「eve」/◆BVjx9JFTno




冷蔵庫を開け、
材料を確認する。


ボウルやフライパンの
状態を確認する。


食器棚を開け、
お皿を確認する。


手順を、口の中で
繰り返し確認する。



「もう、ラブったら、それ何回目?」



お母さんが、クスクス
笑っている。



だって、明日なんだもん。
落ち着いてなんか、いられない。




「大丈夫よ」


お母さんが、灰汁を取る
スプーンの手を止め、私を見る。


「ラブの気持ちを込めれば、
 きっとおいしく出来るわ」


「うん」


お母さんの言葉が、
あたしの力になる。



お母さんが鍋に向かい、
また灰汁を取り始める。


「お母さん、すごい手間だね」


「だって、明日は特別だから
 私も頑張っちゃおうかなって」




煮込み始めてから、もう4時間。
いい香りが漂っている。


「去年、初めて一緒にご飯食べたとき、
 スープを飲んで『おいしい』って言ってたでしょ」


お鍋の中を見つめながら、
手際よく灰汁をすくっている。



「これで、また喜んでくれたらなって...」



お母さん、
覚えていてくれたんだ。



初めて、おいしいと
思えていたこと。


初めて、心から
笑顔になれていたこと。



お母さんの想いが、
ぐっと伝わる。



娘を、想う気持ち。



「お母さん、ありがとう!」


自分のことのように、嬉しい。



「メインはラブのハンバーグだからね。
 頑張ってね」


「うん!最大パワーで作っちゃうよ!」




寝る前に、
ベランダに出る。


梅雨が明けた空に、
星がまたたいている。



あたしもお母さんも、
とびっきりおいしく作るからね。



つけ合わせのニンジンも、
何食わぬ顔で食べるんだ。


少しは、成長してるところを
見せなきゃ。



また、ここで
おしゃべりしようね。


積もる話が、たくさん
あるんだから。



明日から、夏休み。



せつなが、帰ってくる。



ラせ1-25は、せつな視点