中学生特有の病気(心の方の)【裏】/そらまめ
それは突然だった。
ラブと二人で学校の課題を終わらせるためパソコンを見ていた。デジタルな画面は見慣れていたけど、情報量の多さにたどたどしくページを拾っていく。
そうこうしているうちに気付けばラブは眠っていた。気持ちよさそうに眠るラブを横目に課題を疎かにしてはいけないと休むことなく手を動かす。
カタカタという音と、規則正しい呼吸の音以外は聞こえない。雑音の少ない部屋で動かしていたのは両手と頭の思考だけだった。
しばらくそうしていたら、本当に突然何かが光りだした。目の前にはパソコンの画面があることに、原因はそれかと思ったがよく見れば何かに反射して光っているのだと気付く。
背後にあるのは、姿見だ。
何故だか背中に冷や汗が流れる。振り向きたくない。でもそれから目を背け続ける事も出来ない。振り向くな。振り向け。交互に襲い来る感情にギシリと体が軋んで動きを止めた。
「…やあ。勝手に入らせてもらうよ」
「ひっ…!」
二人しかいないはずの部屋で二人以外の声がする。しかもその声の主は今会いたくないトップ3にランクインする人物。
…振り向くしかなかった。
「な、んで…」
「おや、変な事を聞くね。人の姿を映すものはどこにでも繋がっているものだよ。どんな所にも、どんな心にも。君は知ってるはずだ。ねえ、イース」
「何しに、来たの、よ……サウラー」
今出来る最大限の殺気でその人物を見た。イースと呼ばれたことに文句の一つでもつけたいが、そんな事よりサウラーが態々ここに来た目的を聞き出す方が先だと判断する。
「相変わらず怖い顔をするね君は。知ってたかい? 君がそういう顔をする時は決まって君自身に余裕がない時だって」
「うるさいっ!!」
「おや、そんな大きな声を出すとそこで呑気に寝ている彼女を起こしてしまうけどいいの? まあ、僕は構わないけど」
「っ…!」
サウラーに言われ思わずラブの方を振り向いた。さっきの声にむにゃむにゃと言葉にならない呟きを残して先ほどまでと同じような息遣いに戻る。ほっとして知らぬ間に溜息をついた。
「よかったね、起きなくて。もしここでピーチが起きていたら、部屋で僕と二人で話していたのが見られていたよ」
「…あなたと話したからって何なのよ」
「だって…もしかしたら君が裏切ったんじゃないかって疑われてたかもしれないだろう?」
「!? そんなことっ…! 例えこの状況を見たってラブが疑うわけ…」
「本当に?」
「え…」
「本当に一ミリも疑わないって思うのか? ついこの間まで敵だった奴が、その仲間と密会しているのになんとも思わないわけないだろ? だって君はイースだ。あの、黒くて憎しみが渦巻く心を持っていた」
自分の中の反論が段々と小さくなっていく。その代わり懐疑心が募ってざわざわしだした。
――それでもラブは真正面から向き合ってくれたから。どの自分も抱きしめてくれたから。
だから、自分も信じたいと思った。
そう思った。
「…へー、以前ならこれで折れる事は無いにしても、捻じ曲がるくらいにはなっていたと思うんだけど…まあいいか、これはこれで」
ひとりでぶつぶつ言いながら自己解決する男に腹が立つが、一番嫌だったのがここに来た時から崩さないにやにやとした薄ら笑いだった。こういう顔をしている時は大抵碌でもないことを考えている時と経験と直感が言っている。この顔をしていた後にウエスターが何かしらぼろぼろになっていたのをよく見かけたから。
