「Friendful party(フレンドフル・パーティ)」2




 華奢な丸みを描く肩。それを愛でるように滑る手の平。
 トワの綺麗な背中に、レジーナのかわいらしい裸身がぴったりとくっつけられる。うなじ近くをクスクスとあどけない笑い声が這って、くすぐったかった。
「ふ~ん、マナのほうがいいけど、トワのカラダもそれなりに……もっとあたしにさわらせて」
 そう言いながら肌をなぞる指先の動きは、こっそりとトワのカラダの正面へと回り込もうとしていた。すぐに察知したトワが湯を跳ね上げて裸身をよじるが、レジーナの手は離れない。むしろ、そんな抵抗が彼女の遊び心を刺激してしまう。
「レ、レジーナ……ちょっといい加減に……っ」
「ふふっ、ちょっとだけトワのこと気に入っちゃった。……そうだ、あなたに『トワワン』ってカワイイ感じのニックネームを付けてあげる。うれしいでしょ?」
「ト…トワワンっ?」
 トワの表情が驚きの色に ――― しかし、それも一瞬の事。誇らしさを顔に覗かせた少女は、左手を自分の胸に当て、背後のレジーナに向けて言葉を放つ。
「せっかく考えていただいたのに申し訳ありませんが、レジーナ、わたくしにはすでに『トワっち』という、大切な友から頂いた素晴らしいニックネームが ――― 」
「ええー、『トワっち』よりも『トワワン』のほうがカワイイじゃない。トワワンもそう思わない?」
「思いません。まったく思いませんわ。わたくしはトワワンではなく、トワっちです」
 決してキツい口調ではない。だが、何があろうと譲歩する気はないという強い意志が声に現れていた。

(へぇ~、あたしに逆らうんだ……)
 トワの態度は、レジーナの意に添わぬものだった。
 少女の青い瞳が不機嫌そうな輝きを帯びるも、五秒も数えぬ内に、その瞳に宿る感情が切り替わる。まるで新しいオモチャを手に入れた子供のように楽しそうだ。
「ふふっ、トワワ~~ン」
「だからっ、トワワンでは……あっ」
 湯の中で、レジーナの右手は鮎のごとく軽やかに動いた。即座にトワが右ヒジで牽制してくるも、それをスルリとかわして、腕と身体の隙間にすべり込む。しかし、トワの対応は早い。ワキをきつく締め、二の腕と身体でレジーナの右手首を挟みあげて動きを封じようする。
(トワワン残念っ、そんなのお見通しなんだからぁ)
 左手でトワの腰のくびれをスゥー…と撫で上げ、ゾクリとくるこそばゆさで彼女の意識を乱す。時間的にわずかな隙でも、レジーナの右手が目的を達成するには充分過ぎた。
「あっ…くぅ」
 胸先の敏感な刺激に、トワの短くうめいて、クッ、と俯く。眉間に微かに刻まれたシワと、閉じられた双眸で美しい睫毛が震える様(さま)が、少女の表情に悩ましげな色を這わせている。
「ほらほら、トワワン、どう? くすぐったいでしょう」
「トワワンではないと何度言えば……あぁ、レジーナ、駄目ですっ、そんな…はぁっ、あっ」
 13歳のプリンセスの胸に、まろやかに描かれた乳房のカタチ。まだそれほど大きくはないが、白い肌はなめらかで美しい張りがあり、そのふくらみは誰の目にもやわらかな手触りをイメージさせる。
 初雪の白さが戴く薄桃色の乳輪、その中央を可愛らしく飾る突起 ――― レジーナの指がそれを優しく捕らえて、甘やかなくすぐりを加えている。
「あれえ~、もしかしてトワワンってば、もう降参?」
「降参など……だ…誰が……うっ、うぅっ、駄目…ああっ」
「へぇぇ、まだ降参しないんだ。じゃあ、こっちのほうも…」
 左の胸のふくらみにもレジーナの手が伸びた。
 やわらかな曲線に手の平をすべらせ、ゆっくりとさするような動きで、きめ細やかな肌の下にある瑞々しい肉の弾力を愉しむ。今のトワは、喘ぎをこらえつつ、湯に浸かったハダカの上半身をくねらせるのが精一杯の抵抗だ。攻め急ぐ必要は無かった。
 右のふくらみに占領していた手も、乳突起をつまむのをやめて、トワの乳房を優しく撫でまわして愛でる方向に戦術転換。
「あぅっ…はあぁぁ、レジーナ…、もういい加減に……」
 胸のこそばゆさに、トワが吐息を震わせる。
 かつてトワを笑顔にさせるため、天ノ川きららがハグしながら体をくすぐってきたコトがあったが、あの声を上げて笑ってしまうような明るいこそばゆさとは違う。
 白い肌の下を、甘く犯されるようなこそばゆさ。
 レジーナの手つきには、どこかいかがわしいものを感じてしまう。

「あ~~、トワワンの胸、きもちいい…」
「ト…トワっちです…」
「フフっ、強情なんだから」
 左右の手の平に広がる、やわらかな乳房の肉感。まだうら若い乙女のふくらみは成熟前だというのに、いつまでも触っていたくなるような心地良さでレジーナの手を酔わせていく。
(……ハッ、いけない。あたしのほうがウットリしてどうすんのよ!)
 レジーナは胸の内で、ふむ…、とうなずいて、手の平を乳房から浮かせた。ただ両手共に、五本の指先だけは乳房に残しておく。かろうじてギリギリ触れている程度の接触だ。そして、その状態でトワの乳房を、ス~…ス~…と優しく撫でまわしてやる。
「う…く…ああっ、レジーナ、駄目っ…くすぐった……あ゛っ、駄目ですっ、あぁぁぁ……」
 トワの裸身が、びくんっ、となり、湯の表面にさざ波を立てる。
 乳房の表面を無軌道になぞるため、ときおり、五本の指先いずれかが敏感な乳頭をかする。それがトワにはたまらなかった。
「だ…駄目です、レジーナ、これ以上は……」
「ん~? トワワンはやっぱりここが気持ちいい? つまんじゃおっか、ほらぁ」
「あぁんッ、いけませんっ、駄目……あっ、うぅ」
 レジーナの手から逃れようと上半身をよじるが、そんなトワを面白がっているらしく、ツンとこわばってきた乳首がいじわるく愛撫される。
 優しくつままれたまま、スリスリと転がされるみたいにしごかれて……。
 今度は、かろうじて乳房の先端に届くぐらいの距離から、爪の先でコチョコチョと……。

