「あなただけに我が儘を 後編」/黒ブキ◆lg0Ts41PPY R18




カーテンを締め切っているとはいえ、まだ午前の陽射しが満ちた部屋は
隠す物が無い明るさだ。
せつなの体にラブの指と唇を知らない部分など、もはや無い。
それでも、愛撫を待ちわび、淫靡な欲望に濡れた体を日の光の中で
見られるのには焼けつくような羞恥を覚えた。
ラブの視線から逃れるように顔を背け、枕に横顔を押し付ける。


「もう、濡れてるね…」


透き通る白磁のような体の中で、そこは鮮やかな紅を掃いたように染まっている。
淡い桃色から中へ向かうほどに、赤く色付いた花弁。
秘唇をくいっと押し広げられると、熱い滴が流れるのが自分でも分かった。


「ここも、まだ触ってないのに硬くなってる」


仰向けになっても少しも形の崩れない、白く豊かな双丘。
その頂を飾る、いつもは肌の色に溶けそうな淡い桜色の蕾。
今はほんのりと色づき、可愛らしく小さな芽を尖らせている。


「早く触って欲しいよね…?」
「あっ!あんっ…あ、あ、あ、…やっ、あ…ラブぅ…意地悪しないでぇ…」
「大丈夫。あたしの方が我慢出来なくなってきたから」


ぷくりと膨れた乳首をくりくりと摘ままれ、せつなは身悶えた。
ただこれだけの事で、頭から爪先まで信じられないくらいの快感が突き抜けた。
もっと触って欲しい。めちゃくちゃに泣かせて欲しい。
ラブになら、何をされてもいい。
ラブが望む事なら何でもする。


「せつなのカラダ、全部見たい…」


うっとりと、歌うようにラブは呟く。


せつなの感じてる顔が見たい。
せつなが気持ちよくなってる声が聞きたい。
乱れて、狂って、それでも欲しがって泣くせつなが見たい。


「すき。せつな、大好き…可愛い…」
「んっ!あ…っ?…あんっ…ーーっ!」
「あたしのモノだよ。全部、全部、誰にも触らせないんだから…」


そう、囁かれ、優しく乳首を吸われ、濡れた入り口を浅く抉られた。
痛い程に脈打っていた一番感じる突起を摘まれ捻られる。
その途端、せつなは小さく叫び、腰が大きく跳ね、ビクビクと震えた。


「…え?…あれ?」


真っ赤な顔で呆然としているせつなをラブはきょとんと見つめる。


「あの、ひょっとして、イッちゃった…?」
「……ーーっ!」
「…あれ、だけで……?」
「…だって…久しぶり、だったから…」


せつな自身も信じられない。
またさっきとは違った羞恥に全身が熱い。
どれほど餓えていたのか。
どんな言い訳も誤魔化しも通用しないくらいに分かってしまっただろう。


「ふぅん、そっかあ…」
「やっ!だめぇ…っ!まだ、あっ、あっ、やっ、やんっ…んんっ…」
「まだまだ足りないよね?まだ、たくさん欲しいよね?言ってよ、せつな…」
「ああっ、ああっ、!んっ、くぅ…はぁぁ…あ…」
「ねぇ…ここ、好きだよね…イイ?」
「…っ!すき…ラブ、好き。ラブが、好きなの…あくっ、くぅ…すき…好き…」



足りない。こんなのじゃ、全然足りない。
もっと欲しい。お願いだから。恥ずかしさも、何もかも忘れさせて。
せつなは大きく足を開き、自分からラブを求める。
足の間に顔を埋めてきたラブを歓喜の声で迎え入れた。
ラブは充血し、膨らみきったせつなの快楽の花芯に舌を絡め、吸う。
唇で挟み、柔らかく力を抜いた舌で陰核を包み込むように嘗め回すと、
せつなは咽び泣き、蕩けそうな快感に酔った。
ラブはせつなが達しそうな気配を見せると、それを敏感に察知し、
愛撫のリズムを変え、他の刺激を与える。
深く、浅く、中を掻き回し、素早く引き抜く。
せつなの中はきつく締まり、小さな口が指をしゃぶるように吸い付いて来る。
その感触を楽しみながら、手のひらの中でふるふると形を変える胸の尖った中心を
指で弾いたり、捏ね回したり。
唇を吸い、甘く舌を絡ませ、愛撫を欲しがる陰核も忘れずに弄くり玩ぶ。
少しずつタイミングを変えながら、指も舌も唇もすべて使い、余す事なくせつなを堪能する。
せつなは達しそうになっては焦らされ、かと言って休ませてもらえる訳でもなく
延々と絶頂寸前の快感を味あわされた。
果ては見えているのに、そこへ昇りつめそうになると、ふと遠ざけられてしまう。
もう苦しい、早く逝かせて欲しい。
まだ嫌。永遠にこの時が続いて欲しい。


