「ETERNAL WORLD」/コロ助MH




「はあ゛~」
「モフォ」
今日もはーちゃんとモフルンは盛大に突っ伏した。4人で始めた秘密のお茶会も今日でちょうど1ヶ月目になる。毎日飲んでいれば少しは慣れるかと思いきや依然と手強い薬膳茶、最近ではお茶会と言うより何か罰ゲームの様相を呈して来た様な気がする。
「『良薬口に苦し』だよはーちゃん、モフルン」
と懸命に作り笑顔のみらい。
(その言葉、毎日聞いてるわよ、みらい)
と内心思いつつもこちらも。
「このお茶の効果が分かるのはずっと先だけど信じて皆で頑張りましょう!」
といつも通りに高らかに宣言すると。
「お~」x2
「モフ~」
どこか力無い返事だけれど、どうやら皆の士気が落ちてない様なのでまだまだこのお茶会は続けられるわねと思っていると。
「モフ~良い事を思いついたモフ。この薬膳茶を魔法で甘くすれば飲みやすくなるモフ!」
と突然の夢の様な提案に。
「すご~い、モフルン!」
「頭良いね~モフルン!」
モフルンと万歳して歓喜するふたりの姿を見て成る程、盲点だったわと。でも。
「確かに良い案だと思うんだけど、でもそうなると薬膳茶の成分も変化して効き目が無くなっちゃうじゃないかしら?」
の言葉に皆が瞬時に凍りついたように固まり、一気に雰囲気が暗くなりかけた時にはーちゃんが。
「大丈夫だよ、こうすれば良いんだよ! キュアップ・ラパパ! 薬膳茶よ中身はそのままで甘くな~れ!」
「お~」
「モフ~」
と再び歓喜が沸き起こる。魔法がかかった薬膳茶はさっきと見た目は変わらないけれども果たしてと思っていると。
「甘いニオイがするモフ~」
とモフルンがお茶に近づき一口飲むと。
「美味しいモフ~。紅茶みたいな味だモフ~」
その言葉にみらいとはーちゃんの目が輝かせて続いて飲む そして。
「本当だ!美味しい~。これなら毎日飲めるね~。リコも早く飲んでみなよ」
恐る恐る飲んでみると自然と溜め息がこぼれた。
「美味しい……!」
これがあれだけ苦労した同じ薬膳茶だとは思えなかった。あまりのことに感動に浸ってる私の横でみらいとはーちゃんがモフルンを胴上げして盛り上がっている。
「これで明日からのお茶会が楽しみだね! そうだ、どうせならお父さんとお母さんとおばあちゃん達とも一緒にお茶会しようよ!」
「待ってみらい、それだと行く行くは色々とまずい事になるんじゃないの?」
「え、何で? ちゃんとこの薬膳茶の効き目の事は話すしそれに私、お父さん達とも一緒に居たいもの」
その言葉に確かにと、私もお父様、お母様、お姉ちゃんは勿論の事、みらいのおじ様、おば様、おばあ様の事も大好きだから。
「分かったわみらい、でもおじさま達には薬膳茶の事は十分に説明しなきゃね」
「うん、分かったよ。じゃあ一緒にお願い、はーちゃんもモフルンもね」
と4人で階段を降りていった。そして次の晩から朝日奈家では夕食後に皆でお茶会をするのが習慣となった。



「ETERNAL WORLD」



「いってきます、お母さん」
「いってきます、おばさま」x2
「いってきますモフ~」
ここは朝日奈邸の玄関前。
「おはようございます」
とリズが隣の家から出てくる。
「おはよう、リズちゃん。今日も皆で一緒の通勤は賑やかね」
と今日子がほがらかに笑う。
「今日は私が運転ね」
とみらいがまほうの絨毯を広げその上に5人が座り出発する。
「いってらっしゃ~い」
の言葉が終わる前にあっと言う間に彼女達の姿が見えなくなる。さて私も出勤の準備をと家に入ろうとした時に窓に映った自身の姿が目に入り、今日子は周囲を見回して思わず呟く。
「まさかあの時のみらいとリコちゃんの言ってた事が本当だったとはね~ まあでも私は今もこの通りピッチピッチの美人で元気だし良いっか!」
と上機嫌で家に入って行った――。



