Echo, Back and Forth 6.Party, Party!




 究極の魔法、それは歌だった。
 魔法つかいがソルシエールに歌って聞かせた、子守歌のような歌。それそのものが魔法だった。
 トラウーマは、自分の過ちに気づいたソルシエールの歌に苦しめられ、同時にその歌はプリキュアに力を与えた。
 光を取り戻したプリキュアと、光を取り戻そうと決心したソルシエールによって、トラウーマは消滅した。

 改めて、お花見が催される。彼女たちは満開の桜の下にお弁当を広げた。
「あの、坂上さん…」
「え?」
 あゆみが振り向くと、リコがペコリと頭を下げた。
「ありがとうございます。
 あと、ごめんなさい。私」
「あ、坂上さん」
 みらいが隣に並び、同じように頭を下げた。
「坂上さんがリコを助けてくれたんですよね。
 おかげで私たち、また会うことができました!」
 こちらは屈託のない笑顔だが、リコはすっかり恐縮している。
「私は、何も」
 少し頬を染めながら、あゆみは手を振った。
 掛け値なしに何もしていない。
 確かに、あの歌と、キュアマジカルの雰囲気に共通点がある、と言ったのはキュアエコーだ。つまり、その共通点が魔法ということなのだが、それは例えば、一緒に戦ったときに、ソルシエールの歌と最もシンクロしていたのはキュアミラクルやキュアマジカルの技だった、と皆が言っている。別に、キュアエコーでなければ気づかなかった、というわけではない。
 牢に捕えられた時も心が折れてしまい、投げだしそうになった。グレル、エンエン、フーちゃんがいなかったらどうなっていたかわからない。
 本当に、キュアエコーはまだまだだ。修行が足りない。
 隣に みゆきとあかねがやってきて、キュアエコーがどれだけすごいプリキュアか、とあることないことを言い、みらいとリコが感心してメモをとっている。あゆみの頬はますます赤くなった。
 一つ、わかったことがある。
 キュアエコーは、「思いを届ける」プリキュアだ。誰かの思いを読み取る力はない、ということだ。
 今まで、そう感じたことが何度もあったが、それは偶然だった。同じ「光の使者」同士だったり、ものすごく強い思いだったり、という特別なことがなければ感じ取ることができない。
 ソルシエールは、師匠の魔法つかいに会いたい、ということしか考えておらず、そこをトラウーマに利用されただけなのだ。「プリキュアを倒す」「世界を闇に閉ざす」などという強い意志があったわけではないから、その思いが届かないのは当然だった。むしろ、そういう立場がストレスになったことで、子供の頃の思い出が漏れ出し、それがあのかすかな歌声となった。こちらの方がまだ強い、と言えた。
 もう一つ、過ちを犯したことがある、という心の奥の傷。これがあるからこそ、できることがある。
 キュアエコーがどのようにして人々の役に立つことができるのか、それがわかったことは大きい。この力を磨いていけば、きっと「立派なプリキュア」になれる。
「一緒に、『立派なプリキュア』になりましょう」
「いえ、坂上さんはもう『立派なプリキュア』です!」
「私たちのお手本になる人なんです!」
 だから、やめてってば、と言って下がろうとすると、マナが逆に背中を押し、めぐみがはやし立てる。
「先輩として一言アドバイスしてあげたら?」
「ゆりさんまで…」
 それにしてもこの二人は、この懇願を四十何回も繰り返す気なのだろうか。美墨さん、雪城さん、日向さん、美翔さん…そうだ。
「じゃ、一つ、いいかな」
「はいっ!」
「あゆみ、って呼んで」
「はいっ――はい?」
 困惑するみらいとリコ。だが、ほかのメンバーからは一斉に笑顔がこぼれる。グレルは、そういうことだよ、とみらいに耳打ちをした。
「そういうこと、って」
「はい、握手」
 エンエンがリコの手を引いた。
「私のお友達になってくれる?」
「よ、よろしくお願いします!」
 あたしとも、私とも、とそれぞれが みらいとリコの手を取る。モフルンももみくちゃにされていた。
 その光景を見ながら、案外これが「立派なプリキュア」になる近道なのかも、とあゆみは思っていた。
最終更新:2017年02月14日 21:30