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''正路さんBADENDギフト視点'' ※[[正路BADEND妄想1/二十日]]を読んでからでないとわけがわからない仕様です 【登場キャラ(敬称略)】 [[ギフト]]、[[真島 正路]]、[[ネデ]]、[[フェイツ]] ----  真島正路は油断ならない男だ。知り合って間もない頃、契約について詳しく説明した後に放った第一声からして隙の無さが伺えた。 「才能の開花は契約者自身に限られるのか? 他者の才能を開花させる事は?」  これだ。初手から急所を射抜いてくる。 「……ンッフフフ……ファインプレーでございます、正路殿」 「御託はいい。答えは」 「まあまあそう焦らず。時間はたっぷりございます! 正路殿のご質問には正直にお答え致しますから、ゆっくりとこの歓談の一時を味わおうではありませんか!」  他人を容赦無く利用する性格かはまだ分からない。しかしこの勘の良さ。冷静さ。動作の端々から見える思考。全てがギフトの頭に祝福の鐘を鳴らしている。 ――彼は逸材だ! 「……だと思ったんですがねえ」  つい今しがたギフトの前で起こった事態は、かつての予想を裏切るものだった。  正路はギフトと契約を結んだ。それも二回も。しかも才能を与える対象は他者。  契約を結ぶ事は無いと思っていた。結ぶとしても、自身に新たな才能を目覚めさせる為に自身の感覚、あるいは他人の感覚を消費するものだと。しかし現実はどうだ。二人の他人に才能を目覚めさせる為に自身の感覚を犠牲にした。 (正路殿はイイ線行くと予想してたのですが)  悪魔を上手く使って人生を順調に歩み、妻子と財産と権力に恵まれた環境を築き、そしてある時ふとした不注意をきっかけに綻びが生まれ、全ての環境が破綻する。その綻びは彼の家庭に止まらず、広く世界に不幸をばら撒く。それこそギフトが目標とする終着点であり、正路にはそれが出来ると感じていた。  まさか、一匹の女悪魔に惑わされて本来の慎重さを失って契約を結び、その結果弟を失い、彼を救う為に名を無くし魂を譲渡し他者の才能を開花させて全てを失う結末を迎えるとは予想だにしなかった。  これはこれで素晴らしい終着点だ。女の色香に惑わされて破滅する男という図は古典的ながら飽きが来ない。  しかし。 (……ギリギリ合格、で御座いますね)  正路を逸材として信頼していただけに、裏切られた気持ちが強い。効率的に感覚を奪って絶望に叩き落とし、彼との契約によって二人の人間に才能を与える事が出来た。全てをひっくるめて何とか及第点。満足とは程遠い。  そう。程遠いのだ。  * * *  訳の分からないうちにネクロマンサーの才能を与えられた少年、ネデは彼がいた世界で簡単に見つかった。 「ネデ殿! ご機嫌麗しゅう!」 「……ギフト?」 「先日はお忙しい中契約にお付き合い頂き感謝致します! その後お体に変わりは御座いませんか?」 「……やっぱり、あれは夢じゃなかったんだな」  ネデは微妙な面持ちで肩に乗っている鼠の頭を撫でた。この様子では何度かネクロマンサーの術を試してみたに違いない。 「ええ、ええ! 事実で御座います! ネデ殿には現在、人の魂すら呼び戻せる稀代の才能が芽生えております!」  ですが! とギフトは芝居がかった動きで両手を広げる。 「この世ではネクロマンサーは歓迎されない存在! しかし一つだけ極まった才能は隠しがたいもの、ネデ殿は優秀なネクロマンサーとしていずれ世間に知られる事になるでしょう! そこでネデ殿、木を隠すなら森と言うお言葉はご存知でしょうか?」  ネデは無言で頷く。ギフトが言いたい事も理解したのだろうが、構わず台詞を続ける。 「小生からの提案で御座いますが、魔術や錬金術の才能を萌芽させ、その方面で名を売るのが上策かと。無論、この提案を受けるも断るもネデ殿の自由意思。小生はただネデ殿が才能を有効活用し、充実した人生を送る手助けをするだけで御座いますから」 「…………」  ネデはやはり無言だ。この場で決断を下す事は出来ないだろう。ギフトはにこりと微笑んでふわりと空高く浮かび上がった。 「返事はすぐにとは申し上げません。ネデ殿の決心がついたその時、小生に仰って頂ければ契約成立と致しましょう!」  それでは! と捨て台詞を吐いてネデの肉眼では捉えられないレベルに体を拡散させる。  ネデと契約する場合のシナリオは、元々いくつか練っている。  今回のように他人の手で才能に目覚めるケースまでは考えていなかったが、既存のシナリオに少々手を加えるだけで十分に対応できる。  単純で分かりやすい、栄光と凋落。ネデに秘められたシナリオは普遍的で何度も味わったものだが、この味は嫌いではない。  * * *  次の世界に到着すると、見知った背中を見かけた。 