現在、朝日奈邸は魔法界の私の実家の隣に、ナシマホウ界の時と同じ姿で建っている。あのお茶会を始めてからもう20年程経過していた。みらいは大学卒業後、宣言通りにモフルンと一緒に魔法学校に復学した。一方、はーちゃんも全ての世界が安定しつつあると言う事と魔法界とナシマホウ界の距離が以前と変わらない距離までに近づいたとの事で、彼女もまた魔法学校に通う事になった。

みらいは伝説の魔法使いだったと言う事もあったし元より素質もあったのだろう、更には会えなかった4年間の間に見違える程に努力家になっていた彼女は、あっという間に魔法学校を卒業し、教職課程を履修し教員免許を取得してしまった。教育実習の時には私の授業に同行して彼女の実地指導を監査する事もあったのだが、当時の自分の時と比較しても少し……いや正直かなり上手くこなしている姿を見て、いつか追い越される日が来るかもしれないと内心ちょっと冷や汗がものだったが。
「私の方が先に先生になったんだし、いつも頑張っているから大丈夫」
と自分を元気付けるも、数日後のはーちゃんの教育実習に同行した時にはものの見事に打ちのめされてしまった。

彼女もまたみらいと一緒に教育課程を履修し教員免許を取得したのだが、元より右に並ぶ者がいない程の魔法力の持ち主に加え「フェリーチェ」を思わせるその高貴で聡明な佇まいと口調で分かりやすい授業をするので、瞬く間に生徒間の中で人気ナンバーワンの先生になってしまった……。少し前までは私とお姉ちゃんとで「美人姉妹教師どっちが上か?!」なんて騒がれてたのが遠い昔の様に思える……とここまでが、今から15年前の出来事である。

そして現在、私達3人は魔法学校で教鞭を執っているのだが、最近になって魔法界全体で注目を浴びる様になっていた。話題になっているのは私達の容姿の事である。同世代の人達と比較しても圧倒的に若くてまるで時が止まった様に美しいままだと。
「その若さを保つ秘訣は?」
とものすごい問い合わせが来たのだが、別に隠すつもりはないので例の薬膳茶のおかげだと言う事と、飲む時に魔法をかけると美味しく飲める事を皆に伝えると、魔法界では空前の薬膳茶ブームになった。実は私達の身近な人達には薦めてたのだけれども、元々の味が味なだけに、美味しい飲み方を教えても私の家族とみらいの家族しか飲んでくれなかったんだけれど、でもこうして実際に効果が出ている私達を見て、今になって多くの人が躍起なって薬膳茶を求め飲みはじめている。そうして皆が飲む様になって分かった事は、その効能には個人差があり、校長先生の様に若返るまでの人はほとんど見られる事はなく、どちらかと言うとその人の老化の速度を緩和させると言うのが一般に認識されるようになった。先日久々に補習メイツに会った時も。
「本当に全然変わってないわよね~、モフちゃんも」
「昔の写真と比べても一緒だわ」
「あ~あ、あの時みらいとリコが薦めてくれた時に飲んでりゃあ、アタイもなあ~」

しかし、魔法界においては若い姿を維持出来る事は賞賛される事があっても、ナシマホウ界だとそうはいかなかった。家族全員が何年も同じ姿で若いままでいられると言うのは、当人達には嬉しい事であったが、残念ながら周囲から奇異な視線を浴びる事になり、噂になりついにはマスコミまで動き始めた事から、校長先生に事情を話し特別に許可を頂きこうして朝日奈邸ごと魔法界に引っ越してきたのである。ちなみに引っ越し先が私の実家の隣なのは、お父様が私がみらいの家でお世話になっているので是非、にと申し出たからである。良かれと思ってやった事とは言え思わぬ混乱を招いてしまい、結果、住み慣れた街を離れなければならなくなってしまった事態に陥った事をおじ様達に皆で謝ると。
「良いんだよ、みらい、リコちゃん、ことはちゃん、モフルン、分かってるよ、皆が僕らとずっと一緒にいたいと思うのと同じで僕も今日子もお母さんもずっと一緒にいたいと思っているんだよ君達と。だって家族なんだから。皆一緒だったらこの世界でも絶対うまくいくから大丈夫!」
と満面の笑顔でサムズアップしてくれた。その温かい言葉と笑顔に胸が一杯になり、次の瞬間、みらい達とおじ様達の胸の中に飛び込んでいってしまった。その後、おじ様とおば様は魔法商店街のひとつの店舗をパワーストーンの店と電気屋を半々で営業している。正直、最初はパワーストーンはともかく、魔法界で電気屋とはどうかなと思ってたのだけれども意外に評判が良く、何よりもおじ様の誠実な人柄のせいもあるのだろう、修理やアフターメンテナンスは勿論、お客様の希望に見合った電気製品を用意するのでそこそこ賑わっていた。また商品の仕入れにはドクロムシー様とヤモーさんにお願いすればすぐにナシマホウ界に行けるので、商品の確保については困る事なく繁盛していき、ついには人気店となり今ではフランソワさんやグスタフさんのお店と肩を並べるまでになった。

