「ETERNAL HAPPINESS」/コロ助MH




「それでは行ってきます おばさま」と私は家の裏手に向かう。
「リコちゃん気をつけてね って気をつけるも何もないんだったわね」と微笑み合いながら別れた。


みらいとはーちゃんと奇跡の再会を果たしてから数ヶ月後、私達はまた同じ屋根の下で暮らせるようになった。と言うのも…
「おはようございます リコさん」
そこにはヤモーとドクロムシーが立っていた。
「おはようございます ドクロクシー様、ヤモーさん ではお願いします」
「はい、かしこまりました それではお願いしますドクロクシー様」
と言うと何もない所に丸い穴の空間が出現し3人で飛び込むと次の瞬間、魔法学校の校門の前に到着していた。そして
「では夕方にまたお迎えに上がります」
とまた別の空間を作り出しあっと言う間に去っていってしまった。

ドクロムシーの虫歯を治し別れて少ししてから、ヤモーとふたりで魔法学校にこれからの身の振り方について相談しに来た。私は彼の能力を最大限に生かせる職業に就くべきだと、総合的に考えて人間界で言う「タクシー」が最適ではないかと提案した。すると
「そんな下々の仕事などをドクロクシー様にさせる事は出来ません!!」
と猛反発してきたので
「でもこの仕事はきっと上手くいくと思うし そうすればドクロクシー様に今よりも安定してお菓子を提供出来るし、そして何より魔法界の住人からやがてはナシマホウ界の住人からも敬われる様にきっとなります」
と諭した。疑心暗鬼のヤモーだったが確かに一理あるかもしれないと考えている様子で
「あまり気が進みませんがとりあえずあなたの提案を受け入れてみましょう でも上手く行かなかった場合は… オボエテーロ!」
と姿を消した。

その後「タクシー」を始めたふたりだがこれが予想以上に大好評で、と言うか今では魔法界では知らない人はいない程の人気者になり、皆からは感謝と親しみを込めて「ドクロクシー様」と呼ばれる様になるまでになった。一方、ヤモーも利用者が増え続け過密スケジュールになりつつあるも、そこは有能な執事の腕の見せ所と主人の為に身を粉にして働く姿に皆が好感を持つ様になり、誰に対しても少しキツイ口調も全ては職務に忠実の為だと言う事が周囲に浸透し、彼もまたいつの間にか尊敬の念を込めて「ヤモーさん」と呼ばれる様になった。利用客は主にナシマホウカイと魔法界を行き来する者が多かったがそれ以外にも広大な土地を持つ魔法界を移動する手段としても重宝されるようになった。

ただの職務と割り切って忙しい日々を自身の仕事とこなし続けたヤモーも、何度か容易に再会出来ない距離にいる人々の感動の再会に立ち会う事が重なりその都度、利用者に涙ながらの感謝の言葉を聞くうちに、最初は何とも思わなかったけれどひょっとして自分は天職を得たのではないかなと 事実、ドクロクシー様は皆に敬愛され自分にまでも声をかけてくれる様になったと「全てはリコさんの仰る通りだった」と感激し、それで彼らから私に、お礼にせめて通勤の送迎には是非、私達を使って下さいとの申し出があった。その瞬間、それならまた夢にまで見た朝日奈家でみらい達と一緒に暮らす事が出来ると、送迎をお願いした。
こうして朝日奈家にお世話になる事を勝手に決めてしまったんだけれど、事情を話すとみらいを筆頭におばさま達には大歓迎してもらえて今日に至る。

そして私達の愛娘と言うべきはーちゃん、私がまたみらいと暮らせる様になったと伝えると
「私も一緒に暮らしたい!」
と、一体どんな原理か魔法使いの私でもさっぱり分からないんだけど宇宙の果てからでも
「ビューっと飛んで行って、サーっと帰れるから大丈夫だよ!」
と言う事で朝は宇宙の果てまで行って夕方には帰って来ると言う事…で、はーちゃんもまた一緒に暮らせる様になった。ただ当時と変わらない姿だと色々と問題があるので朝日奈家の外に居る時は魔法を使って私達と同じ年頃の姿でいる。

