プリキュア ドリームスターズ Ver.0.9 -Quartet Branche- 舞




 日差しがまぶしい。鳥も鳴いている。
 美翔 舞はスケッチブックの上で色鉛筆を滑らせていた。やがてその手が止まる。
「咲…」
「なに?」
「…面白い?」
「うん」
 日向咲は満面の笑顔で答えたが、舞は苦笑した。咲は、舞が絵を描いているところをじっと見ているだけだからだ。
「舞が一生懸命に絵を描いてるところを見ると、あたしも楽しくなってくるんだ」
「でも…」
「ひょっとして、邪魔かな」
「あ、そういうわけじゃないの」
 舞は慌てて両手を振った。
「咲が退屈じゃないのかなぁ、と思って」
「そんなことないよ。
 そうだ、何か飲むもの買って来るね。鳥居を出たところに自販機があったはずだから」
 咲が走っていく。舞は微笑んでいたが、また狛犬に視線を戻して手を動かし始めた。
「…え?」
 狛犬が動いた…ような気がする。
〈また気づかれた〉
「チョピーっ!」
「あなた方、何者なの?!」
 狛犬が真っ黒に色を変えて、台から飛び降りた。
「舞!」
「まさか、ウザイナー?」
〈うざいなぁ?〉
〈知らんなー…って、さっきも言ったな!〉
 狛犬が口を開けると嵐が起こった。
〈アーッ!〉
〈ウンッ!〉
「あぁっ!」
 舞は、電灯の柱をつかもうと手を伸ばした。だが、体は既に激しい嵐で滑り始めている。届かない。逆に少しずつ離れていく。
「くっ…きゃぁっ!」
 舞の体は、空に開いた扉の中に吸い込まれて行った。
 不思議な嵐だった。辺りの枯れ葉が飛び散ったりすることもない。咲が戻ってきても、何事かが起こったようには見えなかった。
 しかし、舞はいなかった。スケッチブックも色鉛筆のケースも残っている。
「…。
 舞?!」



最終更新:2017年08月15日 07:47