『Dreams come true』 ***転***/競作スレ3-228様




(有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない有り得―――)

 呪文を詠唱するかのように必死でその言葉を繰り返しつつ、響は頭から布団を被り込んだ。
 最初にあの夢を見てから、早くも一週間が経っている。なんとその間一度も欠かさず、彼女は奏との淫らな夢に苦しめられてきたのだ。
 苦しめられている、とはいうものの、夢を見ている最中の響はエスカレートする奏との淫らな行為に耽っているのだが、その反動からか、目が覚めてからの疲労と、彼女の心を責め苛む罪悪感も日に日に増すばかりである。
 特に響を悩ませているのは、先生の言った『己の願望が夢を見せている』という言葉であった。

(わたしはぜーったい奏と、あ、あんな風になりたいなんて思ってないし!だ、大体おんなじ女の子同士で、す、好きになるなんて事は―――そりゃあ、奏は可愛いし優しいし、美味しいお菓子作るし、ある意味理想のタイプだったりするけど―――って違う違う!!)

 布団にくるまり、ブンブンと首を振る響。
 最近はセイレーン達もなりを潜めているから良いようなものの、こんな状況ではいざという時にプリキュアとしての戦う事も出来ない……それどころか、学校で奏に会う度にやたらと胸が高鳴り、赤面してしどろもどろになってしまっていて、既に日常生活には大きく支障をきたしている。
 朝や放課後は「パルクール部の助っ人が〜」や「セパタクロー部の練習試合が〜」等と言って逃げ惑っているが、そろそろ架空の運動部をでっち上げるのも限界に近くなってきていた。昼に呼び出す和音にも疲弊の色が濃くなってきていて……まあ和音に関しては毎度無理に呼び出す必要はないのだが。
 とうの奏はといえば、当初こそ何やら疑わしげな目で響を見ていたものの、最近では慣れっこになってしまったのか、顔を合わせてもツンとして素通りする始末。

(……このままじゃ、また……)

 互いの誤解から喧嘩をして、疎遠になってしまっていた過去が響の脳裏に蘇る。
 ―――途端に彼女の胸がズキン!と痛んだ。
 かといって、今自分が置かれている状況を奏に説明する事など到底出来はしない。そんな事をすれば、潔癖そうな奏の事だ。疎遠になるどころではない、きっと最悪の結末が待っているだろう。
 この状況を打開する手段はただ一つしかない。響は仰向けになると胸の前で手を組み、すがるような気持ちで天に祈った。

(神様お願いです!どうかもうあんな夢を見ませんように!!わたし―――)

 響の閉じられた瞼から頬へ一筋の涙が伝う。

(わたし―――わたし、奏に嫌われたくないんです!!)

 その願いを聞き届けたかのように、響の耳に甘く優しい声が届いた。

「―――ふふっ、嫌いになんてならないわよ」

 驚いて見開かれた響の目に、清純な顔に淫猥な笑みを浮かべ、彼女の顔を覗き込む奏の顔が逆さまに映った。
 どうやら響の願い虚しく、いつの間にか淫らな夢の世界に堕ちてしまっていたらしい。ベッドの周りは怪しげなピンクの霧に包まれたどことも知れぬ世界へと変貌している。
 夢に出るようになってから、奏は時には全裸で、時には魅惑的なランジェリーで響を悩ませてきたが、今日の格好はといえば、年端も行かぬ少女には似合わぬ、胸元にピンクのリボンをあしらった純白のベビードール姿であった。それだけならまだキュートな寝巻き姿に思えなくもないが、薄いその生地の胸元からは愛らしい乳首が透けて見え、穿いているショーツも股間にくい込み、左右を紐で止める際どいタイプで、たまらなくエロティックものだ。
 一方の響も、さっきまで着ていたパジャマとは違い、奏とお揃いのコスチュームに変わっている。ただし、彼女の身にしたものは奏のものと対になるかのように、黒を基調にしたものだったが。
 奏は響とは逆向けに四つん這いになり、顔の両側に手をついていた。

