思い浮かばず困り顔。誰か人を呼ぼうにも籠は
枝のほんの先に引っ掛かっているだけなので、風でも吹けば
あっという間に落ちてしまうだろう。
助けを呼ぶ間持つだろうか…。

「ちょっと!せつな?!」
ラブの祈里の思考は美希の悲鳴によって破られた。
「!!!」
「!!!」
「ん?」
せつなは浴衣の裾をぴらっと捲り上げ、白い太ももの半ばまであらわにしている。
そして端をはだけないよう帯の上部にぎゅぎゅっと押し込むと、
下駄も脱いで、よいしょ!とばかりに柵を跨いで土手を降りて行った。


せつなは不安定な足元を苦にする様子もなくするすると土手を降りて行く。
せつなの目的が分かった子供達も口々に声援を送る。「おねえちゃん、気を付けてー!」
「頑張ってー!」
せつなはザブザブと水に入ると、ヒョイッと籠を取り、子供達に手を振って見せた。

その後口々にお礼を言う子供達を見送ると、祈里は少し頬を染めながら
「せつなちゃん、これ…。」
とタオルを差し出した。
「あ、ありがとう。いいの?」
「うん、早く拭いて。浴衣下ろせないでしょ?」
せつなはタオルを受け取ろうとしたが、そこで
「ちょーっと待った!」と美希にタオルを取り上げられた。
「もう!そんな格好で屈んだら見えちゃうでしょ!あたしが拭いたげるから!」
でも、とせつながもじもじするも美希は返事も聞かずせつなの前にしゃがみ
ごしごしと足を拭く。
「ほら、肩に掴まって足上げて!ブッキー、ちょっとタオル汚れるけどゴメン。」
そう言って足の裏の砂を払い、下駄も履かせてやる。

祈里は気にしないで、とおっとり笑い、これまで何の役にも立ってないラブは
ポーッと頬をピンクに染め、目の前の光景に釘付けになっている。
せつなは美希と祈里に申し訳なさそうにおろおろしている。

その後、家路に付いた面々だが胸中は様々である。

「私、何かまずかったのかしら?何だか美希は怖いし、ラブとブッキーは
ぼんやりしてるし。精一杯頑張ったつもりなんだけど…。」
「せつなちゃん、すごいなぁ。運動神経もいいんだ。
それと、ブルーのパンツがチラッと見えた気がしたんだけど。
後で美希ちゃんにせつなちゃん今日のパンツ何色だったか聞いてみよう。」
「はぁ、ダメだわこの子。全く持って分かっちゃいないわ。
取り敢えず一から"女の心得"ってものを叩き込まないと!
危なっかしくてみてられないわ。」
「わはーっ!せつなの生足ゲットだよー!写メ撮っとけばよかった!
いやいや、むしろムービー?
うちに帰ったらもう一回やってって頼んじゃおうかなー?
ついでに帯くるくる~ってやつも!だっはー!鼻血でるか!」

最終更新:2013年02月16日 20:05