「罰当たり?」/◆BVjx9JFTno




「ようこそ、お参りくださいました」


頭を上げたその姿を見て、
自然に、ため息が出た。


清楚な、白衣。
あざやかな、緋袴。


凛とした、微笑。
湖水のように、澄んだ瞳。


きれいな黒髪が、
巫女装束に映える。


「わはー!せつな、超似合ってるよ...」
「ちょっと、完璧なんだけど...」
「ぜったい、似合うって信じてた!」



働いている最中なので、
無駄話もなし。


それどころか、あたし達にも
他の参拝客と同じように、
敬語で接してくる。


完全に、お仕事モードだ。






四つ葉町にある神社は、
初詣で大にぎわい。


せつなに、初詣期間の
助勤のお願いが来た。


せつなは、もちろん
二つ返事。



あれっ、みんなで
初詣に行く予定は...?



まぁいいか。


人から頼られると、せつなは
必要以上に頑張るタイプだから。






お祓いの呼び出し。
控え室への案内。


破魔矢やお守りの販売。
おみくじの案内。


御神酒の振る舞い。


せつなは、微笑みを絶やさず
くるくると働いている。




あたし達が注目するのと
同じくらい、他の参拝客も
せつなに注目している。


せつなが、お守りの
売り場に移動する。


お守り売り場に、
殺到する行列。


せつなが、御神酒の
振る舞いを始める。


何度もおかわりする、
おじさん達の行列。



せつなに案内してもらうために
お祓いの順番を調整している
家族まで居る。






何だか、せつながあまりに
綺麗すぎて、遠くなっちゃったみたい。


嬉しいんだけど、
ちょっと、さびしい。


おみくじも、小吉。
「逃げられぬよう注意」だって。



おみくじを結んで、
ふと振り返る。


遠くで顔を起こしたせつなと、
目があった。



一瞬だけ、せつなが
ニコッとわらった。


胸が、どきっとして
あたしは、2歩ほど後ろに下がった。


「ラブ、どうしたの?」
「ラブちゃん、大丈夫?」


「うん...ちょっと」


あぁ。


ノックアウトされちゃった。






何度もおみくじ引いたり、写真を撮ったりして、
結局、夕方まで神社に居た。


境内を後にしようとしたあたし達は、
古札回収の箱を入れ替えている
せつなを見つけた。


「せつな!お疲れさま!」
「ラブ...ごめんね、あんまり構えなくて」


「ううん!それよりもさ、すごく似合ってるよ!」
「ありがとう...何だか照れくさいわ」


「そんなことないよ、すっごく似合ってる!」
「アタシも自信を持って言うわ。完璧よ!」


「そう...かな」
せつなが、顔を赤らめる。



「せつな...この服って
 クリーニングに出すよね!」


「ええ、神社の方で
 出してくれるらしいけど...」


「いやいや!これはやっぱり
 使った人がちゃんと洗って返さないと!」


「そうなの...じゃあそう言っておくわ」


「うん!じゃああと少し、頑張ってね!」
「ええ、ありがとう」



せつなが持ち場に戻っていく。



「ちょっと、ラブ」


美希たんが肘であたしの脇腹をつつく。


「洗って返す前に、何かしようとしてるでしょ」



さすが。
最終更新:2013年02月12日 15:45