『ブルーにこんがらがって』/Mitchell & Carroll




 せっかく出向いた足も、本日は御引き取り願おう。いつものように例の公園で、ドーナツでも食べながらガールズトークに勤む――そんな休日の予定だったが、先客が、それも珍妙なのが占拠していたので、渋々、公園を後にすることにした。その先客たちの織り成す会話に多少の興味もあったものの、夢に出て来られたりしては月曜日に影響が出兼ねないからだ。

 公園には幾羽かの鳩が、彼らの、いや彼女らの、いや、彼らのおこぼれを頂戴しようと屯(たむろ)していた。ここ四葉町は最近、白い鳩が増えたようである。ピンクのハートは愛ある印というが、白い鳩は幸せを運んでくるらしい。だが、そんな鳩たちに負けないくらい真っ白なズボンを彼女ら、いや彼らは穿いていた。

「ねえ、美味しいでしょう?ここのドーナツ。フランソワ、聞いてる?」
 その男の着ている薄紫のシャツは薄手と見え、時おり、風に靡(なび)きながら体に張り付いて乳首を浮き立たせている。
「ええ、ほんとだわ。それで、どうなの?モメール。最近、男とは」
 こちらは青紫を基調とした服を着ている。体つきも喋り方も、もう一人のほうと比べると些か華奢である。
「男運なんて最悪よッ!」
 そう怒鳴りながらモメールは足元に寄ってきた鳩を、ヒールを履いた足で蹴りかえす。鳩は今まで出したことも無いような声を上げてどこかに飛んでいった。
「掴んでも掴んでも、スルリスルリとすり抜けていくのよ、男が!あああ!!」
と、まるで悲劇のヒロインのように大袈裟に身振り手振りを交えて熱弁する。そしてまたムシャムシャとドーナツを貪り始めるのだが、その都度、イヤリングやらネックレスやらが重なって絶えず音を立てている。
「仕事とプライベートの両立は不可能なのよ!」
 真っ赤な口紅にドーナツのかすを付けて喋るモメールに、フランソワは
「あら、わたしはそんなこと無いけど?」
と、足元の鳩にドーナツのかけらを分け与えながら答える。当然、鳩は次第に彼の黒いロングブーツの方に擦り寄って来る。
「なんですってッ!?」
 天と地をひっくり返すようなモメールの大声に、せっかく寄ってきた鳩も散ってしまった。顔を真っ赤に紅潮させるものだから、かえって青々しいひげを際立たせる事になる。
「不平等~!!」
「まあまあ、落ち着きなさい」
「恋愛格差~!!」
「好きなだけおっしゃい」
「全速前進~!!」

 一頻り叫んで、モメールの怒りもようやく治まり始めた。顔の下半分には、澄んだ湖のように青いひげが広がっている。それも間も無く、夕焼けに照らされ虹色に輝き始める。そうなると先程とは打って変わってご機嫌である。
「――そうだわ、今度ハワイへいらっしゃい。マカダミアナッツた~っぷりのチョコレートをご馳走してあげるわ」
 颯爽と席を立つモメールに、フランソワは魔法のステッキを一振り、魔法をかけてやった。
「キュアップ・ラパパ!」
「――?どこも変わってないじゃないの」
「頭の上に付いてた鳩の糞を取り除いてあげたのよ」
「んまぁっ!何でもっと早く言わないのよッ!?」
「あら、よく見たら、左右の眉毛も繋がってるじゃないの」
「モメモメ~!!」


 完