『Dreams come true』 ***起***/競作スレ3-228様




「……ゆ、夢が叶った……!?」

 肩まである栗色の髪をツーサイドアップにまとめた、少々吊り気味の大きな瞳の活発そうな美少女――北条響は、うっとりとした表情で周囲に広がる光景に見入っていた。
 響の足元にはクッキーが歩道を作り、その周りの草原には様々なケーキやクレープ……さらに先には大きなドーナツがトンネルを作り、遠くに見える山のようなシルエットは、よく見れば巨大なパフェやアイスクリームが連なったものだ。樹木もそこかしこに生えてはいるが、ご丁寧なことに実っているのは果実ではなく、これまたシュークリームやマカロンなどのスイーツである。
 響は手近な木からドーナツをむしり取り、確認するようにパクリと一口齧った。途端に普段は凛々しいともいえる彼女の表情が、みるみるチョコレートのように蕩けていく。

「やった……!わたし、ついに……ついにスイーツの国に来たんだ!!」

 やっほーい!と大きく歓声を上げると、響はだらしなく口元を緩ませて、次なる収穫物を物色し始めた。

 鼻歌交じりであれやこれやとお菓子を採取する響の姿は、伝説の戦士プリキュアとしては随分と緊張感に欠けるものではある。
 しかし、普通の女子中学生であったにも関わらず、この春からいきなりマイナーランドのセイレーン率いるトリオ・ザ・マイナーとの過酷な戦いに身を投じる事となった彼女には、例え夢の中であっても、これくらいのひと時の休息は許されるのではないだろうか。
 ……そう、お察しの通り、現実はお菓子ほどに甘い訳もなく、これは響の『夢が叶った』訳ではなく、悲しいかな、単に『夢を見ている』だけであった。

「ふんふーん、ふががもぐもぐふがが(次は何を食べようかな)?」

 ……とはいうものの、例え夢の中とはいえ、限度があるとは思われるのだが……。
 両手に大量にお菓子を抱え込み、口内にもはち切れんばかりに頬張りながらも、響は更に周囲をキョロキョロと落ち着き無く見回していた。
 と、その目がある一点でぴたりと止まる。

「!!あれは……!!」

 響の目を奪ったのは、歩道脇の茂みから顔をのぞかせた、柔らかそうな二つのプリンの姿だった。
 白いその色合いからしてミルクを使ったプリンであろうか……フルフルと風に揺れるその頂には可愛らしくチェリーが飾られ、その周囲をピンクのクリームが縁どっている。
 そのあまりに美味しそうな様子に、響は手にしたお菓子を放り出――すのは止めて、いそいそとその場に大事そうにまとめて置くと、一目散にプリンへと駆け寄った。

(こ、これは……見てるだけでも涎が溢れてきそう……実際に食べたら一体どうなっちゃうの……!?)

 ゴクリ、と唾を飲み込むと、目を閉じ、顔の前でうやうやしく両手を合わせると、響は厳かに口を開いた。

「それでは慎んで……いっただきまーす!!」

 言うが早いか、プリンをムニュっと鷲掴みにすると、響はその先端を口に含む。
 途端に、甘い響きを帯びた誰かの声が彼女に語りかけてきた。

「く……ふぅ……響、美味しい?」
「ぴちゃ……んちゅう……うん!甘くて柔らかくって、もう最高!!」
「んあっ!……うふふ……響ったら……まるでおっきな赤ちゃんみたいよ……?」

 ん?と漸くその聞き覚えのある喘ぎ混じりの声に疑問を感じ、響はプリンから顔を上げた。

「え!?かかか、奏!?な、何してんの!?」

 響の目の前にいたのは、幼友達であり同じプリキュアの仲間でもある見知った少女だったが、それでいて響の知らないものでもあった。
 南野奏―――その顔は優しげないつもの彼女とは違い、潤んだような瞳で頬を紅潮させ、息も荒くぷっくりとした唇を半開きにして、淫靡この上ない表情だ。

「うふ……何してるのって……何かしてるのは響の方じゃない……」
「何かって……わ!!何これ!?それに奏、そ、その格好は……!!??」

 よく見れば、いつの間にか響は横たわった奏の胸に、抱きかかえられるようにして顔を埋めていた。しかも奏はといえば一糸纏わぬ生まれたままの姿である。となると、言うまでもなく響が今まで一心不乱にむしゃぶりついていた柔らかなプリンはといえば当然……。

「わわわっ!!か、奏、ご、ごめん!!」

 慌てて謝罪の言葉を口にして、彼女から身を起こそうとするものの、意に反して、響は奏の身体から離れることは出来ない。それどころか、響の思惑とは関係なしに、その手はやわやわと奏の胸を揉みしだいている。

(どどど、どうなってるのよ、コレ!?な、なんでわたしの身体は言うこと聞いてくんないの!?)

 それだけではない。シルクのような感触が肌に直に伝わって来ているのに気がつき、疑問を感じてちらっと自身の身体を見た響は、またしても驚きの声を上げそうになった。

(!!なな、なんでわたしまで裸なのよ!?)

 互いに全裸で抱き合ってるという事実は、年頃の少女にとって、あまりにも衝撃の強すぎるものであった。しかも相手は同じ女の子同士で幼馴染の奏である。そこに禁忌を犯しているという背徳感が湧き出してきても不思議ではないだろう。
 だが、やがてはそれを覆い隠すように……いや、それすらも燃焼剤にするかのようにして、メラメラと奇妙な高揚感が響の心を燃え上がらせていく。

(何これ……こんな事しちゃいけないのに……気持ち良くて……頭がクラクラしてくる……)

 響はやがて自らその瑞々しい肉体を奏の身体に擦りつけ始めた。それが彼女の意思なのか、あるいは身体が勝手に動いているのか……最早そんな事は響にとってどうでも良くなってきていた。
 奏の太ももを挟み込むように両足を絡ませ、秘所を彼女の滑らかな肌で刺激しだす響。その顔には伝説の戦士としての矜持も、少女としての凛とした清純さももう微塵も残っていない。
 情欲に肌を赤く染め上げ、蕩けきっただらしのない表情で口元から舌を覗かせるそれは、ただ本能に従順に快楽を貪るだけの一匹の牝の顔だった。

「こら……響ばっかりずるい……私も気持ち良くして?」

 奏はそう言うと、自らのやや小ぶりな胸を響の眼前に持ち上げた。幼さを残すなだらかな円錐状の頂に、それに似つかわしくなく、ツンといやらしく乳首が刺激を求めて屹立している。
 今の響の目には、それはどんなスイーツよりも甘美で魅力的なものに見えた。
 舌を突き出し、軽くぺろりと舐め上げただけで、奏の口からは愉悦の声が漏れる。

「んはぁっ……そう…上手よ……んっ……響……いっぱいペロペロしてね……」

 響の耳元に口を寄せると、奏は艶を含んだ声色で囁いた。

「次は私が、あなたの隅々まで舐めて、気持ち良くしてあげるから……」

 お菓子よりも甘い甘いその誘惑に、響は抗う事が出来なかった。



競3-44