「では、イース。色々と頑張る君にプレゼントだ。これで精々君たちの友情を確かめあうといい。その、角砂糖みたいに脆く溶けてなくなりそうな曖昧なものを、ね」
そう言ったかと思うとふと顔に影が差す。焦って思わず見上げた。見上げて、見てしまった。
…何かが、身体に混じっていく感覚がする。不純物を受けとめた右眼は燃えるように熱く、激痛が走る。
「ぁっ…! ぐっ、…っ!」
必死に声を抑えて痛みの波が引くのを待った。ラブが起きてしまわないように。
「ああ、すまない。もっと痛みの少ないところからにするべきだったかな? でも、じきに痛みも引くはずだ。引くのは痛みだけじゃないかもしれないけど」
「どう、いうっ…意味だ…サウラー…!」
「今君にあげた液体には、イースの情報が入っているんだよ」
「…は…ぁ?」
「もっと言うと、以前の、ラビリンスで忠誠を誓っていた頃のイースの様々な情報が含まれている」
「なっ!」
「ラビリンスの技術はこの世界の比じゃないことはイースも知ってるはずだ。乗っ取られないといいね…イースに」
くっくっと面白そうに笑う男の言う事は脅しではなく本当だと理解できた。だってさっきから変に懐かしい感覚が襲っているから。波のようにあの時の感情が湧き上がってきて、必死に右眼を抑えて衝動をやり過ごす。
「それじゃ長居しても悪いから僕はもう帰るよ。最近退屈だから楽しませてくれる事を期待しているよ」
長居して悪いと思うなら最初から来るな。痛みで頭の思考の大部分が取られるその片隅で、申し訳程度に悪態をつく。本当は直接言いたかったが、痛みに気を取られて気付いた時には二人きりの部屋に戻っていた。
ラブはまだ寝ていて起きそうにない。しばらく放心していたが、そのうち痛みも引いて動けるようになった。のそのそと立ち上がり鏡の前に顔を寄せる。あれだけ痛かったのだから血の涙くらい出ていてもおかしくないのではないか。もしくは正常な左目と比べて変化があるのではないかと恐る恐る覆っていた手を退ける。
特に異常はなかった。
というよりいつもと同じで、まるでさっきの一連が夢だったような気さえする。
首を傾げながら角度を変えながら見回してみても、変化がなかった。
「外見には変化がおきないのかしら…」
悩むように顎に手を当てて唸ってみたが、よくわからない。あのサウラーのする事だから油断はできないが一先ず心配事が減ったかと思っていると、何かがごつりと足に当たった。
下を見ればラブの頭があたったようだ。部屋をゴロゴロと回りながらそれでも起きないことに睡眠への執着を感じる。
「まったく…」
鏡越しに動き回るラブを見る。障害物に当たっては進行方向を変え、それでも幸せそうな寝顔。
「あんまり気持ちよさそうでなんかイライラするわね…」
いつもならつられて自分も笑いながらしょうがないと嬉しそうにする場面だった。実際、今も口ではイライラと言いながら、幸せそうなラブを見られてこちらも暖かい気持ちになれていた。
それなのに、
それなのに、鏡に映る自分の顔が…というより右眼だけが、憎しみの籠った視線をラブに送っている。
サッと血の気が引いて思わず両手で右眼を隠した。
あの眼はまるで、イースの時のようだった。
まさかこんな風にくるとは。思わず顔を顰める。しかも眼だなんて変化に気付きやすい場所じゃないか。
…これを隠すにはどうすればいい?
