「幸せの交換」/◆BVjx9JFTno




手のひらほどの、
大きなハートの型。


溶かしたチョコレートを
流し込む。


冷蔵庫に、2つ並べる。


桃のドライフルーツを入れた、
あたしのチョコ。


いちごのドライフルーツを入れた、
せつなのチョコ。


せつなにとっては、
初めてのバレンタイン。


「私も、作るわ!」


目を輝かせたせつなを見て、
ちょっと、不安になった。




クラスでも、
せつなは大人気。


最近は、男の子達とも
よく話している。


渡したい人、
出来たのかな...



何だか、聞きづらいまま
一緒に、キッチンに立っている。



「メッセージ、書く?」
「ええ」


コルネを準備する。


ホワイトチョコを温めている
せつなの横顔。


すごく、伝わる。


食べてくれる人を、
想っている。


喜んで欲しい。


おいしいって、
言って欲しい。




冷蔵庫から、
チョコレートを取り出す。


綺麗に、型からはずれた。


コルネにホワイトチョコを入れ、
絞り出して、メッセージを書く。


せつなを見る。


あたしに少し背を向けて、
何か書いている。


そうだよね。


好きな人へのメッセージって
見られたくないよね。


はぁ...




日が変わろうとしている。


箱を開ける。


我ながら、
綺麗に出来た。


ホワイトチョコで書いた、
せつなの似顔絵。


せつなは、明日
学校に持っていくのかな。


あたしは、今のうちに
枕元にでも、置いておこう。


箱を閉め、リボンをかける。


そっと、部屋のドアを開ける。




鏡が、置いてあるようだった。



目の前には、あたしと同じように
ドアを開けている、せつなの姿。


「どうしたの、せつな...?」
「ラブこそ、どしたの...?」


お互いの、手に持った箱。



そういう...こと?



同時に、微笑む。



廊下で、向かい合う。


箱を右手に持って
差し出す。


左手で、受け取る。



「ありがと...」
「私こそ...」


何だか照れくさくて、
お互い、目を合わせられない。



「じゃあ、また明日ね」
「ええ、おやすみ...」




部屋に戻り、箱を開ける。


ハート型のチョコレートの上に、
きれいな文字。



「Now And Forever」


今も、これからも。



あの時の、せつなの横顔。


想ってくれていたのは、
あたしのこと。



胸が、きゅんとした。


今日は、一緒に
寝ちゃおうかな。



枕を持って、
ドアを開ける。



枕を持ったせつなと、
目があった。



気が合うね、
あたしたち。