『本編』/Mitchell&Carroll




「……暇ねぇ。こんな日もあるのね」
ガランとした、カップケーキのお店・Lucky Spoonのテラスで、奏はポツリと呟く。
「私達がいるじゃない。もぐもぐもぐ」
「カップケーキ、もう二個追加ね。ぱくぱくぱく」
「セイレーン、あんまり食べると○○○ニャ。むしゃむしゃむしゃ」
「黙って食べられないの?あむあむあむ」
「ドド!レレ!ミミ!ファファ!ソソ!ララ!シシ!ドド!」
響にエレンにハミィにアコ、それにフェアリートーンが、奏を励ましていた。
「……あなた達、少しは遠慮しなさいよね。……もっとこう、新鮮なお客さんが、ドドーッと来てくれないか しら」

 上空が眩しく光る。
「な、何!?」
「雷!?」
――空から何かが降って来る。人である。それらは響たちの目の前に降り積もった。
すかさず現場を検証しようと近付いていったのは、怖いもの知らずのハミィである。
「ニャプ……空から、人と猫と烏が降ってくるなんて、これは事件ニャ!」
その降り積もった人達の一番下の、お団子アタマから声がする。
「お、重ぉ~い!……ハッ、かわい~い!ハートマークハゲの猫ちゃん!」
そう言ってハミィを抱き上げ、頬擦りをする。
「これはハゲじゃないニャ!これは……これは……」
記憶を辿るのに必死なハミィの横で、響は山のてっぺんに乗っかっていたルナを抱き上げ、こちらもこちらで
「かわいい!三日月ハゲの猫!」
と、頬擦りをしている。奏はというと、そのルナと、アルテミスの肉球を指で押さえて、
涎を垂らしながら恍惚の表情を浮かべている。いよいよ耐え切れずにルナが、
「ちょっと、額の三日月、あんまり触んないで!パワーが……」
続いてアルテミスが、
「おい!涎を拭いた手で肉球触らないでくれよ!」
と口を開いたところで、その場にいた全員が叫んだ。
「「猫が喋った!!」」
だが、しばらく間を置いて、誰かの、
「……別に珍しいことじゃ、ないんじゃない?」
という声を聞いて、皆、「確かに」と納得した。

 その後も色々あったが、要するに、猫や宝石が喋ったくらいでは動じない精神の持ち主の集団であったのだ。
 どうせだから、ということで、響たちは先輩・後輩たちと連絡を取り、一同はここ、Lucky Spoonに集結することとなった。大変な賑わいの中、白雪ひめは、ルナの方をちらちらと見ながら、
「なんかあの猫、他人って感じがしないんだよねぇ~……」
と、愛野めぐみに相談し、同様にルナも、
「な~んかあの子、他人って気がしないわ……」
と、ひめのことが気になっていたりして、どうやらこれだけ人数が多いと、苗字が同じだったり何だったりと、いろいろ共通点も多く、話題は尽きることが無かった。
 亜美と月影ゆりは、お喋りもそこそこにケーキもろくに食べずに、どちらが早く問題集を解けるか競争しているようである。木野まことが持ち込んだケーキは、皆が蟻のように群がったため、瞬く間に食べ尽くされ、一件落着した。

 片隅で、ハミィたちは猫同士で会話をしていた。
「……そんなわけで、ハミィとセイレーンは、昔も今も、これからもずーっと、友達ニャ!」
天真爛漫そのものである。
「そうよね~、本当に大切なものって、昔も今も変わらないのよね~」
と、ルナはしみじみと言う。

 陽も落ちようとしているところで、御開きになった。
だが、不思議なことに、彼女達は、いつかまた皆がこうして会えることに、疑問を抱かなかったという。