 こそばゆく責められる胸先に湧き上がる感覚 ――― トワは、まだそれの名前を知らない。

「ああっっ……あッ!」
「あ、今、トワワンの背中がビクンッてなった」
 トワの背中に押しつけた柔らかな肌に、彼女のカラダの反応が正直に伝わってきた。
 調子に乗ったレジーナが、さらにこまやかに指を動かして、なめらかな乳突起をさらにくすぐり上げてやる。
「あっ…ああああっ、駄目っ、そんな…ああああっっ!」
 トワの両目の端に、うっすらと涙がにじみ始めた。
 自分のカラダの上で、他人の手が好き勝手に振る舞っている。……屈辱なのに、全身によく分からない熱を帯びてしまう。
「フフ~ン♪ またトワワンの背中びくびくしてる~~」
「…し、してませんっ」
「強がっちゃう子には、お仕置きなんだから♪」
「ま…待ってくださいっ、駄目ですっ、レジーナっ」
 こんなにも感じやすくなっている乳房の先っぽをこれ以上いじくりまわされたら……。
 ――― ゾクッ。
 言葉に出来ない不思議な痺れのようなものが、カラダのどこかで疼いた時だった。

「も…もうっ! やめなさいよっ、さっきからトワが何度も駄目って言ってるじゃない!」
 と、ひめから強い非難の声が上がった。
 レジーナの自分勝手なスキンシップで困っているトワを助けてやりたい ――― ひめの瞳は、そんな真っ直ぐな気持ちに溢れていた。
 あ、居たんだ ――― という程度の視線を返してきたレジーナを、ぐっと睨みつける。
 それに対してレジーナは、やれやれ…という表情で、あからさまに溜め息をついてみせる。
「まったくぅ…。ひめってばお子様なんだから」
「何よっ! 胸だったらレジーナだって似たようなものじゃない!」
「胸の話じゃないわよ」
 と、軽く鼻白んだレジーナが、隙を突いてカラダを引き離そうとしたトワを後ろからギュッと抱きすくめる。そして、やや得意げにレクチャーする。
「いい? ひめ、この場合の女の子の『駄目』はね、気持ちいいっていう意味なんだよ」
「変なデタラメ言わないの!」
 即座にひめが嘘と断じる。強制的に抱きしめられているトワも、その通りと言わんばかりにうなずいている。
 レジーナの瞳に、ムッとした光が浮かんだ。
「ウソじゃないわよ。本当に ――― 」
 言葉が ――― 止まった。
 胸の奥。ズキズキとする。

 マナが六花の家で勉強してくると言うのを、ベッドで漫画を読みながら見送った夜。
 漫画を読み終えてもまだ帰ってこなかったので、空を飛んで直接菱川家の二階、すなわち六花の部屋へ様子を覗きに行った。窓にはカーテンが掛かっていたが、その隙間から部屋の中を見ることが出来た。

「どうかしたの、レジーナ?」
 自分では一瞬に感じたけれど、実際は十秒近く経っていた。急に黙り込んだレジーナへ、訝しげな視線を向けてくるひめ。青い瞳から切なさを払って、彼女に微笑みかける。
「…うん、ウソじゃないよ。ひめが本当に好きな人と一緒になれたら、きっと分かる時がくるって」
 透明な笑み。
 優しくて落ち着いた声。
 痛いけれど ――― 違う、自分が痛いからこそ ――― 誰かの幸せを祈りたい気持ちになる。
 ひめが、ポカンとした顔でこちらを見ている。その顔が面白くて、「アハハッ」を声に出して笑ってしまう。
「あーあ、もうマナ捜しに行くのやーめた」
 そう言って、トワのカラダから両腕を解く。……解放されたトワは、完全に意表を突かれた表情。
「……捜しに行かなくていいの?」と訊いてきたひめに、レジーナは「いーのいーの」と右手の甲をヒラヒラと振りながら答えた。
「その代わり、明日の朝、六花の目の前でマナにいーっぱい甘えてやるんだから」
 ひめはモヤモヤした気持ちを胸に抱えだした。
 心配する必要はなさそうだが ――― それでもレジーナが無理して余裕ぶっているように思えるのだ。どうしていいか分からず、トワと視線を交わす。
 トワとしては、レジーナがおとなしくしてくれたほうがありがたいはずなのに……今はひめと同じで少しもどかしい気分。
(ハァ…、調子が狂ってしまいますわ)
 きららなら、こんな時…きっと。
 トワが両手の指を絡めてカタチを作った。そして、両手の平に加えた瞬発的な圧力で思いきりよく湯を飛ばす。彼女の手から発射された湯が、見事にレジーナの顔を直撃した。
「わっ、なによっ!」
 唐突の悪戯に柳眉を逆立てるレジーナ。
 だが、トワは笑顔をひめのほうへ向けて、
「見ましたか、ひめ。今のはお風呂できららが教えてくれた『ニンジュツ』という、この国古来の必殺技ですのよ!」
 と、はしゃいでみせる。