「今日はクリスマスイブね。この前のペンダントのお礼を兼ねてクリスマスプレゼント」
私はラブに昨日の夜ラッピングをしたプレゼントを渡す。ラブ、喜んでくれるといいけど。


「ありがとう、せつな」
「中を見て、文句を言わないでね」
「ここで開けてもいい?・・・・アカルン使用券?」
「お父さんやお母さんにいつまでも迷惑を掛けられないから、お金をかけられなくて。
こんなものでごめんなさい」
「せつな、ありがとう。せつなから貰うものなら何でも嬉しい」


私の大好きないつものラブの笑顔。だけど、いつもより輝いて見える。
大好きな人が喜んでくれる。笑顔でいてくれる。それだけで、私も嬉しい。



お父さんもお母さんもクリスマスイブということで、早めに仕事を終わらせてくれたみたいで、4人でパーティの準備を始める。


「お母さん、刷毛で鳥肉に塗っているの、何」
「これは溶かしバターで最後に塗ると、皮がカリっと焼けて香ばしくなるの」
鳥の形そのままのお肉。お母さんが近くのお肉屋さんに特別に注文していたものらしい。


「ラブ、手に持っている緑の野菜、何」
「ピーマンだよ」
でも、今日はクリスマスパーティーなのにピーマン、どして?
「ベーコンが油が出るくらいまで焼いて、そこに適当に切ったピーマンを入れるっと。
あたしは焦げめがついたくらいいいかな。ピーマンに甘味が出て。
最後にちょっと多めに塩胡椒を入れる。お父さんのお酒のおつまみにもぴったりだよ」


「お父さんが作っているの、何」
「ホワイトシチュー。じゃがいも、人参、玉ねぎを煮込んで、ルーを入れて一煮立ちしてから火を止めて、最後に湯掻いたほうれんそうを入れる」
人参を煮ていた時点でラブは諦めていたみたいだけど、お母さんは不意をつかれたみたいで、なんとなく顔が青ざめているような気がする。


「二人とも、僕のシチュー食べられないって言うのかい」
「・・・・」
「私は精一杯、食べるわ」
「せつなは嫌いなものが入っていないかもしれないけど・・・・」
「せっちゃんはお皿出してくれる」
「はい」





「いただきます」


4人で囲む食卓。いつもの家族の団欒。
だけどいつもと違う、心が弾む感じがする。これがクリスマス?



「あたしの小さい頃なんだけどね。
サンタさんにプレゼントをくれたらお礼を言おうと思って、寝ないで待っていたことがあったんだ。
でもそこにお父さんが来たから驚いて・・・」
「そうかそれでラブは、お父さんが来たから、サンタさんが来なかったって泣いたんだね」
「なかなか泣きやまないラブをなだめるのに苦労したわよ」



私の知らないクリスマスの思い出。
でもいつか今夜のことも思い出となって、こうやって話題に出るのかもしれない。



今日はお父さんもお母さんも早く帰ってきたからか、いつもより後片付けに時間がかかったといっても、寝るというにはまだ早い時間。
自室に戻ろうとすると、


「後で、あたしの部屋に来てくれる?」


「まさか、今夜は何もしないから、多分、ねとか言っちゃったりする?」
「・・・・・・」
「そんな展開になったら、すっごく私が困るんですけど」


「せつな、もしかしてあたしの事嫌いになった?それとその口調、なんかいつものせつなじゃない。もしや、セレワターセ!!」
「違う、私だけど私じゃない」
「分かった確かに、せつなだね。今夜は何もしないから、おそらく」
「・・・・・・」
「冗談、冗談。さっきのコレ」


と言って、赤いカードを渡してくれる。私がラブに渡したプレゼント、アカルン使用券。


「コレ使ってもいい?あたし、せつなと行ってみたい所があるんだ」
「―――」
「そんな所でいいの?普段行けない所でもいいのに」
「うん、夜にせつなと行ってみたかったんだ。お母さん達が心配するから暗くなってから出かけられないし」



「じゃあ、せつな、お願い」
「分かった。アカルン、お願い」





ここは、クローバータウンストリートが見渡せる丘の上。
私が初めてお母さんと出逢った場所、そしてその夜、私に初めて家族ができた場所。



「ここは、せつなとお母さんが初めて会った所だったよね」
「そうね」


私とラブは寄り添いあって、丘の上から眼下に広がる街を眺める。


家々に明かりが灯り、街全体がまるでクリスマスツリーのよう。
あの光一つ一つに、幸せがあるのだろう。


家族でクリスマスパーティーをしていたり、
子供達がサンタさんのプレゼントを待ちながら眠っていたり、
恋人達が寄り添いながら愛を語ったりしているのだろう。



私がイースだった頃、壊していた幸せ。


私の寒さだけじゃない心の震えを感じたのか、ラブが私の肩に腕を回してくる。


「いつでも来れるのにわざわざここにしたのどして、とか思ってる?
ここは、あたし達プリキュアが守ってきた街、そしてこれからも守っていく街が見える所。
あたしや美希たん、ブッキーだけじゃないよ。せつなも守ってきたんだよ、この街を。
だからこんなに幸せが満ち溢れている」
「それに、――――」
え、ラブ今何か言った?


「ううん、なんでもない。寒くなってきたね。もう帰ろう」
「うん」


私はラブの言葉に頷きながら、眼前の景色に意識を向ける。


月の光に照らされ、シロツメクサの緑の葉っぱは白い花のように、山の稜線は白く浮かび上がって見える。



山のあなたの空遠く、「幸」住むと人のいふ。
噫、われひとと尋めゆきて、涙さしぐみ、かへりきぬ。
山のあなたになほ遠く、「幸」住むと人のいふ。



山の遥かずっと向こうに幸せがあるという。
でも、私の幸せは山の向こうにあるのじゃない。
ここに、クローバータウンストリートに、そして、ラブのそばに在る。






本文中の詩「山のあなた」カール・ブッセ作 上田敏訳




SABI11はラブ視点で