このまま放置は嫌だ。でも、サウラーとのやりとりをみんなに話して不安にさせるなんて論外。
なにか、隠すものを。幸い異常は右眼だけ。ここだけどうにかすればいい。
…そこで思い出した。以前ラブが、眼にできものができたと言って数日間眼帯をしていたことを。
家の救急箱に残っていたそれをつける。ただ、ひどく目立っていた。
ものもらいと言ったらきっとお母さんに病院に連れていかれて異常がないとすぐバレる。ならどうする? つけていても他の人に怪しまれない方法は…
自分では思いつかない。知らない事は調べるしかない。目の前のパソコンに向かった。
――――――
-――
…なんとか今日を乗り切った。みんなはこの変化に憐れむような視線を送っていた気がするが、そんなのは些細な事だ。自分がどう思われようと周りに気付かれなかったのだからそれでいい。
それにしても、時折本音が混じっても全て冗談で通用してしまうのだから、昨夜頑張って調べた甲斐があったというものだ。調べておいた台詞を繋ぎ合わせたよくわからない文章でも、並べて唱えればそれだけで相手の追及を躱す事が出来る。今度何かあったらまたこの手を使うのも視野に入れておこうと本気で考えながら、姿見の前に立った。
白い眼帯で覆われたその顔は、客観的に見れば痛々しいと言えるが、今日会った人たちからすれば痛々しいの意味合いは違ってくるのだろう。そういうものだと調べた知識が言っている。
そんな眼帯を親指で瞼の上に押し上げた。一日振りの対面に恐る恐る眼を開ける。
開けた瞬間こそ変わらなかったが、次第に目つきは鋭く赤い目に黒が混じるように深い色に変化し自分を見つめていた。以前は自分の容姿を確認するために鏡を見ることなどそうそうなかったが、それでもこれはイースの時の眼だと分かる。その鋭さが、深さが、憎しみを現している様に思えてならない。
「なにがそんなに憎いのよ」
思わず鏡の中の自分に問いかける。当時の事が次々と感情と一緒に湧いてきて、憎いと感じる理由一つ一つに意味はあったけど、それを言葉にするのは酷く疲れる事で、辛いことでもあった。
「でもね、私の体を乗っ取ったってその憎しみは消えないし、虚無感は埋まらないわよ」
鏡に映る右頬を撫でる。世界を憎んでも幸せにはなれなかった。誰かの幸せを願っていたらいつの間にか自分も幸せになっていた。そんなものなのだと今更気付いた。追いかけすぎて見つからない四つ葉のクローバーのように、必死過ぎてわからなかったんだ。
「サウラーが言ってたっけ…余裕がなかったって…」
その眼をする時は決まって余裕のない時。それはつまり、イースだった時は常に余裕が無かったということか。空を見上げて走ることしか考えられなくて、後ろを振り向くことも横を見る事も出来なかったあの時。
(ならどうすればよかったんだ)
突然頭の中で声がして驚きで思わず目を見開いた。意思を持って問いかけてきたのは初めてだったから。思いの外低音な声。まるで思いつめているかのような重さに懐かしさを感じる。
…どうしたらよかったのか。今ならラブ達ともっと早く話し合っていればよかったと言える。でも、当時は話し合いなんて出来る状態ではなかったし、素直にラブ達の言う事に従えはしなかっただろう。
大体の事は、結果がわかって初めて正解がわかるものだから。結局のところ、正解なんて、最善なんて無いのかもしれない。
「私もあなただから偉そうな事は言えないけど、ひとつ言うとしたら、あと少しだけ人を信用してもよかったんじゃないかしら」
返答はなかった。
イースも考えているのだろうか。それともこんなくだらない答えに反応するのも馬鹿らしいと思っているのだろうか。
自分なはずなのにわからなかった。
―――
――――――――…
数日が経った。
初日に成功して以来あの演技を続けたおかげで眼帯について何か言われることはなくなった。そのかわりやたらと悩みは無いかと聞かれるようになったが。
確かに、「精神的に常軌を逸した行動とされている」と調べた時にも書かれてはいたが、そこまで心配されることなのだろうか。
