「貴女とふたりで見つけた幸せだから」/ねぎぼう




 白詰草の丘でラブは四つ葉のクローバーをずっと探していた。
 明日はせつながラビリンスに出発する日。
(あの日受け取ってもらえなかった「幸せの素」をちゃんと渡したい!)
 そう思い立ったラブは今朝からずっと探していた。
 それなのに……
「なんで……なんで見つからないのぉーっ?」
ラブの背中が温かい感触に包まれた。
「ラブ……」
「せつな!」
「一人で、こんな広い場所で、ずっと探していたの?」
 ちょっと呆れたように言う。でも、ラブがこんな無茶なことをするときは、
たいがいダレか幸せのため。
「だって……だって……せつなに、ちゃんと幸せの素を持って帰って
欲しかったから……あの時、ちゃんと渡せなかったから……」
 親の愛が欲しくて駄々をこねる幼子をよしよしするように、
せつなはラブの頭を撫でる。
「前に教えてくれたわね。幸せを呼ぶ四つ葉のクローバーは、
心から幸せを望んでいる人じゃないと見つけられないって」
「あたし、せつなの幸せを心から望んでいるんだよ!
それなのに……こんなに探してるのに……」
 白詰草の絨毯に、ぽろり、ぽろり、ぽろり……
「ラブ、貴女の幸せは何?」
「あたしの……幸せ?」
 かつて、ラブがせつなに尋ねたこと。
「皆が笑って……幸せをゲットできる……」
 ラブの心の中では、家族の、友達の、クローバータウンの人々の……
パラレルワールドの人々の笑顔が広がっていく。
「その中に、ラブはちゃんといる?」
 せつなはラブをぎゅっとした。
 この温もりは、ラブを一番の笑顔にする。
「……もう大丈夫。ちゃんとここにいるから」
 ラブはそのまま向き直ると、
「もちろん、せつなもいるんだよ」
 今度はラブがせつなをぎゅっとする。
「私も、ね」
 ラブの胸の中でせつなは、掌を合わせた。
「スイッチ・オーバー!」
 そこに現れたのは……
「せつな……イース?」
 胸の中にはイース。でもラブを見つめるその瞳は温かく、きらきらしていた。
 そう、この子はもうせつなが戻ることを怖れたイースじゃない。
 心から幸せを望んだイース。
 幸せに精一杯手を伸ばそうとしたイース。
 せつなであることを選んでいてくれていたイース。
「私、もうイースであることを怖れないから」
「よかった……イースで、せつななんだね」
 そんなラブに灰色の髪の少女は安堵の溜息をついた。
 おそらく、この世界でイースの姿を見せることはつらいこと。
でも、あえてラブの前でその姿をみせた。
 もうイースを否定しない。ラブはせつなの気持ちに応え、
あらためて自分の気持ちを伝えるため、一層強く抱きしめた。
「あ、イースになるとやっぱり胸が大きくなるんだね」
「もう、ラブったら……馬鹿な子」
「イース、素直すぎるよ」
「ふふ」
「ふふふ」
(せつなもパッションも好き……だからイースもきっと……)
「そこにあるのは……何?」
 二人の傍らにあったのは、ずっと探していた『幸せの素』。
「ふふふ、やはり二人なら見つけられるわね」
「あたしたちが見つけた幸せ……一緒に掴み取ろう!」

 *****

「たはは、すっかり遅くなっちゃったね……」
「お母さんに一緒に謝らないとね」
「そんな、せつなは悪くないから!」
「ラブったら、こんな時に一人だけで謝るつもり?」
「……一緒に、お願いします」
「素直なラブね」
 手を繋いだ二人が家路へと駆け降りていく。
 二人が見つけた「幸せの素」をその手に持って。