プリキュア ドリームスターズ Ver.0.9 -Quartet Branche- 奏




「レッツ プレイ、プリキュア モジュレーション!」
 光が飛び散る。
「響け、四人の組曲!
 スイートプリキュア!!」
 狛犬は二匹。変身できないと思っていた あゆみがキュアエコーに変身してしまい、一匹では歯が立たなかったため、二匹に戻した。しかし、あゆみから奏に連絡が行っていたため、響たちが揃って迎え撃つ形になっている。四人は、狛犬が現れるとすぐに変身した。
「とっととやっつけて、ホワイトたちを助けに行くよ!」
「えぇ!」
〈アーッ!〉
〈ウンッ!〉
「プリキュア ミュージック・ロンド!」
 赤狗が三色の光のリングに捕えられた。このまま浄化できる。
〈手のかかるやつだなっ!〉
 黄狗は、赤狗の下に潜り込み、上半身を跳ね上げた。その力で、赤狗の体が黄狗の三色のリングから飛び出す
〈おお、よくやった〉
〈偉そうなんだよ〉
「ミュージック・ロンドが効かない…?」
 キュアビートが言った。
「もう一度、行くわよ!
 プリキュア シャイニング・サークル!
 辺りに、金色に輝く音符が乱舞した。狛犬たちはその輝きに目をしばたたかせている。
「リズム、ビート!」
「はいっ!」
「プリキュア ミュージック・ロンド!!」
 ふたたび、光のリングが飛んでいく。
 何を考えたのか、狛犬はお互いに向かって走り出した。まるで相撲取りのように正面衝突をする。
「え?!」
 二匹がぶつかったことで大きな火花が生まれる。それが三色の光のリングを弾き飛ばしてしまった。
「…。
 なに、それ」
 キュアリズムが呆然としている。ミュージック・ロンドが破られたのは事実で、呆然としている場合ではないのだが、頭をゴツンとぶつけて火花を生み出す、というやり方が冷静な反応を拒んでいた。狛犬は衝突のショックか仰向けになって足をひくつかせている。むしろ、笑いがこみ上げてきそうだ。それは、キュアミューズも同じらしく、呆れて顔をしかめていた。キュアビートなどは、感心したように何度も頷いている。
「リズム!」
 キュアメロディが叫ぶ。
 狛犬は突然、起き上がり、キュアリズムを挟んだ。
〈アーッ!〉
〈ウンッ!〉
 これまでと同じように嵐が巻き起こる。至近距離から風を食らったキュアリズムはあっという間にバランスを崩し、空中に巻き上げられた。空に開いた扉に吸い込まれていく。
「リズム!
 リズムーっ!」
 それを追うように靴音が響く。なぎさ、咲、そして あゆみ。
「遅かった?!」
「グレル、エンエン! フーちゃん!」
「おう!」
〈あ、またキュアエコーだ〉
 光が飛び散る。狛犬がキュアエコーに気づいた。やみかけた嵐がまた力を増す。キュアエコーの長いツインテールが風の中で暴れた。
「なぎさ!」
「あ…ありがとう」
 変身できないため足元がおぼつかない なぎさと咲が手をつないだ。大事なパートナーを奪われた怒りは感じるが、やはり変身するパワーにはならない。
〈もう、早くこっちこいよ〉
〈帰りたいんだからさぁ〉
 狛犬が割れた声で言った。
「グレル、エンエン」
「なんだ」
「私、行くよ」
「エコー…え?」
「あの扉の向こうに行く」
 その声は風に乗ってなぎさの耳にも入った。
「エコー、バカなこと言わないで!」
「ほのかさんも、舞さんも、奏さんも向こうで捕まっています!」
「だからって!」
「向こうに行けるのは私だけなんです!」
 烏天狗は、白いプリキュアをコレクションしようとしている。求めているのはキュエコーだけ。キュアエコー以外のプリキュアを呼び込む気などさらさらないのだ。
「いいぜ、エコー」
「グレル」
「僕も行くよ」
「うん。
 しっかり捕まってね」
 キュアエコーは体の力を抜いた。足がふわりと浮く。
「エコー!」
「必ずみんなを助けます。
 待っててください」
 キュアエコーの姿も天空の扉の向こうに消えた。



最終更新:2017年08月15日 07:54