おばあ様は長年、魔法使いの存在を信じていたせいもあって、観るもの触れるもの全てが新鮮らしくて、毎日魔力が込められた絨毯や道具を使って様々な場所に散策に出かけている。先日はみらいと私の授業を観てみたいと言うので魔法学校で一日体験をしたのだけれども、その際に校長先生が。
「みらいくんのお身内の方がお見えになられてるなら是非、ご挨拶をせねばならぬな」
とお忙しい中をわざわざ会いに来て下さった。この時のおばあ様の様子はいつもと少し違ってたので未だに覚えている。校長先生の顔を見るなり、一瞬だけ驚いた表情を見せつつもすぐいつもの温和な表情に戻り。
「そう、あなたが魔法学校の……」
と誰にも聞こえない程にそっと呟き。
「初めまして、いつもみらいと……」
と傍目は社交辞令の様な挨拶を交わしていたのだが、よく見るとおばあ様の目が微かに潤んでいる様にも見えたので帰り際にそれとなく尋ねると、うふふっと実に可笑しそうに微笑んで。
「やっぱり長生きはするものね。みらい、リコちゃん、はーちゃん本当にありがとう」
とまるで少女を思わせる様な笑顔を向けてくれた。おばあ様はその後も機会があれば魔法学校に来る様になった。

そして今日、私達に突然の転機が訪れた。校長先生が大切な話があるので放課後に校長室まで来る様にと連絡があったので行ってみると。
「わしはこれからの魔法界の発展の為に、新しい活力を与える為にも若い君達を校長に推薦しようと思っているのじゃが、どうかの」
あまりに突然な申し出に、私達は目を丸くして顔を見合わせている事しか出来なかったのだが。
「校長の職務については教頭先生をはじめ、皆に君達をサポートする様に既にお願いしてある。勿論、このわしもじゃ」
とにこやかに校長先生は仰ってくれたのだけれども。
「私達が校長先生になるのでしたら、その前に教頭先生もアイザック先生もお姉ちゃ、いやリズ先生もいらっしゃるのに何故私達なんでしょうか? それに校長先生は校長先生をお辞めになられたらその後はどうなさるおつもりなんですか?」
と気が動転したあまりにまくし立ててしまった。直後、心配したのかみらいとはーちゃんが側に来て手を取ってくれたおかげで、すぐに我に返る事が出来たんだけれども。
「申し訳ありません、取り乱してしまいました」
「いや、良いのじゃ。確かにいきなりじゃったからの。教頭先生達は教師として学園で生徒に魔法を教える事が一番大切なんじゃそうだ。それをこれからも続けて行きたいと言っておったわ。わしはこの後は理事長となって君達のサポートもしつつ、魔法界をもう一度ゆっくりと巡ってこれまでとはまた違う方法で発展させられないか見つけたいと考えておる」
「リコ君、君達を校長に推薦したのは、君達が常々、いつか魔法界とナシマホウ界の人々を繋げたいと言っておったのを聞いてたからじゃ。その為に校長先生になりたいと言う事も。 残念ながらナシマホウ界との交流は未だにこちらからの一方通行のままじゃが、君達だったら……かつてこのふたつの世界の危機を救った君達だったら、いつかはそれが実現出来る日が来るとわしは信じている。どうじゃ引き受けてはくれぬか?」
いつだって魔法界全体の事を、私達の事を考えて下さっている校長先生の真摯な言葉に胸を打たれた私は。
「お引き受け致します」
と伝えようとした瞬間にみらいに遮られた。
「あの、校長先生なんですが、モフルンも一緒ではダメでしょうか? 私達はこれまでもずっと4人で頑張って来たので是非、お願いします!」
その言葉にはーちゃんも同調し、一緒になってお願いしている。みらいの行く所、必ず一緒のモフルンは彼女の授業の時も一緒で、生徒に混じって講義を聞くこともあれば実技の授業の時などは手伝ったりもして、陰になり日向になりサポートしている。その姿に加え、元より愛くるしい容姿をしているせいもあって生徒達に親しみ込めて「モフルン先生」と呼ばれて慕われてはいるんだけれども、さすがにそれは無理でしょうと思っていると、校長先生は一瞬、考え込む様子を見せ。
「そうじゃな、君達は4人で数々の奇跡を起こして来たんだったな。良かろう。但しモフルン君は表向きは校長先生の補佐と言う事にしておいてくれ。教頭先生達にはわしから上手く伝えておくのでな」
「やった~4人で校長先生だ~」x2
「モフルンも校長先生モフ~」
ハイタッチしあって喜び合うみらい達に、それをにこやかに見守る校長先生の様子を観て。
「いやいや、モフルンもってありえないでしょう、あと4人で校長先生なんて……」
と一瞬呆然としてしまったけれど、よくよく考えたら長年の夢が叶った訳でそれを理解した瞬間、私も皆の中に入って行って喜びを分かちあっていた。

