「thaw」/◆BVjx9JFTno




ひと口、かじる。


思い出しながら、味わう。



「どうだ?」
「いい感じなんだけど、まだちょっと違うわね」



「そうか!やっぱりまだ調査が必要なんだな!
 ホホエミーナ、我に力を!」



「ちょっと、また行くの?」
「調査だ調査。実際に食べて確かめる必要があるのだ」



あっという間に、ホホエミーナは
飛び去っていった。



もう。


何だかんだ言って、向こうに
長居するくせに。


サウラーと顔を見合わせ、
同時に肩をすくめる。




復興中の街。


広場に、芝生を敷き詰めた。


据え付けた、滑り台や砂場で
はしゃぐ、子供達の声。



突然に、与えられた自由。


大人はまだぎこちないが、
子供は、割と早く馴染んでいる。



「お姉ちゃん!」
「遊ぼ!」


いつの間にか、子供達に
囲まれた。



両手をみんなに引かれ、
公園の中に引き込まれる。


最近は、いつもこれだ。



「お歌、歌って!」
「ダンス、教えて!」


「はいはい」


笑顔の子供達に、
四つ葉町の子供達が重なる。


少しは、近づけているかな。




数日長居したウエスターは、
帰って来るなり、自分の店に籠もっている。


何か、掴んできたのだろう。



肩を、叩かれた。


振り向く。



笑顔の、ホホエミーナ。


渡された包みを見て、
息を呑んだ。



見覚えのある、
赤いハンカチ。



「ねぇ!これ渡した人って...」



ホホエミーナが、短い手で
特徴を伝えようとする。


頭の両側で、髪が
束ねられている仕草。



「...ありがとう!」


包みを抱きしめるようにして、
部屋に走った。




部屋に戻り、
包みを開ける。


タッパーが出てきた。



「わぁ...」


中を見て、思わず微笑む。



ラブの、ハンバーグ。


にんじんと、ブロッコリーの
付け合わせ。



お皿に移し、
加温機に入れる。



取り出す頃には、懐かしい香りが
部屋を満たしていた。



胸いっぱいに、吸い込む。




「いただきます」


口に入れ、噛みしめる。


懐かしい味と共に、
鮮やかに風景が浮かぶ。



「ハンバーグは、得意なんだ!」
胸を張るラブ。


「うん、やっぱりおいしいなぁ」
満面の笑みで、喜ぶお父さん。


「せっちゃん、おかわりは?」
ご飯をよそってくれる、お母さん。



湯気の向こうに、
浮かぶ笑顔。



「せつなも、おいしい?」


聞こえたような
気がした。




ひと筋、こぼれた涙を
服の袖でぬぐい取る。



料理から伝わる、
ラブの思い。


家族の思い。



私を、待っててくれる
人がいる。



机の上の、写真に
目をやる。



家族で写った、
記念写真。



「ええ、とってもおいしいわ」


きっと、ラブにも
届くはず。



ラせ1-19は、あゆみ視点