「さあ響、今日もたっぷりと楽しみましょう……?」

 奏は薄い桜色の唇を開き、肉厚で長い舌を響に向かって伸ばしてくる。唾液をまとってクネクネと卑猥に蠢くそれは、まるで別の生き物の様であった。
 響は何とか身をよじって奏から逃れようとするものの、いつもの通り体が言うことを聞いてくれない。それどころか、待ちわびたと言わんばかりに、その両手は奏の両頬に軽く添えられた。

「ふふ、可愛がって欲しくてたまらなかったみたいね……」

 奏がなぞるように響の唇を舌で丹念に舐めていく。
 響は必死にその口を固くつぐもうとしていたものの、意に反し、彼女の唇は薄らとその隙間から白い歯を覗かせた。
 その隙を見逃さぬように、奏の舌が響の口へと侵入してくる。

(い、嫌……!!こ、こんなのやっぱりおかしいよ……!!)

 無遠慮に響の口内を這い擦り回る奏の舌―――それはディープキスというより、犯すと言った方が相応しい、一方的な蹂躙だった。
 口腔に感じる卑猥な舌のダンスに、響はどうすることも出来ずされるがままだ。
 ―――いや、彼女の意識はどうする事も出来ず、と言った方が正しいか。何故なら響の肉体は最早彼女の管理下にはないのだから。
 奏の舌の動きに、響の舌が反応を見せた。
 執拗に口内をねぶる奏の舌の動きを歓迎するかのように、響の唾液で濡れた舌が絡みついていく。ぬめり合う二つの舌の動きは、歓喜した軟体生物の交尾を思わせる濃厚なものだ。
 ぬる、ぬちゅっ、といういやらしい粘液音が響の頭に直接響く―――その音は響にとって、彼女の理性をドロドロにする溶解音にも感じられた。

(や、やめて!こ、これじゃ奏に、わたしがいやらしい子だって思われちゃう!)

 例え夢の中とはいえ、それは響にとって屈辱以外の何ものでもなかった。
 相手が昔からの親友の奏ではなく、見ず知らずの他人だった方が彼女にとってはまだマシだっただろう。
 どれほどの時間が経っただろうか、響の口から奏の舌がゆっくりと引き抜かれる。名残惜しそうに突き出された響の舌との間に銀に光る唾液の糸を一筋引かせながら。
 漸く解放された響は安堵混じりに荒い息を吐いた。

「あ…ふう……はあはあ……」
「うふっ、響ってば涙目になっちゃって……可愛い」

 響の顔の前に、薄布に覆われた奏の胸が揺れた。両手足をついた体勢のまま、彼女は響の胸の部分まで這い進んだのだ。
 布越しに透けて見える奏の乳首は、響を誘うようにはツンと隆起している。響のそれもまた、期待するように痛いくらいに尖っていた。

「―――さあ、いつもみたいに舐め合いっこ、しよ?」

 伏せるようにして乳房を響の顔に押し付け、奏はやわやわと彼女の胸を揉みながら、右乳首をパクッと口に含むと、そのままキャンディのようにねぶり回す。
 反射的に響の背が胸に感じる愉悦に弓なりに仰け反った。そのせいで響の顔が深く奏の胸の谷間に埋められる。

(く、苦し……!!)

 谷間に漂う少女特有の甘い芳香の中、何とか呼吸を確保しようと、響の手が奏の胸を押し返す―――はずが、実際にはその胸を荒々しく掴み、ほぐすように揉みしだきだした。

「あん、響ったら乱暴なんだから……もっと優しくしなきゃダメよ?」

 行儀の悪い子をたしなめる風にそう言うと、奏はお仕置きのように響の左乳首を甘噛みする。

「!!ひゃうっ!!」
「ふふ、ホラ、響も私のおっぱい、沢山可愛がって……」

 その台詞に促されたか、響の手が勝手に奏の両胸を顔の前に寄せると、濡れた舌が左右の乳首を舐め始めた。首を振り、両乳首を舌で擦る。
 奏も「きゃぅっ!」と嬌声を上げ、お返しとばかりに咥えていない響の乳首を指で挟み、転がすように責め始める。
 ただひたすら欲望の赴くままに目の前の乳首を吸い上げ、嬲り、味わい尽くす少女達。

「か、奏ぇ……ちゅ……ちゅば……れろ……」
「んくっ!!ふあ……ちゅ……響ぃ……」

 身を震わせ、悶えながらも互いの名前を呼び合う二人。
 しかし、響にかろうじて残っている理性の欠片だけは、必死に脳内で警鐘を鳴らしていた。

(ダメ!!し、しっかりしなきゃ!!このままじゃ現実世界の奏に……嫌われちゃうんだよ!!)