その後、お姉ちゃんと待ち合わせし皆で魔法の絨毯で帰宅途中。
「お姉ちゃん、私達が校長先生になる事知ってたんでしょう? 何で教えてくれなかったの?」
「だって校長先生がご自分でお伝えするからと仰るから言わなかったのよ」
「でもその、お姉ちゃんは良いの、私が校長先生で?」
「大丈夫よ、だってリコ達は『伝説の魔法使いプリキュア』で、あの時ふたつの世界を救ったんでしょう?」
「え、何で知っているの?! それを知っているのは私達と校長先生とみらいのおじ様達とヤモーさん達位しか知らない筈なのに」
「実はね、あなた達以外の先生が集められて会議があって、次期校長にはあなた達をと校長先生が推薦したんだけども皆、難色を示したの。そこで校長先生が水晶に記録されてたあなた達3人のプリキュアとしての活動の映像を観せてくれたら、皆一様に感動して満場一致で決まったのよ。でも安心して、これは先生達の間で絶対秘密にすると言う事で決まったから」
「……」
それを聞いた私達は言葉が出なかった。でもまあでもとりあえずは長年の夢が叶った事だし、結果オーライと言う事で納得する事にした。

朝日奈邸に到着するとおば様達が出迎えてくれた。
「おかえりなさい」x3
「ただいま~」x2
「ただいま、帰りました」x2
「ただいま、モフ~」

「お父さん、お母さん、おばあちゃん、今日は私達、重大発表があるの!!」
少し興奮気味にみらいがおじ様達に言い寄る。その妙な迫力にたじろぎながらも。
「そうかそれは楽しみだな~ 夕食の時にでも教えてくれよ。そうだリズちゃんも夕食はご一緒にどう?」
「ありがとうございます、それでは後ほどお邪魔させて頂きます。それじゃリコ、また後でね」
「うん、お姉ちゃん後でね」
と朝日奈邸に皆と一緒に入って行くと、お姉ちゃんの苦笑気味の呟きが聞こえてしまった。
「全くリコったら、自宅がすぐ隣にあるのに当たり前の様にみらいさんの家に帰って行くのね」

その後、ただの夕食は盛大な祝賀パーティーに変更になり、大いに盛り上がった。



新しい校長が決まった夜、校長室にある人物が訪問した。私の占いには昼間のうちに出ていたので、校長にはお知らせしていたのだが。
「校長、お見えになられました」
「ん、来たか」
そこには半透明の状態のクシィ様が立っていた。
「今日はどこを観て回ったのじゃ? クシィ」
校長が椅子から立ち上がり笑顔で迎える。
「ふむ、今日は魔法の森に行ってきたのか。それで動物達は皆健やかに過ごしておったか?」
「……」
「そうか、あのペガサスの子供はそんなに成長して、今度は子供が生まれるのか。時間が経つのは早いものだのう」
「……」