「あっあっあっあっ、アッ、ーーっっ!んーっ!んーっ!」


ラブが中と外、胸の先を同時に強く刺激してきた。
頭が真っ白になる。


「せつな、イクとこ…見せて…」


顔を背けようとするせつなの顎に指をかけ、視線を合わせる。
熱に浮かされたように喘ぐ姿を隠そうとするせつなをラブは逃がさない。
せつなは弓なりに背を反らせ、背筋を駆け上がる凄まじいまでの快楽に蹂躙される。
ピンと足を緊張させ、背中を引き吊らせた後、くたりとシーツの上に弛緩し、
また直ぐ様新たな快楽の波に翻弄される。



幾度目かの絶頂の後、息を弾ませしどけなく横たわるせつなにラブはキスの雨を降らせる。
せつなはそのまま絶頂の余韻に微睡みたくなる体を無理矢理起こし、
ラブと体を入れ換える。


ラブの引き締まった腿を抱え、まだ濡れそぼり、ひくついた秘所を重ね合わせた。


「…せつな?まだいいよ。休んで…?」


随分苛めた自覚はある。
あんなに焦らした後で、次は立て続けに何度も逝かせてしまった。
いくらせつなでも疲れていない訳がない。
まだ時間はあるのだから、そんなに急がなくても大丈夫なのに。


「嫌…。次は…ラブといくの…」
「せつな…」
「私が…ラブを気持ちよくさせたいの…」



ぶるっ…と、せつなの肌が粟立つ。
ゆっくりと腰を前後させ、回す。
重なった場所から聞こえる濡れた音が自分の体液だけでは無いことを感じ、
せつなは胸を高鳴らせる。


「んっ…んんっ、はぁっ…せつなぁ…いいよぉ…」


せつなを蹂躙することで昂ったラブの秘所は既にたっぷりと蜜を湛えている。
せつなの動きに合わせて、ラブの声が快楽に溺れてゆく。
それが嬉しくて、ラブを更に感じさせようと懸命に腰を揺らせば、快感は自分にも返ってくる。
高まり過ぎた官能に意識を持っていかれそうになる度に、愛撫が止まってしまう。
このままではラブが達する前に限界が来てしまいそうだ。
せつなは意識を繋ぎ止めようと、懸命にラブの瑞々しい肢体をまさぐる。
小振りだが弾力のある乳房を揉みしだき、屈んで唇をねぶる。


「んんぅっ…せつなぁ、ねっ、無理…しちゃ、ダメ…っ、あんっ…」


せつなは涙を溜めながら、イヤイヤをするように首を振る。
ラブが欲しい。ラブといきたい。
痛々しくなるくらい、体を震わせながら必死に、もう蕩けきった秘肉を絡み付けてくる。
その姿にラブの中に生まれる愛しさと征服欲。
何て可愛い子なんだろう。
せつなは体だけでなく、心まで悦びで満たしてくれる。
濡れた瞳。芳しい肌の匂い。脳髄を蕩けさせるような艶めいた声。それらすべてが自分の為だけに注がれている。
ラブはその事実だけで果ててしまいそうだった。


「…じゃあ、手伝うね…」
「……?」


ラブが下からせつなを揺さぶるように腰をくねらせると、
せつなは悲鳴に近い泣き声を上げ、崩れ落ちてきた。


「やっぱり、あたしはこっちの方がいいみたい…」


せつなを再び押し倒すと、深く噛み合わせるように秘唇同士を擦り付ける。
スラリと伸びた白い脚を思い切り開かせ、その中心に息づく陰核同士を
細かく擦り合わせ、弾き合う。


「あぁぁあぁっ…!ダメっ、それダメぇっ…!」
「気持ち、いいでしょ…?ねぇ、せつなは?…はぁっ…っ!んっ、あぁんっ!」
「ーーーっ!…んーっ、はぅ……っ!」
「せつなぁ…はぁ、んっ、もう、少しだからっ!ねっ、あたし、もう…すぐっ!」



小刻みに腰を使い、再び主導権を握れた事に軽く安堵する。
せつなに敵うことなんて何一つないのだから、せめてこれだけは
せつなを泣かせる側でいたかった。
せつなはもはや喘ぎ声すらろくに上げられず、荒い息で虚ろな瞳にただラブだけを映している。
ガクガクと震えるせつなの腰を無理矢理押さえながら、ラブは自分も
昇り詰めるべく腰使いを早めてゆく。


