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''メネ・ターラー契約ルート話'' 【登場キャラ(敬称略)】 [[メネ]]、[[ターラー]] 悪堕ち神父の話 ---- 「ターラー様、どうか、どうかご慈悲を」  そう言って神父に涙を流してすがり付いたのは、重い病に冒された子を持つ一人の母親だった。女は長い看病生活と貧困のせいか頬はすっかり痩け、骨が浮き出ていた。教会の美しいステンドグラスからは夕陽の光が差し込み、彼らに影を落としていた。 「…分かりました、お助け致しましょう」  ターラーと呼ばれた黒い神父服に身を包んだ青年は、女に優しく微笑みかけると、彼の後ろに控えていたシスターに目配せをした。それを受け、シスターは懐から小さな瓶を取り出した。ターラーが小瓶を受けとると、彼はその瓶を片手で握り、聖句を唱えて手振りで十字を切り祝福を与えた。 「これできっとお子さんも治るでしょう」 「ありがとうございます、ああ、慈悲深き神の御業とターラー様に感謝を、ああ…」  励ます様に母親の背を叩き、女の骨張った手に瓶を握らせる。母親は泣きながら、いつまでもターラーに感謝を述べていた。 「…神の御業って言ってましたけどぉ、実際は悪魔の業なんですけどねぇ」  シスター服を纏ったメネは、何度も振り返っては謝辞を述べて去っていく女を眺めてそう言った。  万物を癒し万病を治す霊薬を悪魔メネは精製出来る。それに眼をつけたターラーは、それを神の業として使い己が名を上げる事とした。今はターラーの『神の業』が真実であると信用させるため救いを求める平民にも与えていた。薬の効果が確固足る物と知れば、教会上層部もターラーを捨ておけはしない。正に神の奇跡だからだ。 「何だ、自分の手柄を取られたようで不満か?」 「そういう訳じゃ無いんですけどぉ」  ターラーの声には先程まで女に語り掛けていた優しさの色は微塵もない。女が居なくなった途端、ターラーは爽やかな好青年の仮面を投げ捨て、立ち振る舞いもラフな物に変えていた。この男の本質はこっちだとメネは知っている。 「何と言うか、皮肉だなぁ~って! 悪魔の力で生きているのに、実際は存在しているかも分からない神に感謝してるなんて愚かだと思いませんかぁ?」  メネが元いた世界には、実際神らしい物は存在していたが、神は世界の調停者であり、人間に救いなどは与えない。このターラーの世界では神と言うものが存在しているか分からないが、少なくとも救いを求める人間を助ける慈善家では無い辺りは共通しているようだった。 「まあ良いだろ。いずれは神では無く俺だけに感謝して貰うつもりだからな」  すっぱり言い切ったターラーを見、メネは軽く瞠目した。 「うわあ、見事に信仰心の欠片もない不良神父様ですねぇ」 「神父が悪魔を召喚した段階で気づけ」 「それもそうですぅ!」  メネはからからと笑った。メネは、ターラーのこういう所が気に入っていた。自分本位で、己の欲に忠実。神も信じず、神の権威を自らの物にしようとしている。神父の癖に、まさに悪魔と契約する人間に相応しい。 「じゃあ、いつか『ターラー教』みたいなのが出来て、ご主人様の像が街や教会に並ぶんでしょうかぁ? うーん、面白そうですねぇ」 「……『ターラー教』は悪くないが、像が並ぶのは見たい様な見たくない様な、微妙なところだな…」  己にそっくりな彫像が延々と立ち並ぶ様を想像したのか、ターラーは微妙な顔を浮かべていた。偶像崇拝は禁止すべきか、などとぶつぶつ言っている。 「もし作る際にはメネに言って下さいねぇ。器用なメネが見えない所までそっくりな像を作ってあげちゃいますからぁ♥」 「見えない所と言うと」 「やぁん、言わせる気ですかぁ?」  そう言って、しなを作ったメネがターラーの胸元を指でつ、となぞるとターラーの全身に鳥肌が立った。 「……キモい!!」  そう言ってターラーが投げた聖水は、うっかり避け損ねたメネに見事にかかった。 「…あ、そうだ。一つ不満な事思い出しましたぁ」  すっかり濡れたシスター服を脱ぎながら、メネは膨れて言った。一応、メネは高位悪魔だ。聖水をかけられたぐらいでは死にはしないし、傷などつかない。だが、痛くも痒くも無い訳ではない。実際、少し痒くなる。 「何だ」  ターラーは、そんなメネにはもう興味が無いと言わんばかりに本を読んでいる。視線もあげないターラーの前にメネは仁王立ちし、指を突きつけた。 「あの母親には優しげに背を叩いたり手を握ったりするのにどうしてメネにはしてくれないんですかぁ! 差別だと思いますぅ!」 「あれはビジネスライクだ。愛なんて微塵も籠ってねえから安心しろ」 「…じゃあ聖水掛けるのは愛なんですかぁ?」 「そうだ、あれが俺の愛だ」  そう言うと、ターラーは本を閉じてにやりと笑った。悪魔より悪魔らしい笑みだった。 「……メネ、やっぱり痛くない愛が良いー!」 --- 不良神父と悪魔シスターの日常!可愛い!