ふたりの会話はいつもこんなカンジで、傍で観てると校長がひとりだけで喋っている様に見える。クシィ様の口元は動いているのできっとお話されているのだろうけれども、その声は校長にしか届いてない様であった。なのでおふたりだけの世界で話している間は、何となく疎外されてる気がしてちょっとだけ寂しい思いもするのだけれども、でも校長が普段は見せない程の笑顔で旧友との語らいを楽しんでいる姿をみると何も言えなくなってしまう。

校長の話によると、クシィ様は闇の魔法の呪いから解放された後は魂だけの存在として、自由に魔法界とナシマホウ界を行き来し世界を観て回って楽しんでいたそうなのだが、あのデウスマストの眷属との最終決戦でふたつの世界が分断された時にナシマホウ界に居たせいで帰れなくなってしまったそうで、そして再び世界が繋がる事が出来たので、こうして旧友の校長の元に訪れる様になったとの事である。

「おい、どうしたのじゃ?」
ふと物思いにふけっていてボーッとしてしまったらしい。
「いえ、何でもありませんわ。ちょっと考え事をしていました」
「そうか、ところでさっきリコ君達に話した事なんじゃが、実は魔法界を巡ってみたいと言ってたのはこのクシィの影響なんじゃ。理事長になればこれからは時間に余裕が出来る筈なので一緒に巡ってみたいと思う」
実に楽しみだと言わんばかりの笑顔の校長には胸がチクリと痛んだが、私はまた新たなる校長の元で自分の使命を果たすだけと心の中で言い聞かせた時。
「それでな、君にも是非一緒に来て欲しいのだ。本来なら君の役目は魔法界の長たる校長の元で相談役として職務を果たすべきだと分かってはおるのだが、わしがこれまで幾多の困難を乗り越えてこれたのは君と一緒に居たからこそだし、これからも一緒に居たいと思っている。どうじゃろうキャシーよ」
一瞬プロポーズともとれる突然の校長の言葉に有頂天になりかけるも全力で平静を装い、努めていつも口調で。
「分かりました、これからも私はどこまでもお供させて頂きますのでご安心下さい」
私が人間だったらきっと、つま先から頭のてっぺんまで真っ赤になっているんだろうなと思いつつ、ふと周囲を見渡すといつの間にかクシィ様のお姿が見えなくなっていた。気を使って下さったのだろうか。私の占いは自分の未来までは見る事は出来ないけれど、きっとあの子達と同じ様に自分も光輝いているのかもしれないと思えてきた。この方とこれからもご一緒出来るならきっと、と。その後は校長とふたりでいつもの他愛のない話で盛り上がり、明け方までついつい話し込んでしまった。



祝賀パーティーが終了し、恒例のお茶会も終わり部屋に戻り、明日の準備をしてそろそろ寝ようかなと思っているとドアがノックされた。どうぞと答えると、みらいがモフルンを抱いてはーちゃんと入ってきた。ちなみにはーちゃんは本来の姿に戻っている。
「ねえリコ、今晩は皆で一緒に寝ない?」
「あのねみらい、私達もういくつだと思っているの? いつまでも子供じゃないのよ」
とわざとらしく溜め息をつき一応、表面上は大人な対応を取ってみる。
「いつまでも子供じゃない私達、ね~はーちゃん、モフルン」
「はー!」
「モフ~」
彼女達にとってはオンとオフのスイッチの切り替えなのか、家で4人だけになるといつもこの調子になる。昔と変わらない心地よいこの雰囲気は、教師の責務と言う張り詰めた1日を過ごした私自身にとっても随分と癒しとなってて感謝しているし、嬉しいお誘いなのだが一応先輩として。
「今度私達は校長先生に任命されるのよ、だからこれからは魔法界全体の代表として公私ともに分別のある行動を取るべきだと思うの」
とわざとらしくキリっとした表情とポーズでみらい達に伝えると。
「だからさ~リコ、そのお祝いに皆で一緒に寝ようよ!」
「は~記念、記念!」
「記念モフ~」
と満面の笑顔で訳の分からない回答と波状攻撃を受けたので仕方ないという風に。
「分かったわ良いわ、でも今晩だけ特別だからね。じゃあ行きましょう」
とすまして先に部屋を出て屋根裏部屋のはーちゃんの部屋に向かってると、後ろから歓声に混じって。
「相変わらずリコってチョロいね~」
「チョロいよね~」
「チョロいモフ~」
と微かに聞こえてきたけど気にしない事にする。