ラブが絶頂を迎えたのと同時に、せつなは意識を手放した。
ラブは汗みずくになりながら、大きく胸を弾ませ、せつなの髪を撫でる。
頬に唇を寄せ、しっかりとせつなを胸に掻き抱くと、そのまま二人の
汗を吸い込んだベッドに沈み込んだ。
このまま眠ってしまいたいけど、今はせつなの寝顔を眺めていよう。
たぶん、せつなはすぐに目を覚ますはずだから。
ゆっくり眠っている時間は無い。
その事は誰よりもせつなは身に滲みて理解しているから。



ぬくもりに包まれて目を覚ます。
目の前に愛しい少女が自分を抱き締め、微笑んでいる。
髪を梳くしなやかな指。優しく細められた目。
微睡みから覚めたせつなに柔らかく口付けをくれる甘い唇。
こんな寝覚めがある事を忘れていた。
もうこのまま死んでもいいとすら思えそうな幸福感。


「…ごめんなさい。私、寝てた…?」
「ほんのちょっとだよ。寝てた…って言うか、気絶してた?」


少しからかうような口調に頬が熱くなった。
どれほど乱れてしまったのか。
思い出すのが拒まれるほどに恥ずかしい。
でも気を失うように眠ったけれど、僅かな時間だったのも本当らしい。
日の落ちるのが早い冬の日差しはまだ充分に部屋に注がれていた。


「あー、あのさ、せつな。今さらなんだけど…」
「…なあに?」
「あたし、せつなに何かしてあげられる事、無いかな…?」
「………何、か…?」
「ほら、あたし頭悪いし、考えるの苦手だし…。あたしなんかに
せつなを手伝える事なんて無いって分かってるけど…」
「………」
「でもね…ただ、せつなの連絡を待ってるだけじゃ嫌なんだ」
「…うん」
「何でもいい。せつなが、あたしに次に会う時にこうして欲しいとか、
逆にこれはやめて欲しいとか」


じっと見つめてくるせつなは、何かを迷っているようだった。
躊躇うように瞳を伏せ、またおずおずと上目遣いにラブを伺う。


「……あのね、本当に、何でもいい?」


迷いながらも口を開くせつなに、ラブは鼻息も荒く意気込んで目を輝かせた。
せつなが望むなら、出来る事は何でもする。
出来ない事は無理してでもやる。


「…メール、もっと欲しい…」
「…へっ…?」
「電話も、してくれたら…嬉しい」


もじもじと恥ずかしそうに、消え入りそうな声で呟く。


たぶん、メールを貰っても、毎回は返信出来ないと思うの。
でも、ラブが毎日どんな風に過ごしてるか。
お母さんやお父さん、美希やブッキーの事も知らせてくれたら嬉しい。
電話も、くれても滅多に出られないと思う。
それでも、メッセージ、残してくれたら嬉しい。
一日の終わりに、ラブの声を聞けたらすごく幸せだから。
だから…お願い。我が儘だけど、聞いてくれるの?



「あの、せつなさぁ…」
「…?」
「そう言うコトは、早く言って欲しかった…」


ラブは脱力感に耐えながらも、不安気に見つめるせつなに向き合う。


メールなんか、一日に何通でも送るよ!
今までは、せつなが忙しくて迷惑になったらいけないって我慢してたんだから!
返信なんか無くたっていいよ。そりゃ、たまーに『読んだよ』くらいの
返事は欲しいかもだけどさ。
せつながいいなら朝昼晩どころか、一時間に一回は送っちゃうんだから!
電話だってそーだよ!掛けまくっちゃうよ?
留守録、いつもいっぱいいっぱいまで入れちゃうから。
他の人の要件入らなくなっても知らないんだから!



顔を真っ赤にして捲し立てるラブにせつなはポカンとする。


「そんな事したら、ラブは一日中携帯放せないわよ…?」
「だからっ!それくらいしたいって事なのっ!あたしはっ!」


あああー、ホントにもうっ!
ラブは枕に突っ伏してジタバタと身悶える。


「あの…ラブ…?」
「あ、ごめんなさいは言わなくていいからね!」
「…分かった」
「でもこれからは、こう言う事はもうちょい早めにお願いします」
「分かり、ました」
「うん…こっちこそゴメン。ちょっと、うろたえただけだから」


よいしょ!と顔を上げたラブは顔中で笑顔を作る。
せつなが大好きな笑顔を。
若干不安げにしているせつなの心配を吹き飛ばすように。


「でもさ、あたし、ほんっとー下らない事メールしちゃうよ?
学校行く途中に猫がいた!とか、今日はテストがあってヤダー!とか」
「うん、そう言うのがいいわ」
「留守録もさ、おはよー!とか、おやすみー!とか、ネタが無かったら歌とか歌っちゃうかも」
「それお願い。子守唄代わりに聴くわ」
「お?ホントに?じゃあレパートリー増やさなきゃ!」


