『銀河鉄道の夜』/Mitchell&Carroll
「……トワっち、起きてる?」
「……ええ」
しんと静まった真夜中。眠れないトワの横を目指し、
幽かな月の光を頼りに、きららは二段ベッドの梯子を枕を抱えて降りて来た。
「へへっ」
トワの枕の横に自分の枕を並べて、もぞもぞと布団の中へ侵入開始。
「あたしが眠れない時はね、あたしのママがこうやって、昔話なんかしてくれたんだ。
ママがあたしより先に寝ちゃったりしてさ」
トワの返事も聞かず、始めるつもりである。
「昔々、あるところに――」
真っ暗な劇場で始まったお伽話。それは、きららの少したどたどしい語りによって。
「……それで、どうなったのです?」
語りが途絶えたので、ふと横を見ると、
「きらら?……まあ」
少し、はみ出しているきららの肩に毛布を掛けてあげる。
今夜は、不思議なくらい温かい。
最終更新:2015年10月28日 23:14