開幕!『オールスタープリキュア!幸せ満開!冬のSS祭り2016』/夏希◆JIBDaXNP.g




「そろそろみんな集まって来る時間ね。今年は私達が主催なんだから、しっかりと進行役を務めないと」

 みなみがやや緊張した面持ちで、会場を念入りにチェックする。
 ここは私立ノーブル学園から少し離れたところにある広場。学園長でもあり、絵本作家でもある望月先生が、青空絵画教室を開く場所でもある。

「テーマは夢かぁ! みんなで夢を語り合うなんて素敵すぎる~。楽しみだなぁ~!」
「はるかちゃん嬉しそう。私も記録係としてがんばらなきゃ」

 はるかは胸の前で両手を合わせて、キラキラと目を輝かせて空を見上げる。視界に広がるのは澄んだ青空と白い雲――じゃなくて、先輩だったり、仲間だったりする、みんなの笑顔。
 ゆいは、そんな空想の世界にトリップしているはるかと、時々草の葉の裏まで確認しながら歩き回っているみなみの姿をスケッチしていく。
 三人三様、それぞれ自分だけの時間を過ごしている中、来客の一人目が姿を現した。

「はるはる~、みなみん、ゆいゆい、ただいま! って、おーい、聞いてる?」
「えっ、あっ、きららちゃん! いつ帰ってきたの?」

 きららは振り返ったはるか達に、ぶんぶんと大きく手を振ってみせる。まるで犬が尻尾を振るかのようなそのしぐさは、彼女の喜びの表現そのものだった。

「もう。だからたった今、“ただいま”って言ったじゃん。さっき空港に着いて、真っ直ぐここへ来たの」
「お帰りなさい、きらら。時差は大丈夫? 日本とフランスじゃ、8時間くらいは違うはずよね」

「よゆーよゆー。そんな細い神経じゃモデルなんてやってらんないって」
「相変わらずだね、きららちゃん。元気そうで良かった」

 きららはバッグから可愛らしい封筒を取り出して見せる。みなみ、はるか、ゆいの3人でこしらえた、イラスト入りの手書きの招待状だ。
 文面は相手に合わせて変えてあるけど、内容はどれも同じ。「夢をテーマに語り合おう」って誘いだった。

 三人で話していると、上空がぐにゃりと歪み、直後、空中に大きな扉が出現した。
 音もなく扉が開く。その向こうから出て来たのは、白馬にまたがったカナタ王子と、その後ろに横向きに腰掛けているトワ王女だった。
 続いて、妖精のアロマとパフ、ミス・シャムールにクロロの姿も見える。

「久しぶりだね、はるか。そしてみんな」
「みなさま、お久しぶりでございます。この度はわたくし共をお招きいただきまして――」

「カナタっ! それにトワちゃん。元気にしてた?」
「ホント久しぶりだね~、トワちゃん。カナタさん」
「お目にかかれて嬉しいです。カナタ王子。トワ」
「久しぶり。でもカナタ王子の“はるかとその他”ってニュアンスの挨拶はあんまりだよ」

「ああ、ごめん。そんなつもりじゃなかったんだが」
「冗談冗談。カナタもトワっちも、あんまり固いからさぁ。ちょっとからかっただけ」
「仕方ありませんわ。厳しいルームメイトのお蔭ですっかりここでの暮らしに馴染んでしまって、王城に戻ってからは、作法をみっちり仕込まれているんですの」
「おっかしいなぁ。“厳しい”じゃなくて、優しいルームメイトの間違いじゃなかったっけぇ」
「それ、どなたのことですの?」
「アハハ……。トワちゃんも、すっかりいつもの調子に戻ったね」

 はるかが嬉しそうに微笑む。実のところカナタとトワの参加は諦めていた。一応、彼らにも招待状を作成してはみたものの、ホープキングダムまで届ける手段がない。
 仕方なく机の上の目立つ場所に置いたのだが、それがある日、忽然と消えていた。だから、“もしかしたら”って期待はあったのだけれど。

「それで、『夢をテーマに』と書いてあるんですが、具体的には何をするんですの? 演奏会ではなさそうですわね」
「ああ、トワちゃん達は初めてだったよね。わたし達は昨年から参加してるんだ。プリキュアのみんなで集まって、その年のテーマについて、思い出なんかも交えて語り合うんだよ」

「プリキュアのみんなって……わたくし達以外にもプリキュアがいるんですの!?」
「うん、聞いて驚かないでね。実は――」

「わぁーっ、リコちゃん、落ちる、落ちるーっ!」
「落ちてないし、ちょっとバランス崩しただけだし、っていうかこれ一人乗り用だしって、きゃあぁぁ――!」

 突然、上空から切羽詰った声が響いた。空の扉の更にその上から、二人の少女が落ちてくる。

「人が……ホウキで飛んでるロマ!」
「お兄ちゃん、ホウキはお掃除に使うものパフ」
「えーっ!? こっちに落っこちてくるよ! あわわわわ……ど、どうしよう!」

 驚くアロマにマイペース過ぎるパフ。そして、はるかがあたふたと右往左往し始める中、どしーん、と大きな音を響かせて、二人の少女が地面に墜落した。

「いたたぁ……。リコちゃん大丈夫?」
「もちろん平気。狙い通りだから! ちょっと着地が上手くいかなかったけど、場所はこの辺りで間違いないはずだし」

「はぁ。とにかく無事みたいで良かったぁ。って、あなたたちって、もしかして――? あ、わたしは春野はるか。私立ノーブル学園の2年生で、こう見えてもプリキュアなの」

 いきなり知らない場所に現れて、知らない人たちに囲まれたというのに、マイペースな調子で会話する女の子達。どうやら怪我は無さそうだとホッと胸をなでおろしたはるかが、負けず劣らずマイペースにその会話を遮る。

