一六◆6/pMjwqUTkgの140文字SS【9】


1.「ついて来るもの」②/一六◆6/pMjwqUTk


薄緑色の箒が夜空を切り裂く。でも黄金色の輝きは、彼女の隣から離れない。
「お月様、ずっとついて来るね~」
「速すぎモフ~」

モフルンの声に、ことはがスピードを落とした。
もう一度月の方に目をやって、思わず息を飲む。

闇に沈む田畑の向こうに、広がる豊かな水面。そして……。
「お月様が二つ!?」


2.「ついて来るもの」③/一六◆6/pMjwqUTk


丘の上の小さな展望台に降り立ち、二人並んで海を眺める。
「そっか。お月様が海に映ってるんだ」
「きれいモフ」
辺りの静けさに、二人の声も小さい。

「わたし、お月様がわたしについて来てるんだって思ってたの。でも、違ったね」
「モフ?」
「お月様の方が、わたしたちをここに連れて来てくれたんだね」


3.「ついて来るもの」④/一六◆6/pMjwqUTk


ことはの言葉に、モフルンがニッと笑う。
「大丈夫モフ。はーちゃんについて来る人は、ちゃあんといるモフ」

「あ、ここに居たんだ!はーちゃーん!」
「ちょっと、みらい。真夜中なんだから、静かに」
「みらい!リコ!」

ことはがパッと笑顔になる。空から近付く二人もまた、満月にも負けない、輝く笑顔。


4.キラプリで『お父さんは心配性(第13話より)』/一六◆6/pMjwqUTk


「あ~!白い服のイチゴンだ」
「逃げた!」
子供たちといちかの目の前を、走り去る道着姿のイチゴ頭。
「イ、イチゴンがみんなと仲良くしてるか心配で、お父さんが様子を見に来たんです。
だから安心させてあげましょう。せーの」
「イチゴン大好き~!」
物陰から、うぉ~!という歓喜の雄叫びが聞こえた。


5.「黒川の手帳」/一六◆6/pMjwqUTk


「音吉さんの本で読んだの!こんな手帳が凄い値段で売れたって話」
「じゃあその手帳も売れるニャ?」
「エレン!売れたのは手帳じゃなくて中身だから」
慌てる奏にエレンが手帳を抱き締める。
「これは売らないわ。友達や学校の大事なメモで一杯だもの」
「ま、買う人も居ないけどね」
響が苦笑いで呟いた。


6.『キラ星家の朝』/一六◆6/pMjwqUTk


「ピカリオ~!忘れ物ない?ハンカチ持った?教科書は?」
「いい加減にしろよ。いいか?学校では俺に近づくなよ!」
そそくさと出て行くリオを、慌てて追いかけるシエル。
「待ってよ~」
「ついて来るな!」
「馬っ鹿みたい。同じ学校なんだから、通学路一緒じゃない」
見送るビブリーが楽しそうに笑った。


7.えみる&ルールー「手と手つないで」①/一六◆6/pMjwqUTk


延期になったライブが行われる日。二人で乗った電車は、この前より混んでいた。
「あわわわ」
「えみる!」
電車が揺れた弾みで転びそうになったえみるの手を、ルールーが素早く掴む。
「ありがとう……」
ホッとして見上げるルールーの美しい立ち姿に、えみるが思わずため息をつく。すると、その時。


8.えみる&ルールー「手と手つないで」②/一六◆6/pMjwqUTk


「大丈夫です」
隣から、柔らかな声がした。
「あと二年もすれば、えみるもコレに手が届くようになります。人は成長しますから」
右手で吊革を、左手でえみるの手をしっかりと掴んで、ルールーが微笑む。
「ルールー……」
何だかその笑顔が少し寂しそうに見えて、えみるはブン、と頭を振った。


9.えみる&ルールー「手と手つないで」③/一六◆6/pMjwqUTk


「二年なんて、かからないのです! でも……」
そう言って、えみるはルールーと繋いだ手にギュッと力を込める。
「ルールー。わたしが吊革に手が届くようになっても、こうやって手を繋いでくれますか?」
一瞬大きく目を見開いたルールーは、今度はとても嬉しそうな笑顔で頷いた。
「はい。勿論です」


10.はな&ルールー「眠れぬ夜」①/一六◆6/pMjwqUTk


ベッドに横たわり、両の目を閉じる。そのままの姿勢を数十秒間維持すれば、スリープモードに移行する。
毎日当たり前に実行して来た、最もベーシックなプログラム。しかし――。
「……眠れません」
暗闇の中でパチリと目を開け、ルールーは小さな声で呟いた。
最終更新:2018年07月07日 19:11