「Friendful party(フレンドフル・パーティ)」6




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< エピソード1 白雪ひめ >

 ひめの宝物 ――― それは、友だち。
 だからブルースカイ王国で、王女兼教師として、そういう学校作りを目指してみようと思った。
 勉強やスポーツなどはもちろん大切だけど、
 それ以上に大切なのは、誰もが誰とでも友だちになれること。

 正直、王女と教師の兼任なんて出来るかどうか解からないし、そもそも教師になれる自信すら無かった。でも、やってみたい。精一杯頑張ってみたい。
 これは、友達が一人もいなかった頃の自分には見れなかった夢だ。
 めぐみやみんなと一緒の自分だからこそ見れた夢だ。
 だから諦めたくない。もし教師になれないのだったら、なれる自分に変わればいい。
 めぐみに向かって「頑張ってるよ!」と胸を張れる未来のために。

「う…うーー、頑張ります…ですぞ」
 夢を叶える決心はしたものの、その過程を考えると、だんだん気持ちが後ろ向きになってきてしまうのが情けなかった。
 だが、ここで心が折れては脱衣所で見送ってくれたトワとレジーナに申し訳ない。
 温泉ににダイブした際にずぶ濡れになってしまった髪を二人がかりで乾かしてくれて、
「さあさあ、善は急げですわ!」
「めぐみに話したら、次はあたしたちにもちゃーんと教えてよね」
 と、背中を押してくれた友だちのためにも。

「あっ、ひめっ!」
「めぐみっ!」
 今頃は部屋にいるだろうと向かっていたら、バッタリ廊下で遭遇。
 めぐみの顔を見た途端、後ろ向きな気持ちは吹き飛んだ。まるで何かの魔法がかけられたみたいに。……この最高の友だちに、早く夢のことを話したくてたまらなくなってしまう。
 ――― でも、今はそれ以上に、めぐみに話したいことがあった。
「めぐみ聞いてっ、今日、わたしに素敵な友だちが二人も出来たんだよ!」


< エピソード2 紅城トワ >

 ……翌日。

「あーあ、トワっち、顔真っ赤だよ。湯冷めして風邪引いちゃったんじゃない?」
 同じ部屋に泊まっているきららが、布団から出て来れなくなったトワを心配する。
 トワは掛け布団を口もとまで引き上げて、
「も…問題ありませんわ」
 と、答えた。
 そう。体調には、確かに問題はない。
 ただ、昨日あんなコトがあったせいで、どうしても意識してしまうのだ。
 きららのほっそりした手足とか、スマートなボディラインとか、爪の手入れが行き届いた美しい指先とか、さらさらした髪から漂う匂いとか。
 ――― あと、つややかなくちびる。

 きららに視線を向けずとも、近くに彼女がいるだけで心拍数が上がってしまうような状態だった。

「問題ないワケないでしょ?」
 トワが寝込んでいる布団の脇に手を付いて、きららが覆いかぶさってくるように……。
 きららの手がトワの前髪を払って、そして自分の前髪も手で押さえて、おでこ同士をくっつける。
 顔の距離に近さに、トワが思わず呼吸をとめてしまう。
「ほら、トワっち、けっこう熱あるじゃん。……しばらくはあたしが付きっ切りで看病してあげるから、無理しないで」

 トワが布団を顔まで引き上げて、「……くうううっ」と小さな声でうめく。

 ――― あなたに付きっ切りで看病されている限り、わたくし、布団から出られませんわぁぁ!


< エピソード3 レジーナ >

 ……同じく翌日。

 大広間での朝食に、レジーナはマナの左腕に両手を絡ませ、必要以上に身体を押し付けた姿で現れた。二人の数歩後ろには、ドス黒いオーラのような雰囲気を放つ六花が続いている。
「じゃ…じゃあ、食べよっか」
 宿泊客一人に付き一つずつ、料理の乗せられた膳が等間隔で並べられている。レジーナは当然といった顔でマナと一緒に腰を下ろそうとする。
「レ、レジーナのお膳はそっちだよ」
「何言ってんのよ、マナ。ほら見て、あたし両腕ふさがってるのよ。マナに食べさせてもらわなきゃ、あたし朝食抜きになっちゃうじゃない」
「そ…、そうだねぇ」

 結局、「あーん」と幸せそうに口を開くレジーナに、マナが子煩悩な母のごとく箸を動かして食べさせてあげる。そんなマナへ、六花がすぐ右隣の膳から剣山のごとき視線を飛ばしまくっている。
 しかし……。

(あ、これ、レジーナがこの前おいしいおいしいって ――― )
 自分の膳に並べられた小鉢のひとつに、たまたま視線を落とした六花が、ふと思い出した。そして、くすっ、と小さく笑って隣の膳を見た。思ったとおり、マナの膳にあるその小鉢の中身は、きれいに食べられてしまっていた。
「ねえ、マナ、これ。レジーナに食べさせてあげて」
 ごく自然に。
 自分と大切な人の間に強引に割って入る少女のために。

「ありがとう、六花」
 マナが、手渡された小鉢と交換に、空になった小鉢を六花に差し出す。……と同時に、六花の両手が流れるように受け取って、それを自分の膳へ。
「よかったね、レジーナ。はい、あーんして」
 と、微笑みながら食べさせてくれるマナ。
「そうだ。どうせならレジーナのお膳とマナのお膳、くっつけちゃおっか」
 と、二人の食事のために甲斐甲斐しく動く六花。

 レジーナのために、マナと六花の心の向きが綺麗に揃う。

 ――― なによ、もうっ!
 マナの左腕にしがみついて、さらに強く身体を密着させる。「な…なんで怒ってるの?」とマナが腕の痛みに戸惑いの笑みを浮かべるけれど、レジーナは無視。
 こんなにくっついているのに、ちっとも近くなれない。
 マナと六花みたいには。

「今度は六花が食べさせて。はい、あーん」
「へ? マナじゃなくて、わたしが…?」
 少しでも六花を困らせてやりたくて、こんな事をする。

 六花のせいで、マナが自分のものにならないというのに……。

「はい、レジーナ。……どう、おいしい?」
「ん…、じゃあ、次はマナに食べさせてあげて」
「え…ええっと。……えっ?」
「ほら、六花、みんなの前だからって照れないの。マナも早く、あーんって口開いて」

 きっと六花はどんな時でも、マナの心に寄り添ってくれる。 ――― そう思うと、胸が温かくなるような安心感を覚えた。

(おわり)