1.それは、キスの合言葉で




 これはある種の我慢比べだと思っている。
「マ、マナ……」
 戸惑いを隠せないでいる六花。その顔は赤色に染まっている。
 六花とあたしだけが居る部屋。真正面から自分の両手で六花の両手を握りしめ、そっと圧力をかけた。
 少しだけ抵抗を示したが、力ではこちらの方が上。
 やがて諦めたように力が抜かれ、あたしが無言で顔を近付ける。すると六花はいやいやと、黙って首を横に振る。
 ちょっと照れたその様子も愛おしくて仕方がない。もっと触れたいという欲求が止められない。
「六花……」
 それは、合言葉のようで……名前を優しく呟いてあげると六花は瞳を閉じて、あたしのキスを受け止めてくれる。
「六花……」
 もう一度、名前を呼んで、あたしはそっと六花と唇を合わせた。



連作2本目は競作2-19