クスクスと笑いながらベッドで戯れ合う。
今度こんな時間が持てるのはいつになるのか分からない。
だから、一瞬一瞬を惜しむように。
相手の何気無い仕草一つ、言葉や声の揺らめき一つを逃さず心に刻むように。


「嬉しいな。これからはせつなにいつでもメールしていいんだ」
「…でも、返事……」
「いいよ!絶対に読んでくれるんでしょ?返信したいって思ってくれるんでしょ?」
「…うん」
「だったら、せつながやり易いように何か考えようよ。定型文でも作って
何回かに一回は返信する、とかさ…」
「でも…そんなの…」
「だからさ、あたしがしたくてするんだから!ね?」


送っても送っても返信が来なければ、あたしが悲しむって思うんでしょ?
そんなの全然いいから!あたしね、嬉しいんだよ。
ほんのちょっとでもせつながあたしのメールで笑顔になってくれたら。
ずっとせつなと繋がっていられるって思えるから。
次に会うときまで、色々胸に貯めておいてくれるんでしょ?
二人きりの時間は中々厳しいかもだけどさ、こう言う秘密の約束みたいなのって
すっごくドキドキするよね。


「それにね、辛くなったらちゃんと言うから」
「…?」
「まあ、そんな事にはならないと思うんだけど、返信が無いのが寂しいとか、
電話ももっと出て欲しいとか…」
「………」
「そしたらさ、また一緒に考えようよ!どうすれば、もっと楽しくできるのか!」


二人で考えよう。離れていても、少しでも一緒に幸せを感じられるように。



せつなは滲んできた涙を隠す為にラブの首筋に顔を埋める。
離れていても、少しでも一緒に。
心の中は、いつでも同じ景色が見られるように。


「他には、何かある?あたしにして欲しい事。今できる事でもいいよ?」


帰りたい。ずっと側にいたい。
本当は、願う事はそれだけ。でも、それは今は言えないから。


「…今、出来る事?」
「うん!まだ夜までは時間あるでしょ?どこか出掛けたいとか、一緒にしたい事とか…」
「何でもいいの…?」
「まかせて!」


本当は、このままずっとこうしていたいけど。
それは言わないのが華だろう。
少しは格好もつけておきたいし。
と、ラブは誰ともなしに心の中で呟く。


「……じゃあ、ね…?」
「なになに?何でも言って!」



もう一度、最初から。



そう、唇に息のかかる距離で囁く。
せつなの瞳を彩る蠱惑的な色。
ラブは脊髄から魂が引きずり出されそうなくらいゾクゾクする。
思わず唇を舐め、ゴクリと喉を鳴らす。


「あの…それは、フルコースで…?」
「そう。キスから、最後まで」
「……いいの?そりゃ、あたしは嬉しいんだけど…」
「うーん……」


せつなは可愛らしく小首を傾げ、歌うように囁く。


出掛けたり遊んだりは、美希やブッキーと一緒でもとても楽しいわ。
家で過ごすのも、お父さんやお母さんが一緒なのもとても幸せよ。


「でも、これはラブと二人きりの時しか出来ないし、したくないから」
「…なるほど」


「今度は、私がラブにしましょうか…?ラブが私にしたのと同じ事…全部」
「…全部……?」
「そう。全部、最初から。覚えてるもの…」


クスクスと笑うせつなを見て、ラブはちょっと身を引いて逃げる。
それはちょっと遠慮したい。
そう、顔にありありと書いてあった。


「酷いわね。自分は逃げたくなるような事、私にしたの?」
「いえいえ!でも、あたしせつなほど体力無いし…」


まだ笑っているせつなに覆い被さり、顔中にキスをする。


「今度は優しく、やさしー…く、させてもらいます…」
「分かったわ。それで、そのあとは一緒にお風呂に入りたい」
「了解です。準備させて頂きます」
「で、お風呂上がったら、一緒に夕ごはん作りましょ?」
「?!」
「お父さんと、お母さん。みんなで食べたい」
「…うん、そうだね」


たっぷり二人の時間を過ごしたら、また家族の時間に戻ろう。
せつなの家はここだから。
また家族みんなで、いってらっしゃいと見送ろう。
また、お帰りなさい、と迎える為に。


「あ!でもさ、時間勿体無いから簡単な物にしようね!冷凍庫にハンバーグのストックあるから
それならすぐできるよ!」
「もう、ラブったら…」


せつなの呟きを遮り、再び唇を重ねる。
別れはすぐそこに迫っている。
でも明日から、せつなの為に出来る事がある。
ほんの小さな事だけど、せつながこちらを少しでも身近に感じられるように。
同じ空気。同じ風景。同じ時間を生きている証を。
それが何よりも嬉しく、胸が踊る。
時は迫り、二人きりの時間はもうすぐ終わりを告げる。
でも、今回は泣かずに済みそうだった。
最終更新:2013年02月16日 16:32