「えっ! 今、プリキュア、って言いました!? もしかして、ここにいるみんなも伝説の魔法使いなんですか?」
「ちょっと、みらい。挨拶が先でしょ。私はリコと言います。こっちの子は友達のみらい。私達の元にこんな招待状が来て。最初は間違いかと思ったんだけど、プリキュアって書いてあるから」

「うん、出したのはわたし達で間違いないよ。ようこそ! 新しい仲間、魔法つかいプリキュアの、みらいちゃんとリコちゃん」
「じゃあ、みなさんも魔法使いなんですか? だったらわくわくもんだぁ!」

「残念ながら魔法は使えないわ。私達はプリンセスプリキュア。あなた達の言葉で言うと、伝説の戦士ってことになるのかしら」

 みなみが穏やかに説明して誤解を正す。どうやらこの子達は、プリキュア=魔法使いと認識しているようだった。
 テレビで新しいプリキュアが誕生したのは知っていた。それでダメ元で招待状を送ってみたのだ。まさかホウキに乗って空からやってくるとは思わなかったが。

「伝説の戦士! それもカッコイイなぁ~。もしかして伝説の武闘家とかも居たりします?」
「それは聞いたことがないわね。そもそも私達だって、徒手空拳で戦うことはあるわけだし」

 みなみが説明する横で、はるかがパンチを打って見せる。その姿はまるで様になっておらず、伝説の戦士というよりお子様のお遊戯だったが、それを見て、みらいはますます目を輝かせた。

「な~るほど! つまり戦士でもあり、武闘家でもあるってことですねっ!」
「そういう問題じゃないと思うけど。それに私達もパンチやキックは使うでしょ?」

「だって、あれは魔法だし!」
「魔法……なんだ……」

「他には~伝説の僧侶とか!」
「どうやって戦うのよ、それ」

「なら伝説の遊び人とか?」
「遊んでどうするのよ! っていうか、元ネタは何よ。メタなこと言うと危ないわよ。言葉は呪力を持つんだから」

 はるか達を置いてきぼりにして、みらいとリコのボケと突っ込みが展開される。そんな姿が、とあるアイドル候補生の先輩と被って、今度はきららが笑いながら割って入った。

「はいはい、ストップ! それでさ、あなたたちはこれがどんな集まりだか知ってるの? 夢について語り合おうってことなんだけど」
「夢かぁ。ぬいぐるみのモフルンとお話してみたいって夢は叶っちゃったし。ホウキに乗ってみたいって夢も、たった今、飛んできたばかりだし」
「そう――なんだ。本当ならどちらも叶いそうにない夢なんだけど、ハハハ」

「夢と言えば、魔法学園を退学になる夢を見たり、毎日、居残りで補習させられる夢を見たり、最近は嫌な夢ばかりで。いえ、現実は毎日楽しいんですけど」
「リコちゃんだっけ、そっちの夢はなんか違うような……」

「違わないよ、きららちゃん。夢ならどんなものだって、わたしは聞きたいもの。悪夢だって“そうはなりたくない”って、夢の裏返しなんじゃないかな?」
「はるはる、流石~。夢を語らせたら右に出る者ないね」
「えへへ、それほどでも」

 照れ笑いで頭を掻いたはるかが、改めて二人の新しい仲間にキラキラした目を向ける。みなみ、きらら、トワ、ゆい、それにカナタと妖精たちも、笑顔でそれを見守る。

「それで二人の本当の夢はなあに? わたしの夢は、プリンセスになることなの」
「うわぁ、大きな夢! わたしの夢は、やっぱり毎日がドキドキで、わくわくで、不思議がいっぱいで、あとは……うん! リコちゃんやみんなと仲良く楽しく過ごせたらいいな~って」

「もう、恥ずかしいから力説しないでよ。みらいのそれは、夢じゃなくて願望だし」
「そんなことないよ、リコちゃん。みらいちゃんの願いもステキな夢なんじゃないかな。夢って、ロマンって意味もあると思うんだ。リコちゃんの夢も聞かせてくれる?」

「私は……立派な魔法使いになりたい」
「うん。その夢、ステキだと思うな。どうしてそんな夢を持つようになったのか、それも後で教えて?」


「「「お~い、みんなぁーっ!!!」」」


 少女たちが、三人、四人、五人、あるいは六人ずつのグループで、手を振りながら集まって来る。
 ある者達は駆け足で、ある者達は鏡の中から、ある者達は鍵盤の上を滑るように、ある者達は大きな鳥に乗せられて、はたまたある者達は赤い光と共に現れて。
 そのハチャメチャぶりは、ホウキで現れたみらいとリコに勝るとも劣らない。そうして何十人もの、中学生前後の女の子達がやってくる。

「もしかして、これ――みんな!?」
「うん! プリキュアの仲間達なの」
「すっごーい。わくわくもんだぁ!」

 年に一度だけ、伝説の戦士――と魔法つかいが集う、秘密のお話し会があるという。
 今年のテーマは『夢』。
 そんな奇跡の時間に一ページ、あなたの物語を刻みませんか?

『オールスタープリキュア!幸せ満開!冬のSS祭り2016』これより開幕です!