 響の大きな目が一際大きく見開かれた。瞬間、呪縛が解けたかのように彼女の身体に自由が戻る。
 この機を逃すまいと、響は奏を脇に払いのけるようにして上半身を無理矢理起こした。

「きゃっ!?ひ、響!?」
「や、やっぱりダメだよ、こんなの……」

 己が両肩を指が食い込むほどに抱きしめる響。その瞳からは大粒の涙が零れ、声は嗚咽に震えている。

「こんなのわたしの願望なんかじゃない!!だって―――だってわたし、奏といつまでも友達でいたいから……今も昔も、ずっと―――!!」

 それは心の底から絞り出した、彼女の思いが込められた悲痛な叫びだった。

「うふふふふ……何言ってるの?………」

 響の言葉など届かぬように、脇に横たわった奏は嘲笑めいた笑みを浮かべると、ゆらりと立ち上がる。
 いや、それは果たして奏なのだろうか―――潤んだ瞳、陶酔しきった表情で響を見下ろすその顔は、伝説の夢魔、サッキュバスを彷彿とさせる淫靡なものだ。

「おかしな響……友達……そう、『昔からの友達』だからこんな事するんじゃない……当たり前のことでしょ?」
「あ、当たり前って……!」
「『お互いをい〜っぱい気持ち良くしてあげるのが友達』なのよ。ふふ」

 少女の瞳から放たれる、凶悪ささえ感じる淫猥な輝きが、再び響の体の自由を奪った。
 金縛りにあったように動けない響へと一歩踏み出すと、奏は唇を大きく開き、だらりと舌を覗かせる。赤黒く濡れ光りながら垂れ下がったその長大なものは、最早少女のものとも、否、人間のものとも思えない。

「ひ!こ、来ないで!!」
「どうしてそんなこと言うの?私達は友達……だからこの舌で響をもっともっと気持ち良くしてあげる……だから響も私をいっぱい気持ち良くして……あなたの舌で……」

 奏は響の足元に跪いた途端、それを待っていたかのように閉じられていた響の両腿が左右に開いていく。

「ホラ、やっぱり響だって待っていたんじゃないの……」
「ち、違う……こ、これは身体が勝手に……!!」
「いいえ、身体が勝手に動くのはね、響が私とこうなりたいからなのよ……夢の中だけじゃなく、現実でも……」
「!!い、イヤ!!そんな事したら……本物の奏に―――」
「バカね、響―――」

 嫌がる響の膝に手を掛け、奏はゆっくりとショーツに包まれた秘所に顔を近づけ、舌を伸ばしていく。

「言ったでしょ?嫌いになんてならないって―――現実世界の私だってきっと―――」

 奏の指がショーツの股布を横へとずらした。
 既にぐっしょりと濡れそぼった響の恥部が露わになる。湯気を立てるほどに熱くなった秘裂は、奏の舌を待ちわび熱くぬかるんでいる。包皮から顔を覗かせた陰核も固く膨らみ、もしそこに奏の舌が軽く触れただけでも、響は絶叫し、絶頂を迎えてしまうに違いない。
 これ以上快楽を与えられたら―――今度こそ響は淫夢に溺れ、現実などどうでも良くなってしまうだろう。
 それどころか、現実との境界すらもいずれ曖昧になっていき、そのうちに夢の奏の言う通りに、本物の奏にすらも夢と同じ淫らな戯れを求め始めていくに違いない。
 その想像にゾッとして、響は縋るような思いで制止の言葉を口にする。

