『氷解~again』/黒ブキ◆lg0Ts41PPY




せつなとあたしはおでこをくっつけ合って、少し、笑った。
何て事しちゃったんだろう、と言う大きな後悔。大好きな人と
気持ちが通じあった、大きな喜び。
いろいろな思いが渦巻き、泣きたいような、笑いたいような不思議な気持ち。



「…ごめんね。」
もう一度、あたしは謝る。どんなに謝っても足りないのは分かってる。
でもそれしか言えないから。


「…うん。でも、もうこんな乱暴なのはやめてね。」
結構、辛かったんだから。と少し冗談めかして、せつなは含羞む。



「やだ、私…。」
「…わはー……。」
せつなは今更ながら自分のはしたない姿に気付いたように
服の前を掻き合わせ羞恥に耳まで真っ赤にしている。
パリッとしていたワンピースは見る影もなくくしゃくしゃで、
汗やその他諸々で汚れて、かなり悲惨な状態だ。



(わはー…、何かせつな、すんごいえっちぃんですけど。
いや、ひん剥いたのはあたしなんすけどね…。)


「どうしよう、これ。」
血の染みが付いたワンピースを摘まんで少し途方に暮れる。
買って貰ったばかりの服を汚してしまったのを気に病んでいるらしい。
「あー、だいじょぶだよ。これコットンだし。すぐに洗ってアイロン掛ければ!」
洗ったげるよ!貸して。と服を引っ張ろうとするラブに、
「あっ、やん!」
裾を押さえて抵抗する。



下、何も着てないんだから!と赤い顔で上目遣いに少し睨まれ
ラブの顔も負けず劣らず赤くなる。
ついさっきまで、あーんな事やこーんな事をされてたのに
何を今更…と言う気がしなくもないが、どうやらそう言うものでもないらしい。
「…シャワー、浴びて来てもいいかな。」


そりゃそうだよね。恐らく身体中エライ事になってるんだから。
そりゃあ早くさっぱりしたいだろう。



「そだね!お湯、もう張ってあるから!ゆっくり入ってきなよ!」
そう言った途端、くしゅん!ラブがくしゃみをした。
考えなくてもラブも巻いていたバスタオルはとっくに落ちて、すっぽんぽんだ。
ある意味せつなより恥ずかしい。
クスリ、とせつなが笑い、
「じゃあ、一緒に入っちゃおうか?」
「!!ふぇ?!」




先に行くね。ぱさっ、とラブの頭に落ちてたバスタオルを掛けて、せつなは
バスルームに向かった。



(一緒にって、一緒にって…?!)



ラブは先ほどのせつなの言葉を反芻する。
『もう、こんな乱暴なのはやめてね。』
って事は、乱暴にしなきゃオッケー!って事すかね?!



かぁっ!と全身が熱くなり、心臓が口から飛び出しそうにバックンバックン
脈打っている。



今こそ真の勝負の時!ラブの本能がそう告げていた。
大好きな人と(無理矢理ではあるが)体の関係を持ち、(順番が逆だが)気持ちを
確かめ合い、(普通はこれが最初だろうが)告白もした。



(これで二人は両想い!晴れてラブラブ恋人同士…!)



のはず。
しかし、問題が一つ。



せつなは今回の事がラブが慣れない深刻な悩みに耽った挙げ句の暴走。
つまりは非日常、普通ならあり得ないイレギュラーな出来事と捉えて
いないか、と言う事だ。
それは困る。大いに困る。トチ狂って暴挙に出てしまったが、
ラブとしては、ここまでやったからには付き合い始めの恋人らしく
日常的にあんなコトやこんなコト……できなきゃ意味がないのだ。




(それに、えっちは気持ち良くなきゃ!
このままじゃ、えっちがトラウマになっちゃうかも!!
そんなのせつなの為にも絶対良くない!!!)



そのトラウマを植え付けたのは間違いなく自分なのだから
『責任取らなきゃ!』
ラブはいつものポジティブシンキングを取り戻しつつあった。




(ようし!!)
ラブの体に闘志がみなぎる。




(待ってて!せつな!!女のヨロコビ、ゲットだよ!!!)



最終更新:2013年02月12日 18:30