「フェイツ殿ではありませんか!」  彼の名を呼ぶと、フェイツは「ピャッ!!」と悲鳴じみた鳴き声を上げて瞬間的にギフトと距離を取った。 「……ア、アア、ギフトサンではないデスカ。お久しぶりデスネェ」 「相変わらず俊敏な動きをなさいますね」  どういうわけかフェイツはギフトと相対する時のみ、妙に素早い動きを見せる。その理由は今になってもさっぱり分からない。 「正路サンとの契約は終わったのデショウ? 何故こちらへ?」 「確かに契約は終了致しました。ですが! まだアフターサービスが残っております!」 「アフター……?」  フェイツは少しだけ何かを考えていたが、すぐに合点がいったようで「アア」と頷いた。 「ギフトサンもイイ性格をしてマスネ」 「丁寧な仕事こそ、小生のモットーで御座いますから!」  と言うわけで、とギフトは指を一本だけ立てた。 「小生、これからもしばしばこちらの世界を訪れる予定で御座います。フェイツ殿さえ宜しければ、また観劇と洒落込みましょうぞ」  この世界はなかなか良いシナリオが転がっている。作り物は本物には到底及ばないが、暇潰しや参考資料には十分役立つ。フェイツは「是非とも」と短く答えてにこりと微笑んだ。  フェイツと別れて辺りを探索すると、彼の住む家はあっさりと見つかった。そろそろ日付が変わろうかという時間だが、部屋には明かりが灯っている。新聞記者という職業柄、就寝時間が遅くなるのはよくある事なのだろう。好都合だ。  ギフトは自身の体を拡散させて扉の隙間から部屋に入り込む。随分と狭い部屋で、あちこちに散らかる物品から彼の生活水準が手に取るように分かる。 「真島蒔殿で御座いますね?」  寝間着姿の彼の背後で瞬時に体を作り上げて話しかける。彼はゆっくりと振り向いてギフトの姿を認めたが、そこに驚きはない。正路の家でたまに顔を合わせた事があるからだろう。正路の事は忘れても、ギフトの事を忘れる道理はない。 「最近、心にぽっかりと穴が開いたような虚脱感に襲われておりませんか?」  蒔は何も答えない。沈黙は肯定也。ギフトは構わず話を続ける。 「小生にはその原因が理解できております! そう、今こそ長年眠らせ続けていた写真の才を発揮する時なのです! 素晴らしい写真を撮り、人々に認められ、健康的で豊かな人生を送る! それこそが、それこそが蒔殿の虚脱感を癒す術で御座います!」 「……写真?」  蒔がどうもぼんやりとしているのは眠気に襲われているからだろうか。  まあいい。夢の中の出来事だと捉えられてもいいから、まずは積極的に写真を撮るよう仕向けるべきだ。 「蒔殿の写真の才はなかなか芽の出ないもので御座いました。しかし今、萌芽の兆しが確実に出ております! ヒトの才能を多く取り扱った事のある小生にはそれが分かるのです! 今こそ人生の転換期、写真家としての道を歩み始める契機ッ!」  そう、才能は目覚めただけでは使い物にならない。才能は使ってこその才能! 「例えるならば、才能は種子。そのままでは何の価値も御座いません。日々の研鑚という名の水と栄養を与えて育て、やがて才能は美しい花を咲かせます。それこそが幸福! 人生の充実! 蒔殿の才も研鑚を重ねれば、いずれは非常に美しい幸福の花を咲かせる事でしょう!」  ギフトはそこで言葉を切り、「花を咲かせる事こそ、虚脱感を癒す術。蒔殿のご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げます」とだけ言い残して蒔の部屋を去った。  * * *  才能は幸福という花を咲かせる。それは事実だ。美しい花は人々や金、権力を魅了する。  だが。  花は大輪であればあるほど、大きな果実を実らせる。果実はやがて成熟して腐り落ち、花に魅せられて集った虫を押し潰す。  嗚呼、それこそ不幸! 花が幸福であるなら、果実は不幸そのもの!  正路はギフトが思ったような「不幸の果実」を実らせなかった。だが、彼は二人の人間に才能の種をまいた。  ネクロマンサーとしての道が開かれたネデ。写真家としての道が開かれた真島蒔。  どちらも上手く育てれば見事な果実を実らせるだろう。特に、蒔により大きな才能を目覚めさせるよう仕向ければ、正路と蒔の兄弟どころかより広範囲に不幸を撒き散らす「最悪の兄弟」のシナリオが出来上がる。  ネデと蒔のシナリオを並行して進める必要があるが、ギフトにはそれが出来る自信があった。 「……さて、ここからが小生の腕の見せ所」  ギフトの顔から自然と笑みがこぼれた。嗚呼、忙しくも充実した日々が待っている! 「じっくり時間をかけて……大きな大きな花を咲かせて差し上げましょう……ンッフフフ……!」

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