それに、そのこと以外に、「周囲の人が離れていくかもしれないのでよく考えて実行するように」との注意が書かれていたはずだ。この文を読んだ時から覚悟はしていたが、ラブにしろ美希にしろ祈里にしろ、呆れた表情になりはするがそれで自分の元から離れていくようなことはなかった。
「サウラーはこれで変化を起こして友情なり何かを壊すつもりでいたみたいだけど…」
予想に反して自分の周囲が変わることはなかった。
ただ、ひとつ戸惑っている事がある。それは、たまに起こるイースの乗っ取りがイースのものなのか自分のものなのか分からない時がある事だ。
普段は負の感情が流れてくるのだが、ふとした時想いがシンクロする時がある。
例えば買ったドーナツを食べる順番だとか、例えばラブとしりとりをしていて思いつくワードが一緒だとか、例えば観ているテレビのリアクションが同じだったりとか、例えば嬉しかった時嬉しかったと発する言葉が一緒だったりとか。
元々は同じ人間なんだから当たり前だとは言える。根本は一緒なんだと改めて気づかされる。
だから憎しみに渦巻く感情が再び自分の中に巣食ってしまう可能性がある事もわかる。
でもそれだけじゃなくて、イースも負以外の感情を持つことができるということがわかった。
いくら憎しみがあったって、いくら黒い感情が覆ったって、それがいつまでも広がっているとは限らない。
「なんだか一度体験したことをもう一度繰り返してるみたいね…」
なぞるように心の変化を感じ取っていることに奇妙な感覚がする。当時の気持ちに引っ張られそうになりながら、その度にラブたちに現在はここが居場所だと示されて、まるで繰り返している。
恒例となった姿見との対談に慣れてきたこの頃。
「ねえイース、隣で並んでいるみんながわかる? 私も最近まで気付かなかったけど、みんなはあなたが思っている以上に私を想ってくれているのよ」
それはとても素敵な事で、泣きそうになるくらい大切な事で、今この瞬間がずっと続いてほしいと願わずにはいられない。
「私の心がどれだけ救われているか、あなたならわかるでしょう?」
虚無感は注がれる愛情で満たされていく。毎晩眠る時にその日が幸せだったと涙が勝手に出ている。慣れない好意に心が追いつけない。
「この一瞬一瞬が大切なの。だから眼を背けないで。もう後にも先にも体験出来ないかもしれないんだから。あなたにも、今を生きて欲しいの」
過去の憎しみに囚われているばかりじゃ勿体ない。
そんなことを思いながら鏡に笑いかけると、一瞬だけ驚いたようにスッと右眼の黒さが引いた気がした。
―――――…
あれからまた幾日か過ぎた頃、夕飯も終わりひとり自室で本を読んでいた。
こちらに来てまだ間もないころ、この世界を知るために本屋で買ったあれやこれの中の一冊だった小説の続編で、その面白さに新刊を心待ちにしていたものだった。
占い館でよく本を読んでいたのはサウラーで、いつも外にも出ず読書ばかりの彼に内心悪態をついていたが、この本を読んでいる時だけは、大広間で一緒になって机に座っていた。
黙々と読み進める。イースも集中しているのか気持ちはシンクロしっぱなしで、負の感情は一切感じなかった。
そうやって数時間が経った頃、読んでいた文字列に不自然な影ができた。それはまるでライトで一定方向から光を当てたような人工的なもので、疑問から顔をあげれば姿見が怪しく光っている。
「やあ、久方ぶりだね」
「サウラー…」
「その後の調子はどうかと思ってね。様子を見に来たよ」
「あ、そう…今忙しいから帰って」
「…なんだかこの前とは随分反応が違うね…おや、君が読書なんて珍しい…と、その本…」
「ん? 知ってるのサウラー?」
本に夢中でサウラーの対応がおざなりになってしまい慌てて会話を聞き取れば、この本を知っているかのような反応。サウラーは知識系の専門書のような本は読むが、小説などの物語にはあまり手を出していなかった気がするが。
「あなた物語なんて読むようになったの?」
「僕は知識の人間だから好んでは読まないよ。それ、君の部屋にあった本の続きだろ? 君の部屋を整理してた時見たんだ。まあ、ウエスターが嫌がるから片付けるのは途中で止めてしまったけど」
「そう…」
思いがけず以前の自分の部屋の状況を知ってしまった。ウエスターが嫌がった理由はよくわからないし未練なんてないから全て処分してくれて構わないのだが。
