「苦味緩和の魔法!?」/ゾンリー




「エレン?」
「アコ!偶然ね」
街の図書館でアコとエレンは遭遇した。
「何探してるの?」
「学校の課題で必要な資料をね。アコは?」
「その…チョコに関する本。奏から借りたノートだけじゃ分からない所があって。」
「もうすぐバレンタインだもんね、やっぱりあの子にあげるのかしら?」
「だっ誰でもいいでしょ!…エレンのいじわる」
アコはマフラーに顔を埋めて頬を膨らませる。
「ごめんごめん。飲み物買ってあげるから、ね?」
2人カウンターで貸出手続きを済ませると、ロビーの自販機に向かった。
エレンは白猫の財布から小銭を取り出し自販機に入れる。
「何がいい?」
「エレンからどーぞ」
「あらそう?じゃあ…」
ガタッという音と同時に黒い缶が取り出し口に落ちてくる。
「何?それ」
「ブラックコーヒーよ。まっいわゆる大人の飲み物ってやつね。」
(大人の…飲み物!)
「私もそれ!」
ジャンプして同じボタンを押す。
「あっ凄く苦いわよそれ!」
「えっ…だ、大丈夫!」
アコはエレンの忠告を聞いて少しだけ恐る恐る臭いを嗅ぎ、思い切って1口飲む。
「~~~~っ!?」
残されたほんの一摘みのプライドで、なんとか飲み込む。
「ほらぁ言わんこっちゃない」
エレンは缶を開けて一気に呷る。
「うぅ~!」
目尻に少しだけ涙が貯まる。
「ふふっ、家に持って帰りましょ。そしたら私が美味しくなる『魔法』を掛けてあげる♪」
「魔法?」
  ・
「じゃあいくわよ…キュアップ・ラパパ!ブラックコーヒーよ、甘くなりなさい!」
エレンは素早くマグカップを取り出し、アコが1口だけ飲んだコーヒーを入れる。
帰る途中で冷えきっていたのでレンジで温める。
その後砂糖を大さじ1杯半入れて、コーヒーと同じ量の牛乳を入れる。
「はい完成っ」
「単なるクッキングじゃん!」
「てへ。まあ飲んでみなよ」
アコはこれまた恐る恐る口に運ぶ。
すると今までの苦味はどこへやら。
コーヒーの芳醇な香りとしっかりとした甘味がアコの舌を駆け巡る。
「すごい…魔法みたい……!」
「でしょ?まあ響からの受け売りなんだけどね。私も最初魔法かと思ったのよ。」
エレンは冷えたコーヒーを飲み干し、缶のゴミ箱に入れる。
アコも一気に飲み干してマグカップを台所に置く。
「でも夕方以降に飲むと夜に眠れなくなるから注意してね。」
「はーい」


(私も皆への態度、苦かったんだろうな。でも奏太が、響達が、砂糖と牛乳の様に私を混ぜて繋げてくれた。それはまさしく、『魔法』…なんだ。)
醒めた意識の中で、アコはそんな事を思ったのだった。
最終更新:2017年02月19日 11:31