【熱帯夜】/恵千果◆EeRc0idolE
「せつな…もう寝ちゃった?」
一体わたし、どうしちゃったの?初めてのラブとの旅行(修学旅行だけど)だっていうのに…。
「ねぇ…せつな」
だいたいラブもラブよ。大輔だか何だか知らないけど、いちゃいちゃしちゃって…。
「せつなったら!」
「なによ!ラブのバカ!」
「…っ!いきなりバカ呼ばわりはないんじゃないの」
「そんなつもりじゃ…」
ラブはため息をついて布団から起き上がる。
「なんか今日のせつな…やっぱり変だよ。どうしたのかな?」
変にさせてるのはラブよ…。
「わわっ!何で泣くの!?あたし何かした?」
わたしは首を振る。判ってる。ラブが悪いじゃない。悪いのは…わたし。
「せつな…泣いてちゃわかんないよ」
「だって…自分が嫌になったんだもの」
「どこが?あたしはせつなの全部が好き」
「全部だなんて…大袈裟ね」
「大袈裟なんかじゃないよ!」
そう言って、ラブはわたしを抱きしめる。
「だって…初めて会った時からずっと、色んなせつなを見てきたんだよ?」
…そうだった。ラブはイースだった頃のわたしを愛してくれた、たったひとりの人。
「…バカって言ってごめんなさい」
「もういいよ…で、何を怒ってたの?」
「言えないわ…恥ずかしくて」
「いいから!あたし達の間で隠し事はナシだよ」
「だって…ラブが大輔くんとばかり…その…仲良くしてるから」
「なんだ、そんなことか!良かった~あたしてっきり、夕飯のせつなのラフテーを横取りしたこと怒ってるのかと…」
ラブはぎゅうぎゅう抱きしめてくる。
「ちょっとラブ!苦しいわ!」
「えへへ~だって嬉しいんだもーん。せつながヤキモチ妬いてくれて」
ヤキモチ…これがそうなんだ。本で読んで知識はあったけれど、自分が嫉妬しているなんて気づかなかった。
「ねぇラブ…」
「わかってる」
くちびるに触れる柔らかなラブの感触。ずいぶん慣れたはずなのに、いまだに胸が高鳴る。
「今日はまだしてなかったからさ。えへへ」
「…ありがと」
「けど、ヤキモチ妬くせつなも可愛いよね」
「次はラブが妬く番よ」
「え?」
「ふふっ…冗談よ」
本当は、半分本気だった。いつか…ヤキモチを妬いてもらえるくらい、好きにさせてみせるんだから。
今度はわたしからくちづける。確かめ合うように、深くゆっくりと。
沖縄の熱い夜は、まだまだ始まったばかり。
最終更新:2013年02月16日 11:59