途中、廊下でおば様とすれ違って。
「あれ、あなた達また今夜も一緒に寝るの?」
と尋ねられる。実は私とはーちゃんが再びこの家に住み始めた時に4人ではーちゃんの屋根裏部屋で寝るのが習慣になってしまい、いつまで経っても続いているのでみらい達が教師免許を取得したのを機に。
「みらいとはーちゃんも先生になったんだし、これからは皆それぞれ自分の部屋で寝ましょう」
と提案すると3人から激しく反対されのだけれども心を鬼にして。
「今度あなた達は教師になるのよ、これからは教師として公私ともに生徒達に恥ずかしくない行動を取るべきだと思うの」
「じゃあ今晩は私とはーちゃんが先生になった祝いに……」
と言った具合に何だかんだと理由をつけて一日を置かずして私を誘いにくる。なので結局は1年の内の大半は4人で一緒に寝ている。

「ええ、今日は皆で校長先生になったお祝いだそうです」
「そうなの、じゃあ皆おやすみなさい」
「おやすみなさい」x3
「おやすみなさいモフ」
私たちが屋根裏部屋の階段を上がって行くのを見送りながら。
「本当、いつまで経っても仲が良いんだから。昨日はピーカンみかんが豊作で、一昨日は薬膳茶の茶柱が立ってた祝いとかだったかしら。全くあの子達にとっては毎日が何かしらの記念日なのね」
と楽しげに微笑みながら、おば様は部屋に戻って行った。

はーちゃんの部屋、4人はいつもの定位置でベッドで寝ている。
「私達、本当に校長先生になるんだね~。ワクワクもんだ~」
「ワクワクもんだし~」
「ワクワクモフ~」
「そうよ、でも4人で任命されたと言う事は、それだけ校長先生のお仕事が激務と言う事よ。だから心してかからなければいけないと思うの」
「そうだね、頑張らないと。でも大丈夫だよ。4人一緒なら、これまでも色んな困難を乗り越えて来たし、何より私達の夢にもつながっているんだから」
「魔法界とナシマホウ界が繋がったら、まゆみとかなと壮太とゆうとを招待したいね~」
「モフルンは、いちごメロンパンのお店が魔法界にも出来て欲しいモフ」
とそれぞれが描く未来についていつまでも話は尽きなかったが時計を見るとそろそろ12時に差し掛かろうとしてたので。
「皆、明日も早いしもう寝ましょう。おやすみなさい」
と皆に伝え部屋の電気を落とすと。
「おやすみなさい」x2
「おやすみなさいモフ」
の返事の後の数分後には規則正しい寝息の音が聞こえてきた。どうやら今日は色々と劇的な事があったせいで疲れてたらしい。つられて私も眠りに落ちそうになる時ふとはーちゃんが最初に魔法を使った時の光景が蘇った。
「キュアップ・ラパパ! 大好きなみらいとリコとモフルンとずーっと、ずーっと一緒にいられますように……」
「きっとあの時の魔法が今も効いているんだわ。だから私達は……ありがとうね、はーちゃん」

その晩は、魔法界とナシマホウ界との友好交流の調印式に、私達4人が正装で立ち会っている夢を見た。周囲を見回すと皆、知った顔ばかりで盛大に祝福してくれている。その光景に何となくこれは夢なんだなと感じつつも観衆に大きく手を振って回った、そしていつか絶対に実現しようと思いながら夢の中の私は大いに楽しんだ。翌朝、みらい達に夢の事を話すと、偶然か皆同じ夢を見たそうで朝から朝日奈家の食卓は大いに盛り上がった。そして。
「リコ、今日は皆で同じ夢を見た記念だよ!」
とみらいとはーちゃんとモフルンと鼻息を荒くして迫ってきた。まだ朝なのにと苦笑するしかなかったけれど、でもどうやら今日も良い1日になりそうだ。思えばみらいと巡り逢えた奇跡が今もずっと続いている様な気がする。そしてこれからもずっと。でも、それでも心配性な私は気がつくとついつい呟いてしまう。

「キュアップ・ラパパ!今日も良い日になあれ」
と。



競4-3競4-12は、この前のお話です。