放課後、事務仕事も終わり校門で待っていると予定通りの時間に丸い空間が出現しヤモーとドクロムシーが現れた。
「お待たせしました どうぞ」
「ありがとう」
と言い終わる前に朝日奈家の裏庭に到着した。するとみらいを先頭に家族総出で待っていてくれた。
「リコ(ちゃん)お帰り~ 」x5の声には何だかどうにもこうにも笑みがこぼれて仕方ない。
「そうだドクロクシー様、ヤモーさん、夕食はいかがですか? これから庭でバーベキューをやるんですよ 良かったら是非!」
とおじさまが気さくに声をかけているのを見ると最初、二人を紹介した時のおばさまとの反応を思い出す あの時のおじさまとおばさまの表情ったらと でもおばあさまは特に驚いた様子もなくいつもと変わらない反応だったけなあと、ふと彼女の方を見ると目が合って微笑んでくれて
「そうですよ お二人とも是非、食べていって下さいな」
「いかが致しますか? ドクロクシー様」
の問いに頬を染め満面の笑みで返す彼の姿に。
「御相伴に与ります いつもありがとうございます」
と深々と頭を下げているヤモーの姿にはあらためて彼は変わったんだなあと感慨深く感じた。

次々と焼き上がるバーベキューに皆が舌鼓を打ち、おじさまとヤモーは酒を酌み交わし最新家電と魔法についての談議に花を咲かせている。ドクロムシーは食後のデザートのプリンをおばさまとおばあさまに用意してもらってはーちゃんとモフルンと一緒になって食べていた。そんな光景を見て本当に皆一緒って良いなあと そして異世界の住人が仲良くしている様子を見ながら、近い将来にはこんな光景は珍しくなくなるんだろうなとしみじみと思っていると、いつの間にかみらいが隣に来てそっと私の手を握ってきた。
「本当に幸せだよね、私達 こんな楽しい日々がまた来るなんて夢みたいだよ」
の言葉とその手の温もりに幸せを感じつつ。
「そうね、でもこれからもずっと私達は一緒よ、だって家族なんだしね そしてここから世界中の皆と仲良くしたいと言う私達の夢が始まるんだわ」
すると、意を決した様にみらいが。
「ねえリコ、大学を卒業したら私また魔法学校に通いたいと思っているんだけどダメかな? そして卒業したら私もリコのお手伝いをして一緒に魔法でこのふたつの世界をつなげたいと思っているんだけど」
突然の申し出に、その言葉を聞きつけたはーちゃんとモフルンが飛びついて来た。
「みらいが魔法学校に行くんだったらはーちゃんも行きたい~」
「モフルンも行きたいモフ~」
「リコさん、その時はこのヤモーとドクロクシー様がお役に立ちますので遠慮なく是非、お知らせ下さい!」
とその様子を見ていた顔を真っ赤にしたヤモーとデザートで満腹になったドクロムシーが満面の笑顔で申し出てくれた。
その姿に思わず苦笑しつつ
「ええ、その時は是非、お願いしますね」
と思わぬ展開に一瞬、戸惑いつつも
「だったらこれからは私の事は『リコ先生』と呼んでもらわないとね」
と右手の人差し指を立てて芝居がかった風に胸を張って皆に宣言すると
「リコ先生~」x2
「リコ先生モフ~」
と返ってきた。そして皆と目が合うと笑いの渦が巻き起こった。本当に楽しくて嬉しい! 何かみらい達と会えなかった分だけ、ここに来て尋常ではないほど夢の様な事ばかり起きる様な気がする。そしてそれはこれからもずっと続いて行くんだと思うとあらためてこの出会いに感謝するばかりだ。みらいと皆との出会いに そしていつも願っている
「キュアップ・ラパパ! 明日も良い日になれ」
と きっともう願わなくても私達はずっと一緒で幸せでいられる自信はあるのだけれども でもやっぱり願わずには、感謝せずにはいられない。
「ありがとう」
と。



競4-12競4-21はこの続きのお話です。
最終更新:2017年02月18日 03:02