「再会の9歳」/ゾンリー




「来ましたぞー加音町!」
「ここは音楽の町として有名でこの町の事を、私達と同年代の子達がテレビで紹介してました!」
「へぇ〜じゃあガールズバンドとかもたくさん居るのかな?」
「ウィ〜!スイーツショップも巡らなきゃ!」
中学生組の明るい声を背後に受けながら私__みくは町を見渡した。
「やっぱりお祭りだけあって人が多いね。みく、私からはぐれちゃダメだよ。」
そう言って私の手を握るお姉ちゃん。
今日は加音町の夏祭り、私達7人も浴衣姿で祭り会場までの道を歩く。
すると私の足首に白猫が正面からぶつかってきた。
「あら、カワイイ猫ちゃんね。」
ゆかりさんが喉を撫でる。
「にゃぷ〜」
嬉しそうに喉を鳴らす白猫ちゃん。
すると今度は女の子達が正面から走ってきた。
「「「「ハミィ〜!」」」」
奇遇にもその内の一人には見覚えがあった。
「アコ!」
「みく!?」
明るい茶髪の眼鏡の女の子。この前ポーチを拾ってくれた、病弱な私にとって数少ない同年代の友人。
思わずお姉ちゃんの手を離して、アコと手を取り合う。
「みく、お友達?」とお姉ちゃん。
「アコ、知り合いなの?」と黒髪の子。
私達はこの前の出来事を皆に話した。
へぇー、と相槌を打たれたのもつかの間。人の波にさらわれてお姉ちゃん達が流されて行った。
その場に残ったのは私とアコだけ。
「どうしよう…」
アコが私の肩をつかむ。
「きっと会場を回っていれば会えるわ。あんなに綺麗なお兄さんがいるんだもの。」
「あっ…お兄ちゃんじゃなくて、お姉ちゃん。」
「ええ!?」
「アハハ!よく間違えられるんだお姉ちゃん。そうだよね、向こうはあんなに人数いるもん。大丈夫大丈夫!」
私達はお祭りを楽しみながら、お姉ちゃん達を探すことにした。
「おばさん、コロッケ二つ!」
「お、アコちゃんお友達かい?」
「うん!」
「2人とも浴衣、似合ってるよ。お人形さんみたいだ!その可愛さに免じて、お代はいらないよ」
「「でも…」」
「ほらほら折角の揚げたてが冷めちゃう」
「「あ、ありがとうございます」」
おばさんから貰ったアツアツのコロッケを半分に割り、フーフーして口に運ぶ。
「ん〜美味しい!」
「でしょ?肉屋のおばさんのコロッケは。」

ひとしきり屋台を回って疲れた私は休憩を申し出た。
「そうね…食べ物もあるし、そこのベンチで休もうか。」
ベンチに座り、屋台と人で賑わう会場を眺めながら、私達は話に花を咲かせていた。
「アコ〜!」
さっきお姉ちゃんと一緒にはぐれた女の子が走ってきた。
「奏! みんなは?」
「多分ステージを見てるわよ。私は出張ラッキースプーンのお手伝いで抜けてきたけど。はい。」
そう言って手渡されたカップケーキ。純白のクリームにカラフルなカラースプレー、ミントとチョコレートが載せてあるそれは、キラパティで見たスイーツに負けず劣らず綺麗だった。
「響やいちかちゃん達には振舞ったから、あとはアコとみくちゃんだけ。食べ終わったら、みんなの所に合流しようか。」
美味しくカップケーキを完食し、奏さんに連れられ、遂にお姉ちゃん達と合流した。
「お姉ちゃーん!」
「みく!大丈夫だったかい?どこも具合悪くないかい?」
私を見つけるなりそう言って抱きしめるお姉ちゃん。
隣では「ちょ、ちょっと響…!」とアコが同じ様に抱きしめられるのを嫌がっている。
あたりはすっかり暗くなり、提灯の灯りが点々と遠くまで続いている。
「皆さん!…そろそろです」
ひまりちゃんが言うと同時に周囲が静まり返る。

どん!

漆黒の夜空に、大輪の花が咲いた。

次々と大小様々、カラフルな花が咲き、私達の笑顔が明るく照らされる。
「いや〜一時はどうなるかと思ったけど、無事皆で花火を見れて満足ですぞ!」
「ふふっ今日はありがとね、みく。」
「今度はいちご坂においでよ、アコ!」
そうして交わした握手と笑顔は、どの花火よりも、輝いていた。(終)



現5-41は、二人の出会いのお話です。
最終更新:2017年08月30日 00:27