「ダメエエェェェェ―――!!!!!」

 万事窮す、響の懇願も聞き入れず、奏の舌がそこに触れようとした刹那―――。

「―――ん?奏……それ……?」

 響の視界に、奏の頭でヒョコヒョコと揺れるものが映った。
 その事に気がつき、奏が慌てて自分の頭を押さえる。

「!!こ、これは、き、気にしなくていいニャ!!」
「んな事言われたって……嫌でも気になるでしょ……猫の耳?……それに、『ニャ』って……?」
「な、何でもないって言ってるニャ!!」

 さっきまでの余裕ぶった態度もどこへやら。奏は焦った様子で頭を隠すようにして響に白い背を向けた。
 その白い背中から下、丸みを帯びた綺麗なお尻の中心には、これまた見慣れないものがユラユラ揺れている。それは明らかに動物の―――猫の尻尾だった。

「………あなた誰?」
「なに言ってるニャ!?わ、私は響の昔からの友達、奏だニャ!!」
「少なくともわたしの知ってる奏には、そんなもの生えてないけど……?」

 奏……だった者は、うずくまり、冷や汗を流しつつ、ジト目で自分を睨んでいる響から必死に目を逸している。

「答えてよ!あなたは一体誰なの―――!!!」

 響の追求に、流石にとぼけきれないと悟ったか、奏だったそれはいきなり―――。

「ニャニャニャニャニャ―――!!!!」

 ―――と叫んで、夢の世界から煙のように姿を消した。


 奏の消失と同時に、響は自室のベッドの上で目を覚ました。
 カーテンの隙間から覗く外の光はまだ薄暗く、夜明け近いことを教えてくれる。響は半身を起こすと、頭を掻きつつ、一つ小さな欠伸をした。

「……なんだったんだろう、今の……」

 これまでの夢と違う展開に、眠い目を擦りつつも頭を捻る響。
 ―――するとその時、彼女はその声に気がついた。

「……ムニャニャニャ……セイレーン、気持ちいいかニャ?……」
「ハミィ、また寝言言って……」

 声の主は、部屋の一角のバスケットに眠っているハミィだった。どうやら今は敵対している彼女の親友、セイレーンと過ごした日々の夢を見ているらしい。
 その光景に、呑気なものだと微笑んで、響は、少し早いけど散歩でも、とベッドから立ち上がる。

「ニャプ、遠慮なんかしなくていいニャ!セイレーンはハミィの昔からの友達ニャ!」
「………ん?」

 何となくハミィの寝言が気になって、響はドアノブを回す手を止めた。

「友達だからー、舐めて毛づくろいするのは当たり前ニャ!ほら、恥ずかしがらなくていいニャ!」
「……友達だから……舐めて……?」
「次はセイレーンがハミィのこと舐めて気持ち良くして欲しいニャ……ウニャ……気持ちいいニャ………」
「……気持ち良くして……」
「そうニャ!『お互いをい〜っぱい気持ち良くしてあげるのが友達』だニャ!………セイレーンとハミィはずーっと友達ニャ!!」
「………ああ、そういう事………つまり………」

 『TVを点けっぱなしで寝たら、その内容を夢に見た』という、古文の先生の言っていたことが響の頭に浮かぶ………だとしたら、ここ最近ずっとあんな夢を見ていた原因は、やはり己の願望などではなく―――。
 無邪気に夢の世界に遊ぶハミィを見る響の握った拳が、ワナワナと震えている。

「ハミィのせいねええぇぇぇ!!!!!」
「ウニャアアアア!!?」

 響の怒号が部屋にこだまする。そのあまりの剣幕に全身の毛を逆立てて飛び起きると、ハミィは部屋の隅っこに逃げ込んだ。

「ニャニャニャ!?ひ、響、何事ニャ!?せっかく楽しい夢を見てたのに―――」

 怯えたハミィの言葉に答えず、響は部屋を横切りカーテンを開け、窓を開く。
 朝日が昇り始めた夜明けの清浄な空気を、胸いっぱいに吸い込んで深呼吸をした後、彼女は固く心に決めた。
 ―――『これからは耳栓をしてからベッドに入ろう』と―――。



競3-46