''メネ・ターラー契約ルート話'' 【登場キャラ(敬称略)】 [[メネ]]、[[ターラー]] 悪堕ち神父の話 ---- 「ターラー様、どうか、どうかご慈悲を」  そう言って神父に涙を流してすがり付いたのは、重い病に冒された子を持つ一人の母親だった。女は長い看病生活と貧困のせいか頬はすっかり痩け、骨が浮き出ていた。教会の美しいステンドグラスからは夕陽の光が差し込み、彼らに影を落としていた。 「…分かりました、お助け致しましょう」  ターラーと呼ばれた黒い神父服に身を包んだ青年は、女に優しく微笑みかけると、彼の後ろに控えていたシスターに目配せをした。それを受け、シスターは懐から小さな瓶を取り出した。ターラーが小瓶を受けとると、彼はその瓶を片手で握り、聖句を唱えて手振りで十字を切り祝福を与えた。 「これできっとお子さんも治るでしょう」 「ありがとうございます、ああ、慈悲深き神の御業とターラー様に感謝を、ああ…」  励ます様に母親の背を叩き、女の骨張った手に瓶を握らせる。母親は泣きながら、いつまでもターラーに感謝を述べていた。 「…神の御業って言ってましたけどぉ、実際は悪魔の業なんですけどねぇ」  シスター服を纏ったメネは、何度も振り返っては謝辞を述べて去っていく女を眺めてそう言った。  万物を癒し万病を治す霊薬を悪魔メネは精製出来る。それに眼をつけたターラーは、それを神の業として使い己が名を上げる事とした。今はターラーの『神の業』が真実であると信用させるため救いを求める平民にも与えていた。薬の効果が確固足る物と知れば、教会上層部もターラーを捨ておけはしない。正に神の奇跡だからだ。 「何だ、自分の手柄を取られたようで不満か?」 「そういう訳じゃ無いんですけどぉ」  ターラーの声には先程まで女に語り掛けていた優しさの色は微塵もない。女が居なくなった途端、ターラーは爽やかな好青年の仮面を投げ捨て、立ち振る舞いもラフな物に変えていた。この男の本質はこっちだとメネは知っている。 「何と言うか、皮肉だなぁ~って! 悪魔の力で生きているのに、実際は存在しているかも分からない神に感謝してるなんて愚かだと思いませんかぁ?」  メネが元いた世界には、実際神らしい物は存在していたが、神は世界の調停者であり、人間に救いなどは与えない。このターラーの世界では神と言うものが存在しているか分からないが、少なくとも救いを求める人間を助ける慈善家では無い辺りは共通しているようだった。 「まあ良いだろ。いずれは神では無く俺だけに感謝して貰うつもりだからな」  すっぱり言い切ったターラーを見、メネは軽く瞠目した。 「うわあ、見事に信仰心の欠片もない不良神父様ですねぇ」 「神父が悪魔を召喚した段階で気づけ」 「それもそうですぅ!」  メネはからからと笑った。メネは、ターラーのこういう所が気に入っていた。自分本位で、己の欲に忠実。神も信じず、神の権威を自らの物にしようとしている。神父の癖に、まさに悪魔と契約する人間に相応しい。 「じゃあ、いつか『ターラー教』みたいなのが出来て、ご主人様の像が街や教会に並ぶんでしょうかぁ? うーん、面白そうですねぇ」 「……『ターラー教』は悪くないが、像が並ぶのは見たい様な見たくない様な、微妙なところだな…」  己にそっくりな彫像が延々と立ち並ぶ様を想像したのか、ターラーは微妙な顔を浮かべていた。偶像崇拝は禁止すべきか、などとぶつぶつ言っている。 「もし作る際にはメネに言って下さいねぇ。器用なメネが見えない所までそっくりな像を作ってあげちゃいますからぁ♥」 「見えない所と言うと」 「やぁん、言わせる気ですかぁ?」  そう言って、しなを作ったメネがターラーの胸元を指でつ、となぞるとターラーの全身に鳥肌が立った。 「……キモい!!」  そう言ってターラーが投げた聖水は、うっかり避け損ねたメネに見事にかかった。 「…あ、そうだ。一つ不満な事思い出しましたぁ」  すっかり濡れたシスター服を脱ぎながら、メネは膨れて言った。一応、メネは高位悪魔だ。聖水をかけられたぐらいでは死にはしないし、傷などつかない。だが、痛くも痒くも無い訳ではない。実際、少し痒くなる。 「何だ」  ターラーは、そんなメネにはもう興味が無いと言わんばかりに本を読んでいる。視線もあげないターラーの前にメネは仁王立ちし、指を突きつけた。 「あの母親には優しげに背を叩いたり手を握ったりするのにどうしてメネにはしてくれないんですかぁ! 差別だと思いますぅ!」 「あれはビジネスライクだ。愛なんて微塵も籠ってねえから安心しろ」 「…じゃあ聖水掛けるのは愛なんですかぁ?」 「そうだ、あれが俺の愛だ」  そう言うと、ターラーは本を閉じてにやりと笑った。悪魔より悪魔らしい笑みだった。 「……メネ、やっぱり痛くない愛が良いー!」

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