「で、だ。そんな本に気を取られていていいのか? ピーチは今日はまだ夢の中ではないんだろ?」
「……」
確かに今ラブは隣の部屋にいる。時折笑い声や話し声が聞こえるから、シフォンかタルトか、もしくは電話でもしているのだろう。
「あれから彼女達との関係はどうだい? 眼にそんな蓋をしたくらいじゃ君の中のイースは黙ってくれないだろう?」
確かに体は勝手に動く時があるし、時折流れる感情に苦しむこともある。
「少しずつ君が君でなくなっているんじゃないのか? 苦しいだろう? いっそその感情に身を委ねてしまえば楽になれるんじゃないか?」
笑う。哂う。この前のように意地の悪さを隠す事のないその表情に、やはり嫌悪感を抱く。でも、この間よりそれを必死に否定したいとは思わなかった。それは、今の自分の状況が彼が考えているよりずっと変わっていないから。
「そもそもが可笑しいのよ」
「…何がだ」
淡々と答えるように言うと、初めて哂いから無への表情に変わった。
「塗りつぶされるとか乗っ取られるって話よ。それが例えば私の体にあなたの感情が入ってきてコントロールされるって言うなら乗っ取るって言えるわ。そんなの絶対御免だけど」
立ったままで腕を組むサウラーからの言葉はない。続きを促されているようだ。
「でも、私の体にイースが入ったって、そんなのは意味の無い事だったのよ。だって私はイースだったのよ?」
「…へー、認めるんだね。君がイースとしてしてきた事を」
「ええ。それは、捨ててはいけない事だから」
背負うと決めたことだから。
「で、それが意味の無い事だとどうして言える?」
「イースも私も同一人物。拒絶反応なんて起きないんじゃない? 例え眼が変わっても、外見が変化しても、根本の私は変わらない。みんなは私をイースと知っているのに仲間にしてくれた。イースを含めた私を認めてくれた。だから、例え今イースに変化しても私の全てが変わってしまったことにはならないわ」
最近の変化をしても尚変わることなく傍にいてくれて、自分から離れていかなかった仲間たち。サウラーのお蔭で思いがけずみんなとの絆の深さを知ることができた。
「だから、もう、これも必要ないわ」
おもむろに眼帯を外して床に落とした。開かれた右眼はどうなっているのだろう。でも、大丈夫だと思えた。どんな自分でも自分だから。それに恐れることはない。
「……君は変わらないと自分で言ったけど、僕はそうは思えないよ。少なくとも今は。今回は帰るとするよ。これで君が僕らの敵と確認できたし収穫はあったからね」
「今回だけじゃなく今後一切来ない事を推奨するわ。次来た時部屋に入ってきた瞬間どうなるかわからないわよ」
「面白いことを言うね。それは売り言葉と受け取らせてもらうよ」
そう言って背を向け鏡の中に溶けていくのを見送った。
「はぁーっ…」
姿が見えなくなり、歪んだ空間を映し出す渦が消えたのを確認してから、一気に脱力してベッドに背中を預けた。あんな事を言ったが、やはりラブに今回の事を知られたくはなかったし、どんな姿でもというのも大きく出てしまった気がする。
視界の端に見える投げ置いた先ほどの本を手に取った。
巻数が増えただけのタイトルとありふれたカバー。表紙を見ただけで、どうして続巻だと分かったのだろう。数多ある本を整理していただけではその中の一冊の続きなど知る由もない。つまりサウラーは、占い館の自分の部屋にあった本を読んだのだろう。
それは、「物語なんて愚かな人間が作り出した虚言で俗物的なくだらないものだ」と言っていた彼が、この世界に興味を抱き始めているという紛れもない事実で、当初の彼からは考えられないもので、変化していると言える証拠ではないだろうか。
外見が変わっても中身は同じ。なら逆も言えるのではないか。外見が変わらずとも中身が変化することもあると。
だとしたら。だとするなら。
彼は、彼らは、自分と同じように変わる可能性があるのかもしれない。
そんな事を一瞬だけ考える。
ただ、そうだとしても今は自分の平和な日常を脅かす脅威だから。敵である事に変わりはないから。戦い続けよう。
今が大切だから。
本にしおりを挟み、眼帯を拾った。
最終更新:2015年02月25日 21:57