Girl Meets Girl/makiray





「まったく、ほのかの頭の固いのには参るなぁ…」
「まったく、つぼみの真面目なのには参るなぁ…」
「宿題、どうしよう」
「どうしよう、宿題」
 公園通りの路上で二人の少女が出会った。
 美墨なぎさ。
 来海えりか。
「今、宿題って言った?」
「言った…」
「…」
「!」
 短い会話から、ふたりはお互いの境遇を理解した。いや、一瞬にして通じ合った。
 長期休みの宿題が溜まっている。今からやっても、到底、間に合わない。
 パートナーに手伝ってもらおう――正確に言えば、写させてもらおう――と思ったが、どちらも根が真面目であるため言下に拒否された。取りつく島がなかった。…宿題、どうしよう。
 ふたりは、差し伸べた手を何も言わずにつないだ。
 そして、横の公園に飛び込む。
「何が残ってる?」
「全部」
「わたしも」
「ほのかが見せてくれなくってさぁ」
「つぼみも冷たいんだよ」
「融通の利かないパートナーを持つと苦労するよねぇ」
「うんうん」
 頷きあう。
「そこで。
 全部を一人の人に見せてもらおうとするから断られる。ここは分散しようと思う」
「おぉ」
「国語はやっぱり、みゆきちゃんかな」
「いや、あのコは、本は読むけどテストはさっぱりらしい。むしろ、書道をやってるれいかちゃんの方が」
「英語は、ひめだね」
「決まり」
「社会…」
「ここは奏ってことで」
「あのコも真面目だよ」
「いや、結構、世話好きと見た」
「おぉ…。
 数学は」
 これは難しい。
「あたしがほのかちゃんに頼んでみるよ。グループが違ったら断りづらいだろうし」
「悪知恵が働きますなぁ、来海殿」
「いやいや、美墨殿ほどでは」
「じゃ、あたしがつぼみに理科を、ってことで」
「はいはい」
「さらに提案。
 もう少し人数を増やそう」
「なんで?」
「ふたりだとばれたときに怖い。
 人数が多いと、怒りも分散されるでしょ」
「ほんっとに悪いよね、なぎさってば」
「いやぁ、それほどでも」
「じゃぁ…。
 響とめぐみって線で」
「乗って来るかな」
「この二人に限って宿題きちんとやってるってことはあり得ない」
「あとは、上手く言いくるめれば」
「我々の口車で」
「言葉の魔法って言ってよ」
「そうそう、魔法をかけて、弱き者が手をつなぐわけですよ」
 ふっふっふ。
「楽しそうね」
「うん、結構、楽しい」
「すごい計画力です」
「でしょ。あたしってば、これで中々頭の回転早くって」
「仲間に入れてもらえるかしら」
「そうだね、響とめぐみに話をしてから――」
 顔を上げた二人の上から影がのしかかってくる。
「ほ…のか」
「つぼ…み」
 その影は、雪城ほのかと、花咲つぼみだった。
「宿題は自分でやらないと身につかないのよ、なぎさ」
「計画的にやれば楽です、って言いましたよね、えりか」
「ラクロス部の練習が…」
「ファッション部の用事が…」
「言い訳は聞きませんっ!」
「それに、響さんやめぐみさんまで巻き込もうとはどういう了見ですかっ!」
「ふたりがかけようとしてるのは、『魔法』じゃない。『迷惑』よ!」
「もう、堪忍袋の緒が切れました!」
「だって、もう時間がないんだもん!」
「間に合わないよ!」
 反省の色は見られない。切羽詰まっている、ということだけはわかる。ほのかはしばらく無言だった。
「わかったわ。
 みんなが承諾したらいい、ということにしましょう」
「ほのかさん」
 突然の変化に、つぼみも戸惑っている。
「いいんですか?」
「それぞれみんな忙しいでしょうし、それでもいい、って言うんだったら、外から止めることでもないと思う。
 ただし、響さんやめぐみさんを引きずり込むのは許しません」
「ほのか…ありがとう」
「ありがとう。次のお休みには、絶対、ちゃんとやります」
「本当ですか?」
「やるっしゅ!」
「つぼみさん、行きましょう」
 ほのかは、つぼみを連れて踵を返した。
 なぎさと えりかも、急いで走り去った。とにかく時間がない。
「でも、本当にいいんですか?」
「大丈夫よ」
「でも…」
 ほのかが立ち止まる。
「宿題のワークブックは学校ごとに違うんだから。
 れいかさんに頼もうが、ひめさんに頼もうが、書き写すことはできないわ」
「そうでした!」
「教えてもらうことはできるかもしれないけど、さすがに丸々一冊分を教えてあげられる暇がある人はいないだろうし」
 つぼみが深く頷く。
「きっと、ほかに教えてくれる人はいないかって、あちこちを回ることになる。
 そうするうちに、ゆりさんの耳に入ったりすることもあるかもしれないわね」
「え…」
 つぼみには、ほのかが薄く笑ったように見えた。
「くるみさん、みなみさん、あ、意外にこまちさん…怒ると怖い人って、プリキュアにはいっぱいいるのよね。
 奏さんもそうだし、なおさんも曲がったことが嫌いよね」
 ふふふ、という声も聞こえた。
 つぼみは、真面目に宿題をやっておいてよかった、と心の底から思った。